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世界最高齢プログラマー若宮正子さん(86歳)に聞く「人生100年時代の子育て①AI・変化に負けない子育て」

Hanakoママwebリニューアルにともない、私が取材・執筆した記事を、関係者の許諾を得て、こちらに転載しています。

2021.11.09by 岡本 聡子

1935年生まれの若宮正子さん。58歳でパソコンを購入。自宅でお母さまの介護を行うにあたり、外部とのつながりが薄くなるのではと危惧し、本格的にパソコンを使い始めました。面白さにのめりこみ、ついに81歳でiPhoneアプリを開発。シニアにパソコンを教えながら、エクセルと手芸を組み合わせた「エクセルアート」を考案し、それをプリントした生地でドレスを作り、天皇皇后主催の園遊会にも出席しました。

米アップル社CEOに「最高齢プログラマー」と称賛され、国連で英語スピーチを行うなど80歳を過ぎてからの活躍には目を見張るものがあります。

まさに人生100年時代を体現する若宮さんに、2回シリーズでお話をうかがいました。

2回目はこちら

人生100年時代の子ども達へ(1)創造的に生きよう

――「いい学校に入れば安泰」「この職業につけば、食べるのには困らない」という見通しがたたない時代です。人生100年時代を生きる子ども達に、私達は何をしてあげられるのでしょう?

大丈夫ですよ。その時々に応じて、必要な新しいものを作りだせばいいのです。それこそが、創造性です。

――創造力が養えると話題の「マインクラフト(ゲーム)」。若宮さんはコンテストの審査員をされているそうですが、子ども達をご覧になってお感じになることは?

小学校低学年のお子さんの作ったものって、ひらめきがすごいの! でも、高学年になると、それなりのものになり、中学生になると、さらに面白みがなくなっていきます。最初の頃のひらめきをいつまでも持ち続けるって、キーポイントだと思うんですよね。

それには、お母さん方も創造的になること。

まずは、お子さんが何かを『創造した』ということ自体に興味を持って、ほめてあげてください。「ねぇ、お母さんにもっと聞かせてよー」ってね。

――若宮さんご自身、エクセルアートで洋服をデザインされるなど、創造性にあふれています。おひとりで取り組まれたのですか?

実際に服を作る段階では、友人・仲間達がサンプルの生地を届けてくれて、手縫いしてくださる方が名乗りを上げて、皆で仕上げました。園遊会に出席した時は、皆さんと喜びを分かち合いました。こういうことって、AIやロボットさんにはできないことです。

・知的集約性の高いこと

・感性が重要になること

・調整や細かなコミュニケーションをとおして、皆でやり遂げること

って、人間しかできませんもの。何よりも、やりたいことがある、っていうのがすべてのはじまりです。私、自分の着たい服を作りたかったんです。それに、ただパソコンを学ぶより、同世代の女性は手芸や編み物を面白がってくださるものだから(笑)。

人生100年時代の子ども達へ(2)一生、学び続けられる人に

――変化が激しい時代を子どもが生き抜くために、親ができることは?

時代に要求されるスキルや知識はどんどん変わっていきます。現在、ご両親が先回りして『この学校に入れば安心』『これを勉強しておけば楽』とお考えになる内容も、いずれきっと変わっていきます。ですから、その時々に必要なことを学ぶ姿勢が大切です。学びを続けるには、まず『学ぶことのすばらしさ、楽しさ』を子ども達に教えてあげてください。

学校では不得意だったとしても、どんな科目にも少しぐらいは面白いなぁと思えることがあるはずなの。それをみつけて「やったー!」っていう体験をしてもらいたいです。

そして、目先の『志望校に入る』『良い成績をとる』ことに一喜一憂しないで。そんなに急かさなくても大丈夫。学び続けることのできる人は、人生をとおして成長します。

多少勉強が遅れていても、後からやればいい。現在のガチガチの教育制度はいずれ意味をなさなくなります。家でも、一人でも、やる気とネット環境・電子機器さえあれば、いつでも学べる時代なのですから。お母さん方も、そういう時代にさしかかったんだ、とお子さんを見守ってあげてはいかがでしょうか。

人生100年時代の子ども達へ(3)友人を作り、人の輪を広げる力を育んで

――いくらオンラインやIT技術が発展しても、人はひとりでは生きられません。時代とともに、他人との関わり方も変わっていきますが、何をよりどころにすればよいでしょうか?

仲間を作り、協力して物事を進める能力は、時代が変わっても不可欠です。いろんな人と出会って、時にはぶつかって、という経験を小さいうちからたくさんしたほうがいいです。これから大切なのは、人の輪の広げ方。

今までは、『〇〇会社の私』という肩書重視の社会でしたが、すでに『□□ができて、△△もできて、××をやりたい私』という複数の『#ハッシュタグ』が付く人が歓迎される時代になってきました。

趣味が豊富っていうのかな。『ピザ作りなら任せて』『駅の看板程度ならアラビア語が読めます』『ブルガリアにめっぽう詳しい』なんて魅力的ですよね、会ってみたくなります。自分のやりたいこと、好きなことがご縁で、新たに人とつながる時代になったなんて素敵じゃないですか?

AIに仕事を奪われるのでは? と不安をあおる論調のレポートを読んだことがありますが、人間にしかできないことが確実にあります。例えば、AIはデータ分析して「やらねばならないこと」を導き出してくれるかもしれませんが、「やりたいこと」を考え出すのは自分自身です。

次回は、「若宮さんにききたい!人生100年時代のITとのつきあい方、子どもとの向き合い方」です。

取材・文:岡本聡子

若宮正子さんの現在:

東京都生まれ。デジタルクリエーター、ICTエバンジェリストとして活躍。シニア向け交流サイト「メロウ倶楽部」副会長。NPO法人ブロードバンドスクール協会理事。熱中小学校教諭。デジタル庁「デジタル社会構想会議」構成員。著書多数。

岡本 聡子ライター・経営学修士・防災士

戦略系経営コンサルティング会社を経て、上海にMBA(経営学修士)留学。その経験をもとに『中国のビジネスリーダーの価値観を探る』(『上海のMBAで出会った中国の若きエリートたちの素顔』を加筆・改題)を株式会社アルクより出版。幼稚園児の母。分析・事業開発支援、NPO運営なども行う。 facebook.com/okamotosatokochina

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