Satoko

長崎県出身。東京、神奈川、佐賀、ベトナム・ダラットを経て、現在は郷里の長崎に住んでいま…

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長崎県出身。東京、神奈川、佐賀、ベトナム・ダラットを経て、現在は郷里の長崎に住んでいます。

最近の記事

白獄を味わいつつ対馬を思う

ひとくち飲む。すぅーと鼻まで登ってくる独特の香りに芋焼酎かと思った。が、間違いなく日本酒である。対馬で唯一の酒造会社、河内酒造の銘酒・白獄。「すっきりとした」「くせがない」、そういった表現の真逆をいく、荒削りというか野生的な風味があった。最初こそ驚いたものの、ふたくち、みくち……と飲み進むとその個性が旨さに変わる。訪れるたびに違う表情を見せる国境の島・対馬をそのまま現したかのような酒だと思った。 対馬を特集したNHKの紀行&教養バラエティ番組『ブラタモリ』をこの白獄を味わい

    • 長崎で黄檗宗にふれる

      長崎の唐寺・興福寺は何宗?知人の墓参りで長崎市寺町にある興福寺を訪れた時のこと。隠元禅師の垂れ幕が下がる門前で、一緒に線香を上げようと約束した先輩と落ち合った。長崎に住んでいながら、さして遠くもないこの唐寺とは縁遠く、来るのは2回目。墓地へと続く階段を登りながらつい思ったことが口に出ていた。 「興福寺って何宗なんだろう」 すると先輩が応えた。 「おうばくしゅう、たい」 返す言葉が出なかった理由は、先輩が「そんなことも知らないのか」と言わんばかりの口振りだったから、だけでは

      • 対馬の禅寺で身を清める

        調身、調息、調心ー。ご住職が時節のお説教と共に坐禅のスリーステップを解説する。対馬市厳原の高台にある西山寺(せいざんじ)では宿坊客を対象とした坐禅体験を行っている。早朝6時、すでに線香が焚かれてあり、凛とした空気が満ちる。あてがわれた2枚の座布団に座してみたものの、勝手が分からない。ご住職の話に耳を傾ける。 調身とは、体勢を整えること。足を組み、手は右の親指を左で握り、ヘソの下(丹田)辺りに添える。 調息とは、呼吸を整えること。腹で大きく吸い、大きく吐くを十回繰り返す。そ

        • 自分の理想像✖️過度な期待≠実現可能(私の場合)

          書店に入ると、平置きされている最新書籍は自己啓発本が大半を占めていた。デジタル版をポチッとすることが増えたため、書店に足を運ぶのは久々だった。思わず見回した。3分の1がその要素を含む本に見える。身につまされる攻撃的なタイトルに足を止め、見入ってしまう。以前、その類の本を購入した際、そのノウハウは我が身に良い効果を与えてくれただろうか。心許ないと思い元の位置に戻した。「私はどうなりたいんだ」。苦笑する。 買い求めたのは車いすバスケットで東京パラリンピック銀メダリストの鳥海連志

        白獄を味わいつつ対馬を思う

          ベトナムバス旅行(2)サイゴン→ダラット

          スリーピングバスもやっぱり怖いスティーヴン・スピルバーグ監督のデビュー作『激突!』をご存知だろうか。大型トレーラーが執拗に追いかけてくるだけのシンプルなストーリーなのだが、恐怖をあおる描写が秀逸で、子どもの頃に一度テレビで見たきりなのに忘れられない一作になっている。 ベトナムでスリーピングバスに乗る時、不幸にも荒くれドライバーに当たると、この『激突!』さながらのカーチェイスを体験することになる。前回書いたマイクロバスに比べたら車体の安定性は確かだが、別の怖さがある。今日はスリ

          ベトナムバス旅行(2)サイゴン→ダラット

          ベトナムバス旅行(1)バオロック→ダラット

          生きた心地がしない。ベトナムの長距離バスに乗っていると時々そんな状況に見舞われる。今日はその中でもとびきり怖かったときの話をしたい。 ダラット市とバオロック市 ラムドン省には2つの市がある。私が住んでいる省都ダラット市と、もうひとつはバオロック市である。バオロック市は烏龍茶とシルク生産の名所として知られていて、田舎すぎず、かといって都会すぎずの住み良さそうな町だ。ダラットからだとサイゴンに向かう長距離バスで途中下車できる。距離にすると約110km。2時間半ほどである。 その

          ベトナムバス旅行(1)バオロック→ダラット

          民度ってなんだ?

          「民度」という言葉を褒め言葉として表現するのはいい。もしくは自分たちの品位のなさを省みての発言でも聞いていられる。ただ、他の国の国民性について話すときに、民度という言葉を使ってけなす表現は、耳に痛い。逆に自国の民度を落とすことにならないだろうか。その言葉の意味が曖昧なだけに、多くのニュアンスを含んでいるように感じて、その国を全否定しているように感じる。どの国にも外国人が簡単には理解できない文化形成の背景があるはずだ。否定することは簡単だ。だけど、理解しないと相手には近づけない

          民度ってなんだ?

          冷え性女子、ダラットの寒さを知る。

          ベトナムなのに? 震え続けた一日「……、舐めてた」。 吹きっさらしのカフェで、ようやく給仕されたコーヒーカップに手を伸ばしたとき、自分の腕が大きく震えていることに気がついた。まるでコントのように。11月半ば、重くのしかかる曇天、高台にあるオープンエアの空間。熱かったはずのカフェラテがあっという間に冷めていくのを手のひらで感じながら、寄る辺のない我が身をフビンに思い始めていた。 「なぜ私は薄手の長袖一枚しか持ってこなかったのか」。 こんなに寒いと思っていなかった。「2年

          冷え性女子、ダラットの寒さを知る。

          空港までの1時間。タクシーにて

          「空港まで30万ドンで行ってくれない?」 出会い頭に難解なベトナム語で交渉してきた外国人に、40代とおぼしき長身のタクシードライバーは困惑の表情を浮かべた。 「メーターの金額でいいだろ?」 やっぱり簡単にはいかないか。このやり取りが苦手なので通常空港までは安価なシャトルバスを使うのだが、この日は急を要していた。私のベトナム語が通じるか分からないが、ダメ元で言い返した。 「でも、他のタクシーは20万ドンで行ってくれるよ」 事実だった。某タクシー会社は空港から35㎞圏内を一

          空港までの1時間。タクシーにて