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出版業界の中にいる人が考える、「アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎」のメリット

近ごろの私のFacebookの投稿は、「インテグラル理論」「山(山伏含む)」「ランニング」そして、「ABD」。だいたいこれです。
それぞれ、私の中ではゆるやかにつながっていることではあるのですが、今日はいったん、「ABD」についてまとめてみたいと思います。
(とくに、出版業界の片隅に身を置く、ビジネス書編集者の視点から書きます)


1.ABDって何?

まずそもそもの話として。
「ABD」とは、アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎の略。
「未来型読書法」とも呼ばれる、読書の手法のひとつです。
全国的に、というわけではないのですが、少なくとも私が身を置くコミュニティの界隈では、確実に知っている方、やったことがある方、自分で主催する方が増えています。(自分でやる読書会でも、「知っている」という人の割合が増えてきている印象)

ABDについて、詳しくは↓をご覧ください。

アクティブ・ブック・ダイアローグ協会®︎ http://www.abd-abd.com


2.(かんたんに)ABDとの出会い

ABDとの出会いは、『組織にいながら、自由に働く。』という本をつくった時のこと。
ゲラ(原稿をもとにデザインされた誌面レイアウト案)にもなっていないword原稿を使って、「発売前なのに、読書会」というものを行った時のこと。
午後いっぱいの読書会のあと懇親会は1次会、2次会へ…そして2次会でもまだ半数近くの方が残っているという状態(お酒好きが多かったというのもありますがw)。

その時の様子はこちらで詳しく紹介しています。

楽天の“自由すぎるサラリーマン”仲山進也さん、「働き方」の本を書く――そうだ“発売前”に読書会やろう!https://next.rikunabi.com/journal/20180515_d11/

そこでABDの可能性を知り、というか純粋にその楽しさに気づき、認定ファシリターターの講座に行ったのが昨年冬のこと。
1月に晴れて認定を受けてから、おそらく10回ほど自分で読書会を主催してきました。参加者としても10回くらい?それ以上??

数は置いておいて。
いわゆる読書会というものは、それ以前から何度か出たことがありますが、ABDはちょっと違うんですよね。

ひと言でいうと、色んな意味で「コスパ」が良いんです。講師などの経験のない人間でもファシリテーターができるシンプルな方法(だけど奥は深い)で、たくさんのメリットが得られます。

以下では、とくにビジネス書の編集者という立場から、
「アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎」
のメリットについて、3つにまとめます。

3.ABDのメリット① 読書のハードルが一気に下がる!

ABDの最大のメリットは、
事前に読まなくてもOK! 本を持ってこなくてもOK! 着の身着のままで参加できる!
というところ。

今のビジネスパーソンって、みんな忙しいですよね。学びたいこと、学ばなければならないと感じることはたくさんあるけれど、その時間が取れない・・・という方も多いはず。
でも、ABDは、みんなで分担して1冊の本を読むので、負担がかなり減ります。

分担して読む、となると「輪読」をイメージするかもしれませんが、輪読よりも、もっとずっと気軽で楽しい、というのもABDの良さのひとつです。
気軽で楽しいものにするための工夫がたっぷり詰まっています。

そのひとつが、「紙芝居プレゼン」。
ABDでは、自分が担当したパートを、B5用紙5~6枚程度の「紙芝居」風にまとめて、プレゼンします(「KP法」と呼ばれます)。

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「紙芝居プレゼン」で1枚に書く分量は「5~6行×10字程度」。
分担するとはいえ、一人が読む量は少なくても10ページ弱、多い時は数10ページ。

これだけの分量に、内容を正しくまとめるなんて、ムリ!!!です。

はじめて体験する方は、このあたりに戸惑うようなのですが、
個人的には、ルールとして
「誰もカンペキにまとめることができない」
ことになっているのは、ABDのとても良いところだと思います。

「読書が苦手」という方、たぶんたくさんいますよね。
そういう方のお話をうかがうと、多くの方が、

「一字一句、理解しなければならない」
「読んだことを覚えていなければならない」
「最後までちゃんと読みきらなければいけない」

と思っている様子。
でも、これ、ムリだと思います。
少なくとも私は、プライベートで、こんなふうに読むことはないです。

ざっくり、何となく概要を理解して、必要だと思ったら読み返す。

以前、『東大生の本棚』という本をつくった時、東大生の読書のしかたについてアンケートをとったら、そのような回答が多くありました。(詳しくは、本をお読みいただければ幸いです)

★『東大生の本棚 ~「読解力」と「思考力」を鍛える本の読み方・選び方』https://www.amazon.co.jp/dp/4820731599/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_pX2DDbK57ZN4E

少し話がそれましたが、「忙しさ」に加えて、「カンペキ主義」が読書のハードルを上げている様子。そして、ABDは、その両方をクリアするのに最適なわけです。

超カンタンですが、読書法を4つの象限に整理してみました。

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誤解されがちなのですが、私は、「ABDが最高!」と言いたいわけではないです。
どれもそれぞれの良さがあると思います。
だから、目的やその人の状況に応じて、本の「読み方」も選べばいい!

