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【小説】とあるゲイの恋物語【第5話】

あれから数日、
としやは、こうすけからの連絡を待っていた。

自分の部屋のソファーの上で横になり、スマホの画面を眺めた。

「はぁ」

静かな部屋に大きなため息が響いた。


「こっちから連絡してもいいのかな。でも…なんて送ったらいいんだろう」

そう言いながら、こうすけを想い、スマホを胸に抱いた。


その夜、寂しさを抑えきれず
としやは、あのお店の前にいた。

期待と不安でいっぱいの気持ちを抱えながらも、お店のドアを開けた。


「こんばんは。」

としやは、店内を見まわしたが、
お客は他に誰もおらず、少し落ち込んだ。

「いらっしゃい。」

店主のゆうじが出迎えた。
しかし、元気のないとしやを見て、

「ん?どうしたの?何かあった?」

「とりあえず、奥の席にどうぞ。」

ゆうじにお店の一番奥のカウンター席に案内された。


席に着くと、

「ご注文は?どうする?」

ゆうじがそう話しかけると


としやが、少し寂しそうな顔で

「お茶割りをください」


そして、少し間をあけて

「こうすけさんって、最近お店にはきてますか?」

とゆうじに聞いた。


ゆうじがお酒を準備しながら

「そういえば、こうすけもだいきも、最近見てないわね。」
「でも、1週間くらい、仕事が忙しくなるって話してたわよ?」

「そうなんですね。」

やはり、としやは少し元気がない。


見かねたゆうじは、としやに言った。

「としやくん…こうすけと連絡先交換したんでしょ?」

少し驚き、つこし動揺した様子で

「ゆうじさんが、なぜそれを?」


ゆうじは、予想が的中し、少し満足げな顔。

「あの日、こうすけが、としやの忘れ物を届けた後、お店でスマホをずっと見ながらニコニコしているから聞いたのよ。」

「そしたらこうすけったら…」


「としやくんと連絡先交換したんだって」
「すごくはしゃいでた。あんなこうすけ初めてみたわよ?」


その話を聞いて、
少し不安な気持ちがなくなったのか、としやの表情に明るさが戻った。

「そうなんですか?でも、あれからずっと連絡が来なくて…」


ゆうじが呆れ顔で

「あんたたち、もういい歳なんだし少しは積極的に動きなさいよ。」
「としやも、こうすけも、お互い興味があったから連絡先交換したんでしょ?」


としやは、少し照れながら答えた。
「それは、そうなんですけど。」

「こうすけは、体は大きいけど、寡黙な子だからね。」
「としやから連絡してあげたら?喜ぶと思うわよ。」

ゆうじが、そうアドバイスをすると


としやは、戸惑いながら
「で、でも…こういう時って、なんて送ったらいいのか。」

としやが、相談すると

「そうねぇ。ご飯でも誘ってみたらどうかしら?」


としやは、ためらっていた。
その様子を見て、ゆうじは少し真剣な顔で言った。

「今すぐ送りなさいよ。」
「どっちかが動き出さないと先に進めないわよ。」


慌ててスマホを取り出すとしや。

ー こんばんは。今度の土曜日、よかったら、一緒にご飯へ行きませんか?

こうすけに、メッセージを送った。


すぐに既読のマークがつき、こうすけから返信が来た。

ー としやくん、誘ってくれてありがとう。
ー 土曜日はどうかな?

としやが満面の笑みでゆうじを見た。


「だから、言ったでしょう?」

ゆうじも満足げだった。

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