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まるで恋するみたいに受験した、息子の話④

前回のお話はこちら

ラーメン2本の、ド緊張

推薦二次試験会場は、徳島市内の大学だったので、前のりすることに。
二次はグループワークと面接なので、ホテルでシュミレーションを何度かやる。
グループワークの内容はテーマしか分からないので、就活用のグループディスカッションの本を参考にしながら進行してみる。
結果的に、心構えと前提は参考になったけど15歳の「グループワーク」自体には直接、役に立たなかった。よく考えたら、就活じゃなくて高校入試だしな…

本番の朝。
本人、おもしろいほどに緊張でガッチガチ。
いつもは朝からカツ丼余裕の大食いなのに、ホテルの朝食ビュッフェで食べられたのは、徳島ラーメン2本だけだった。
「無理してでも、もうちょい食べたら?」
彼を育てて15年。初めて言った気がする。
これまでは「もうそのへんでやめといたら?」ばかりの人生でした。
わ、これはいかん!と深呼吸させたり、アレコレ話しかけたり、肩を揉んだりしたが、うわの空。
緊張しやすい子は、ほぐしグッズとかリラックスできる音楽とか何かしら対策が必要、と思った。

会場入り口で、サマスクのメンバー数人と再会できて、ようやく笑顔が見られた。みんなで輪になって話し込んでいる。
ここでもコミュ力高めの子たちは、初対面の子にも「どこから来たの?」「僕は北海道!」とか「ロンドンです!」「おお〜!」とか、やっている。

お守りがわりのカロリーメイトを息子に手渡して、試験会場に入っていく後ろ姿を見えなくなるまで見送った後。
ひとりになった途端に、堰を切ったように涙が出てきた。ダバダバと次から次へあふれて止まらない。
(見知らぬ土地で、はじめての入試だもんな。そりゃ緊張するよね。私も余裕なかったな、、)と反省する。

地獄の三者面談

帰京して、1週間後。
結果はまたもや出願サイトをクリック。

・・・「不合格」
嫌な予感はあったから、覚悟していた。
それでも頭が真っ白になる。

この日、合否が分かった時点で学校の先生と三者面談をして「第二希望の併願校をおさえるか決める」ことになっていた。
「併願校、お願いします。」と私が担任のK先生に頭を下げると、隣に座っていた息子が泣き出した。
最初はシクシク・・・からの、だんだんポロポロと。
幼児の時から穏やかな性格で、あまり喜怒哀楽を強く出すことがなかった息子。
人に見られるのが嫌なのか、小さい頃はよく物陰に隠れて泣いていたっけ。(体が大きいから隠れきれず丸見えだったけど)
そんな息子が、先生の前でおいおいと泣いている。

子どもが泣いているのを見てるのって、なんでこんなに悲しいのだろう。
なんで私は、彼が泣いている原因を取り除いてあげられないんだろう。

私も無力感で心の中は土砂降りだが、ふとK先生を見て、大変なことに気付いた。

紙みたいな真っ白な顔で、しどろもどろしている。
「ね、息子くんもね、この悔しさをバ、バネにして、また次、ガガガ頑張ろう。」

そうだ、このK先生(26歳/男性)は新任で、受験生を受け持つのは初めてのはず。高専はクラスの誰より試験が早かったため、K先生にとっては「落ちた子をなぐさめる」ミッション、はじめての発動なのだ・・・!
K先生まで、わずかに震えていて今にも泣き出しそうである。

生徒、号泣。
先生、真っ白。
これで私まで泣いたら、地獄
だ。

私は、無理やり明るい声を出そうとして、素っ頓狂な裏声でこう放った。
「あははは!仕方ないですよね!次!次行こう!あはは!」

・・・その声だけが教室に響いて、地獄行きの列車はさらに加速した。

絶望の底にタッチしてターン!

底まで深く落ち込んだ息子は、底にタッチしたと思った瞬間、意外にもすぐに浮上した。
3日後に「一般にチャレンジする」と決めたのだ。
正直、私は「もうしなくてもいいんだよ」という気持ちだったが、本人が
「諦めない」と言っているのだから、ここは応援するしかない。

一般は国語・数学の学科試験があるのだった。
先述した通り、息子が得意なのは「社会」のみ。
社会しか出さない頑固なラーメン屋さんなのだ。
「国語?数学?それなら他の店に行ってくれい!」なのだ。
だから、本当は一般まで持ち越したくはなかった。
幸い「二次関数」「三平方の定理」など、出題される単元が発表されるので、絞りこんで勉強できるのは有り難かった。

一般試験まで、1ヶ月。
息子はそこから逆算して、オリジナルカレンダーを作り、出題範囲を3周ほど網羅できるよう毎日のスケジュールを組んだ。寝る、食べる、学校、以外の時間を全てそれに充てた。
塾の先生にも協力してもらい、苦手な漢字の部首や熟語などにも徹底的に取り組んでいた。(漢検3級テキストが役に立った)

私は毎晩11時に「進捗度チェック」をする係を任された。
「今日のタスクを何%達成できた?達成できない時はその原因は?」「翌日の勉強内容の確認・整理」などを30日間、毎晩。

息子は、来る日も来る日も、本当によく頑張った。
理解できないことはLINEで塾の先生に聞いたり、専用のノートを作って何度も書き込んでいた。
この子、こんなに頑張れるんだ・・・!と驚いた。
地図見てるところしか見たことなかったから。
これ、もっと早くやってれば「社会しか出さないラーメン屋」じゃなくて、ギリシャ料理も和食も素晴らしいクオリティで出すレストランオーナーになれたんでは・・・?」と思ったりする親の欲目。

もう、こじ開けるしか、ない。

そして迎えた学科試験、当日。
国語、数学、小論文。
オンライン試験なので、息子の部屋には入室禁止。家の中の緊張感ハンパない。玄関チャイムが鳴らないよう電源を切り、下の妹は友達に連れ出していただいた。(優しい友人たちに感謝)

さあ、1週間後の発表結果は・・・またクリック。

「合格」!!!!!
確かな積み上げについてきた結果に、息子は自信を取り戻したようだった。
「あんたは、やればできる子。本当にできる子。」
繰り返し繰り返し、合格の2文字をくしゃくしゃになるまで味わった。

ただ、敵は強い。まだまだ終わりじゃない。
二次試験がまた現地で開催される。
今度こそ、キメようぜ!
狭き門、こじ開けよう!!

私たちは、またまた徳島へ向かうのだった。
前回は私と息子だけだったが、次は家族全員で。(3度目)

続きます。


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