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【徒然なる雑感】10.「ヤンバルオオフトミミズ」は「犯人」か「立役者」か

本日(もう昨日だけど)、ユネスコにより、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録されることが決定した。世界的にも希少な亜熱帯の森に、数多くの固有種が生息する生物多様性を評価した、とのことである。沖縄本島北部の山原地域は「ヤンバル」の名で親しまれ、広大な森が広がっている。「ヤンバル」の名を冠したヤンバルクイナやノグチゲラは有名だが、そのほかにもヤンバルオオヒメコウモリやオキナワイシカワガエルなどの絶滅危惧種が棲息する。また、今年の4月には新種のムカデ「リュウジンオオムカデ」が発見された。ヤンバル地域は日本の国土の0.1%ほどだが、棲息する鳥類、両生類は日本全体の3割の種が確認できるということからも、自然の豊かさが感じられる。

世界自然遺産への登録に先だって、「サイエンスZERO」「ダーウィンが来た」などの番組でヤンバルの森の多様性が紹介された。そのうちの「サイエンスZERO」を見たのだが、MCを務めるアナウンサーさんがこんな表現をした(*1)。「ヤンバルの森に生き物の多様性をもたらしている、ある犯人がいるのですが…」と。「犯人」!?なぜそこで「犯人」という語を使った?もう一人のMCの小島瑠璃子さんも、そこは「立役者」の方が…とすかさずツッコミを入れていた。小島さんのMC力に感心した瞬間であった。そのあと、番組は、その「犯人」なる「ヤンバルオオフトミミズ」が森の土壌をいかに豊かにしているかの解説へと続く。解説の中では「ヤンバルオオフトミミズ」が「とっても大切な役割を果たし」、「ありがたい存在」で、ヤンバルの森が彼らに支えられていると、ヤンバルオオフトミミズさまさま!ヤンバルオオフトミミズ礼賛の嵐である。しかし、この解説VTRでもナレーターが、ヤンバルオオフトミミズを「多様な生き物を育む犯人」と称すのである。褒めたいのか、けなしたいのか、もうワケワカメである。

たしかに、この「ヤンバルオオフトミミズ」は体長40cmとミミズにしてはなかなか巨大だし、ミミズという生物の姿形が世の人々から好まれるかというときっとカブトムシほどには好まれないだろう。たぶん、私は森の中で出会ったら、ぎゃーと叫びながら避けてしまうかもしれない。そんな見た目だから「犯人」というマイナスの言葉を使ったのだろうかと思うのはうがった見方だろうか。しかし、見た目で判断してはいけない、ではないが、比喩を使うのなら、もう少し適切な表現にしてほしい。それこそ、小島さんのいう「立役者」でもいいし、「仕掛け人」でもいいし、「キーパーソン」でもいい。ま、「人」ではなく「虫」なんだけど。ということで、「犯人」のままにしておくのは不憫なので、この場を借りてヤンバルオオフトミミズに感謝状を贈りたいと思います。

感謝状
ヤンバルオオフトミミズ殿
***

あなたは、落ち葉を直接食べることができるという特殊能力により、ヤンバルの土壌を豊かにすることで生物の多様性を育む「仕掛け人」として長年活躍してきました。さらに、あなたが集めた葉は土壌生物たちの食事となり、また時には、自分自身の身をヤンバルクイナに捧げるなど、生き物たちを育む「キーパーソン」として立派に生きてきました。このたびのヤンバルの森を世界自然遺産登録へと導いた「立役者」として、感謝の意を表するとともにあなたを大事にして、ヤンバルの森を守っていきたいと思います。

(*1)たぶん、その後の解説VTRで「犯人」と使われていたから、その単語を使ったのだろう…。

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