もし、現代人にとって、「一人でじっくり読む」というタイプの読書法がハードルの高いものになっているのだとしたら、「みんなでざっくり読む」というタイプの読書法のオプションがあっても良いのでは、と思うわけです。

少し話はずれますが、本を提供するプロである出版業界にいる者としては、本というコンテンツだけではなく、そのコンテンツの楽しみ方(読み方)まで提案できると、尚良いのでは?という思いもあります。…が、それは少し話がずれるので、次のテーマへ進みます。

4.ABDのメリット② 「実践」の可能性が高まる(気がする)

ビジネス書の編集者としての仕事をはじめてから、ひとつ気になっていたことがあります。

「私がつくった本、果たして読まれた後は、どうなっているのだろうか・・・・・・?」

ここで言いたいのは、モノとしての「本」というよりも、コンテンツとしての「本」という意味合いが強いです。

私の個人的な話をすると、編集者としてのキャリアのスタートは、大学受験予備校で生徒たちが読む情報誌の編集。そして、教材の開発。なので、用途がわかりやすかったんですよね。
でも、その後、「ビジネス書」の編集という現職についてから、「一体、私がつくった本はどう使われているのか?」という疑問がわくようになりました。

「ビジネス書」は、大まかなジャンルわけをすると、「実用書」。
定義は、「日常生活で役立つための技能・知識・情報などを主とした本」であり、それを目指して著者やデザイナーさん、校正者さんと、あれこれ揉みあいながらつくっています。

そこにあるのは、

「この本で紹介することを実践すれば、誰かが幸せになるはず。社会が多少なりとも良くなるはず」

という願いです。
世界を変える、なんて大それたことは言えませんが、バタフライエフェクトを生み出せるくらいの、ちょっとした変化は生み出したいという願いはあります。

翻って、自分のことを考えてみて、「読んだことをどれだけ実践できているか?」と聞かれたら、ほんとうに申し訳ない気持ちになります。

「理解」→「実践」のカベって、相当強固なものだと思います。

少しややこしくなりますが、タキソノミー(教育目標分類学)の「認知過程次元」によると、学びには6つの段階があるそうです。

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「活用・実践」するためには、少なくとも「記憶」して、「理解」しなければいけない・・・・・・。

「実践してほしい」というのはカンタンですが、意外と険しい道のりです。
そして、「実践してほしい」と願うだけでは、他力本願が過ぎる気がしています。

「実践」を考えた時も、ABDはなかなかな効果を発揮してくれます。
その理由は、一緒に読む「仲間」という存在。

人間って、弱い生き物です。
「やろう!」と意を決しても、やって3日、1週間が限度。
習慣化するってほんとうに難しいです。

でも、まわりの目があるとがんばれるものです。
「まわりの目を気にする」って、あんまりいいイメージがないかもしれませんが、行動を変えたり、自分ひとりでやるのが難しい時は「仲間」の助けを借りる、というのはとても効果的な方法だと思います。

ABDの良さは、わりと短い時間で「仲間」になれること。
ABDは、別名「超参加型読書法」とも呼ばれます。
分担して読む、ということは、全員が必ずチームに対して貢献することになります。

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さらには、読んだ後、「ダイアローグ」の時間を設けるのもABDの醍醐味。
個人的には、分担して本を読むことで、短時間で負担少なく全体像がざっくりつかめるということ以上の、ABDの良さは「ダイアローグ」にあると思います。

単に本を読むだけじゃなくて、本を読んで気づいたことや湧き上がってきた疑問をその場でシェアする。そして、他者の意見を聞いてみる。

「まわりの方からの意見を聞くことで、より立体的に本が理解できるようになった」

こんな感想をいただいたことがあります。

あとは、「何より、一人で読むより楽しい!!」という声も多数。

人間って弱い生き物だと思います。
だけど、楽しいことって、やりたくなりませんか?
「楽しかったと記憶していることって、またやりたくなる」とも言い換えられるかもしれません。

そうやって考えた結果、次のような仮説を立ててみました。

「本を読み、学ぶ」という、新しいスキルや知識とのファースト・コンタクトがより楽しくてポジティブなものになればなるほど、理解しやすくなるし、実践したくなるのではないか?

