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「街に棲む隠者」というコンセプト

 自問自答ファッションやムーンプランナーに関連した話を、徒然なるままに何本か書きましたが、まだコンセプトの話を書いてなかったな、と思い出したので、少し書き残しておくことにします。

★★★

 私の今のコンセプトは、「街に棲む隠者」です。
 社会の中で意味のある役割、有意義な活動のようなものからかなり遠ざかり、いくつかの内面的規律を頼りに、淡々と生きています。果たすべき使命も、追い求める星も、声を枯らして応援する推しも持ちませんが、外から見たら静まり返った湖のように穏やかな生活が、私という存在なのだと今は思います。

 ただ、内面的には常に極端な価値基準が、「ここしか折り合えない」という妥協点に向けてキリキリと綱引きをしているので、ほのぼのとは程遠い心象風景が広がっていますけれど(笑)。好きなものはそれなりにありますが、耐えられないことも同じかそれ以上にある、そんな世界です。

 特に社会の中で何か意味のある役割や位置を占めていないことに、昔は問題意識を感じていて、それはそういう自分が許せないという罪悪感ではなく、「これでは人間社会の中で生きていくことが不可能なのではないか」という、端的に安全保障感が脅かされている感覚でした。けれど、強迫的ですらあった「社会に何かしら貢献せねばならない」「お金を稼いで経済的に自立しなければならない」という思いをいったん脇に置こう、と決めてからは、肩が軽くなった気がします。
 別に、それでも結構何とか、生きていけるものです。それはあなたが幸運だからですよ、と言われればそうなのでしょうし、他人にこの生き方を勧めようとは思いませんが。けれどお金がもらえるような社会への貢献をするように自分を改造するよりも、お金がなくても何とかなる方向性に生活を変える方が、私には向いている気がしました。

 一方で、私はずっと昔から、自然環境と調和していかなければ、人類(そしてその一員である自分)が存在していくことは不可能だろうという強い感覚とともに生きています。
 私のエシカル性へのこだわりは、エシカルという言葉が世に生まれるはるか前からあるもので、ファッションについてもそこを外して考えることがどうしてもできません。何しろ家族からは「あんたはナウシカか」とか言われてた少女時代ですからね……。いやあんな強くて凛々しい女性では全然ないし、王蟲の声も聞こえないんですけど……。

 もしも私に肉体的精神的な頑健さが備わっていたら、この向自然性のおもむくままに、森の中で自給自足生活をしていたのかも知れませんが、あいにく私にはそちらの方面の能力がからっきしでした。母は庭に美しい紫陽花をたくさん咲かせていたのに、私は青じそすら枯らす有り様です。どこがナウシカか。いや自称してた訳じゃないけど。
 自然と調和したい、せねば生きられないという強烈な感覚と、しかし人工的な安全を確保された環境でしか生きられないという現実の衝突は、私の内部に数多存在する「極端で、かけ離れている二つの視点の対立」の中でも、かなり古株の矛盾です。

 そういった私を表現する言葉としては、街に棲む隠者というのが、ふさわしいのではないかと思います。隠者という言葉のイメージと、街という言葉のイメージの、妙に相容れない落ち着かなさが、よく現れています。

★★★

 そして、私が服を選ぶ具体的な形容詞は、「違和感がない」ということです。

 私が服に求めることは、エシカルな作り、環境負荷の高くない自然素材、肌触りのよさ、締めつけのないデザイン、淡くグレイッシュな色合いといった要素ですが、それに加えて、声高な主張がないことを強く意識していると気付きました。街の中で野に咲く花、いや風にそよぐ草である私は、どんな場でも違和感なくなじめるプレーンさを強く求めているのです。
 多くの美しい服は、まさに強い主張を持つがゆえに美しいものです。だからこそ、私はそれらを気持ちよく愛でられるのですが、同時に not for me であるからこそ「愛でる」という関わりをするのです。
 また一方で、ミニマリストご用達の白シャツデニムパンツや、無印良品のシンプルワンピースなどは、「シンプル!」という強い主張があります。

 主張しない、違和感がない……という言葉で選ぶというのは、あまりにもネガティブな印象があって、自分でも気が滅入りそうで何とかポジティブな表現はないものかと思ったのですけど、「プレーン」とか「どこにでもなじむ」みたいな表現の方が伝わるんですか、ね……?

 私が普段身を置くのは、家事や読書や書き物やFF11のプレイをしたりする自宅、図書館と書店、何軒かの素晴らしいお茶を出すカフェ、散歩や周遊型謎解きをする様々な街、つれあいと一緒に行くレストラン(気軽なビストロからグランメゾンまで)あたりですが、そのすべてはさすがに無理でも、大抵の場所で違和感なく溶け込める服を探して、私は今日も右往左往しています。

 幸い「街に棲む隠者」というコンセプトが明確になってからは、やはり非常に選びやすくなり、いくつかこれかなぁと思える服は見つかってきました。予算の問題もあるので片端から買うという訳にはいかないのですが、近々「制服が決まりました」と言えるのではないかと希望を持っております。
 まぁ、現状も毎日同じ服を着ているので、制服化してると言えなくもないのですけどね(笑)。

 おまけ。今まで書いた自問自答ファッションやムーンプランナーの話は↓


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