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透明人間

一週間と風呂に入らなければ
人間っちゃ汚いもんだ。
歯も磨かなければ
口の中ネバネバのニチャニチャ
こびりつく歯垢なんてものは
生ゴミを住まわせているようなもんらしい。
毎日毎日糞尿を垂れ流し
毎日毎日汗と汁にまみれ
ただ生きてるだけで悪臭を放つ
人間っちゃそもそもそんな存在だ。


そんな自分の汚さや醜さを
無きものにしたいという夢や願望によって
人間達は日進月歩の進化を遂げた。
制汗デオロラントや殺菌消臭効果満載の
洗剤や柔軟剤
今や冴えないオヤジから
ローズガーデンの香りや
リッチベリー&ジャスミンの香りが
ふんわり漂ってくる。。
いい時代になったもんだ。


源氏物語の時代のエロスは
さぞかし臭かっただろうな。。
風呂も頻繁に入らなかっただろうし
着物だって人間臭染み込んでいたに違いない。
それこそ匂い立つエロス
汗と汁のエロス
オスとメスの体臭放ちまくっての
五感で感じるエロスだったのだろう。
浮世絵なんかを見ると
あの時代の女はワキ毛ボーボーだ。
絡み合う体毛こみこみで
エロスを満喫していたのだろう。
遺伝子により五感で感じる
異性の好き嫌いの好みがあるらしいが
あの時代の男と女の結び付きは
今の時代よりもはるかに
強かったのかもしれない。


サティの子供の頃は
家の匂いなんてのもあったな。
それぞれにそれぞれの家独特の
匂いを漂わせていた。
それも今じゃ殺菌スプレーや消臭スプレー
芳香剤の出現によってだんだん消えてった。
床も畳や絨毯じゃなくフローリング
モデルルームみたいな
アイランドキッチンのおうちに
お掃除ロボットルンバが走り回っている。


人間関係だってそうだ。
今はなんでもかんでも
《空気を読め》だ。
『アイツが来ると会議が長引く』
嫌がる新入社員を飲みに誘う上司は
パワハラだ。
みんな予定調和みたいなしたり顔で
『だよねー』『あるよねー』
『○○みたいな』なんて
断定を避けた空気を読む心掛けに
配慮している。
サティの子供の頃は捕まると
日が暮れるまで話を聞かされた
エキセントリックなややこしい
オジサンやオバサンが
ウヨウヨいたもんだ。
そんな人達も今や
心療内科かなんかに連れて行かれて
日進月歩の薬剤により
大人しく空気を読んで
眠らされているのかもしれない。。


害虫だってそうだ。
今やゴキブリだって凍らせてポイ
そもそも虫を寄せ付けない
虫コナーズや虫除けスプレー
コバエが寄ってたかって
自ら入り込むポット
害虫とやらを人間のエゴイズムで
殺める罪の意識を
あまり感じなくて済むように
進化してきている。
サティなんかは乾電池入れて電流を走らせる
テニスラケットみたいな代物の出現を
大いに喜んでいる。
害虫をラケットの網に接触させて
静かに焼き殺すことが出来る。
ブチュッと殺した感触や
後始末なんかはしなくて済む。
網にへばりついた小さく縮んだ虫を
ラケット裏向けてポイすればいい。
いい時代になったもんだ。。


人間達は一生懸命夢を叶えて
いったい何処までいくんだろう。
醜い自分のエゴイズムや
汚いものを忌み嫌い
言いたいことを空気を読んでこらえ
臭いものには蓋をして


まるで匂いや嫌味を抜き取った

無味無臭の透明人間みたいだな。


原始時代も
源氏物語の時代も
浮世絵の時代も
現代も
人間は何ら変わっちゃいない。

血湧き肉躍るエゴイスト
なんら変わっちゃいないのにな。


不老不死を夢見て
日進月歩万々歳

どんどんどんどん進化して
何処までいけるか楽しみだ。


だけど無味無臭になりながら
透明人間になりながら
悪臭を放つ人間存在
妬み嫉みの人間関係
自分さえ良ければのエゴイズム
人間本当は汚いことを
頭の片隅に置いとかなきゃな。


蓋をしても蓋をしても匂い立つ
人間存在の根源の悪臭ったら
そんじょそこらの科学の進歩じゃ
とてもじゃないけど締め殺せない。
いくら透明な存在に近付けたとしても
勘違いをしてはいけないな。


しみったれた人間存在
人間の心と身体は
千代に八千代に永久に
透明にはなれないのだから。。







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最後まで読んでくれてありがとう(*^^*)♪

またサティに会いに来てねー(^з^)~.:*:・'°☆



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