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都会のネズミ

寒い雪国にパイナップルは育たない。
常夏では真っ赤な林檎は育たない。
住む場所によって
醸し出す風土によって
人間も同じように
育てられているような気がする。


サティは生まれた時から
かなり引っ越しをしていて
三つ目の小学校には
小学五年生の秋に転校してきた。


高層マンション建ち並ぶ
平面で灰色のコンクリートジャングル。
狭い運動場
暗く冷たい校舎
制服を着た子供達。
緑の多い自然豊かな郊外の小学校と
まるでそこは別世界だった。

転校に慣れていたサティは
悲しいかな
転校生の知恵を身につけていた。
笑顔で元気に自己紹介。
見た目にも気を配り
可愛い髪飾りを付けた。
一番最初の授業では積極的に手をあげ
注目の中正解し拍手喝采される。
イケてる奴アピールは初日の必須なのだ。
転校生への注目はほぼ1週間程続く。
その印象次第でその後の学校生活が決まる。


うまく新しい学校に馴染んではみたものの
前の学校の自然な明るさ無邪気さは
欠片も無かった。
学級会では教師も含め大人びたガキどもが
ディベート合戦。
熱い議論が炸裂する。
グーチョキパーで同意見、反対意見、
どちらでもない、が表されていて
発言ごとみんなが手を上げ自己表明する。
竹藪や野山を頭カラッポで
駆け回っていたサティには
驚愕の光景だった。
閉塞的な都会のネズミ。
小さな校舎に閉じ込められ
窮屈で頭でっかちになった
都会のネズミ。
そんな風にサティの目には映った。


朱に交われば赤くなる。
子供というものは驚くべき順応性がある。
いつのまにかサティは
蓮華草や土筆てんとう虫を忘れ
百貨店の屋上やゲームセンター
マクドナルドで遊ぶようになっていた。

大人になったお祭り兄貴が言う。

『サティ、あのまま俺らあそこに住み続けていたら、どうなってたと思う』

自然豊かな郊外の小学校時代の兄貴は
本当に輝くスターだった。
そしてみんな豊かな自然に囲まれて
頭カラッポ、純粋で活発だった。

『俺、コウちゃんとか北村とかあいつらと一緒に大人になりたかったな』

『人生変わってただろうな…』


兄貴よ、あなたはどの道ギャンブルにハマっていただろうよ、お祭り男。
心でそう呟きながらも


『確かに全然違う人生だったかもしれないね…』

あの自然豊かな町並みと
一緒に駆け回って遊んだ友達を思い浮かべ
サティも同じ気持ちになっていた。

人生流れ流れてなるようになっている


あの時こうなってたら
あの時違う道を選んでいたら

そう思ってみても後の祭りだ。


なるようになってるし
起こることが起きている。

だけどもしも環境が選べるのならば
人は自然と共存して生きた方がいいような気がする。


自然から教えられ
自然から学ぶ。
自然に守られ
自然に生かされる。


サティはその後もずっと
都会のネズミだけど
窮屈になった時は
きっと自然に救いを求めるだろうな。。

自然の中で深呼吸


頭カラッポで深呼吸





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最後まで読んでくれてありがとう(*^^*)♪

またサティに会いに来てねー(^з^)~.:*:・'°☆




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