実際に、「習得は楽しさに比例する」という法則もあります(『クリエイティブ・トレーニング・テクニック・ハンドブック』より)。

ここはまだ実証できたわけではないけれど、どうやらその可能性が高そうだ、ということを記録しておきたいと思います。

5.ABDのメリット③ 本の「販売」につながる

そして、最後。
これは、おもに出版社や書店さんなど、業界関係者に向けたことです。

できれば、それ以外の方は読まないでいただきたいです。

業界関係者のみなさんへ、ABDをやると、本の「販売」につながります。

もう少し丁寧にいうと、次のようなステップです。

≪本の購入に至る理由≫
①ABDによって、読書体験がポジティブなものになる
   ↓
②もう一度、読んでみたいと思うようになる
   ↓
③本を買う意欲が高まる

ABDは、事前に本を用意する必要はありません。
実際に、多くの方が本を持たずにいらっしゃいます。

そこで、ABDが終わった後、こんな調査をしてみました。

「今日のABD読書会で読んだ本を購入したいと思いますか?」
選択肢は次の3つ。
・はい
・いいえ
・もう持っている

「もう持っている」を除いた、「はい(購入したい)」の割合は、85.4%
(対象人数57名)

書店さんでABDをやった時は、「読書会後、飛ぶように本が売れた」というケースもあったそうです。

知らないものって、当然買えません。
買ってもらうためには、ポジティブな印象とともに知ってもらうことが大事。そう考えると、ABDは本の販促としても効果があるようです。

あとは、こんなメリットも考えられます。

「その本を、誰かに勧めたくなる!」

これも、もう少し丁寧に紐解くと、こんな感じです。

①ABDによって、読書体験がポジティブなものになる
  ↓
②その体験をSNSなどでシェアしたくなる
  ↓
③体験とともに、本が紹介される
  ↓
④投稿を見た人が、ポジティブな印象とともに、その本を知ってくれる
  ↓
⑤その本を買ってくれる可能性が高まる

販促効果に関して、あともうひとつだけ。

ここまでABDのメリットを述べてきましたが、実は大きなデメリットがあります。
それは、「本を解体しなければならない」ということ。

ABDは、本をみんなで分担して読みます。
どうやって分担するかといえば、、、本を解体して、それぞれのパートに分けて読みます。

ただ、モノって大事にしたいですよね。「できれば解体したくない」というのがファシリテーターの本音です。かと言って、みんなに「持ってきて」というとハードルが上がるから、そうも言えない・・・そんな葛藤を抱えるファシリテーターは少なくはないのでは?

そこで、近ごろはこんな取り組みが増えてきました。

「ABD読書会用 ゲラ無償提供」

手前味噌の事例で恐縮ですが、↑は私がつくったページです。
元々は、『ティール組織』(英治出版)発売後に行われた取り組みから、学ばせてもらったものです。

「ゲラを無償提供する」という取り組みは、
「本を解体したくない」というニーズにぴったり刺さります。

すると、読書会の開催件数も、ふつうに本をつくって売るだけより、ぐんと増えます。(具体的な回数は、カウントが面倒なので、そのうち時間ができたら公開します)

その結果、↑で書いたような「販売」上のメリットを享受できる可能性が高まる、ということにもつながるわけです。(自分でイベントを企画するよりも、ずっとコストは低いはず)

これまで担当した書籍3点で、ゲラの無償提供を行ってきました。

「ハードルを下げることで、たくさんの方に本と出会ってほしい!」
「読書経験がポジティブなものになってほしい!」
「ABDという読書法をつうじて、実践の可能性を少しでも高めてほしい!そして、世の中にいい影響を与えてほしい!!」

という願いはもちろんあります。

でも、きれい事だけではないです。
実はこんな実利的なメリットも享受していたということも、これを機に明かしておきます。

6.最後に

以上が、私が考えるABDのメリットでした。

そして、最後に、元々、なぜこの記事を書いたかというと、とくに、出版業界の方にABDという読書手法をもっと知ってほしかったからです。

私は、ABDに出会ったことで、
「本の可能性はまだまだこんなもんじゃない!」
というインスピレーションを受けました。

たぶん、どこの会社の方も、とても大変だと思います。
将来を楽観視している会社さんは、きっとないだろうと思います。

ただ、今のままでは持続不可能じゃないか?というのは、きっとどこかで薄々感じているのでは・・・?

自分のいる会社が、というよりも、サプライチェーンも含めた業界のしくみとして。
そして、もう少し広くいえば、「読書経験」までを含めた「本」の価値として。

「ABDこそ、出版業界の救世主です」
ということが言いたいわけではないです。

そうじゃなくて、
「ABDによって読み方の選択肢を広げることで、別のビジネスのあり方も見えてくるのでは?」
という思いから、長々とこんな文章を書いてみました。

もし、万が一、これをきっかけにABDに興味をもっていただける方がいらしたら、
まずはマニュアルをDLしてみてくださいね!

アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎協会 http://www.abd-abd.com

ABDについては、もう少し深堀りした考察もしたいのですが、今日はいったんここまで。
お読みいただきありがとうございました!

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satomi kashiwabara

書籍編集者(主にビジネス、教育関連)、ABD認定ファシリテーター、強みアドバイザー。山、川、海、森、縄文、江戸、猫、猫村さん、味噌、玄米、さつまいも、お酒を愛しています。noteは、つくった本のことや日々の振り返りなどを徒然と。2019年1月、藤沢に引っ越しました。
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