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闘アレ生活(4) 〜クレーマーじゃないんだけどな篇

57歳のある日、いままでアレルギーなどひとつもなかったボクが、突然アニサキス・アレルギーになった。そして、ほとんどすべての魚介類が食べられなくなった。いまは魚系のダシやエキスまで避けている。
そういう生活とはいったいどういう感じなのか、ちょっとだけリアルに知ってもらうために、ちょぼちょぼ書いてくシリーズです。
暗くなる話も多いけど、リアルに知ってもらうのが目的なので、申し訳ありませんがご理解ください。
「闘アレ生活」の過去ログや他記事はこちら


お店に対する態度には相当気をつけているほうだと思う。

レストランガイドを主宰したり、グルメライターをやってたりしたこともあって、お店側の考え方もいろいろ知っているし、お店をやっている友人から「困る客」「迷惑な客」の実体験もいろいろ聞いている。

そういう客にだけはなりたくない、と心から思っている。
その日の食事は一生に一回。やっぱり気持ちよく食べて気持ちよく帰りたいからね。

そんなボクだが、ここんところ、クレイマー扱いや迷惑客扱いをされることが急に増えてしまった。

態度が変わったわけじゃない。相変わらず気をつけている。
いや、以前より気をつけているくらいだ。

でも、特殊なアレルギーになってしまったので、「魚を使ってないメニューはあるか」「魚ダシや魚エキスを使ってないか」など、どうしてもくわしく聞かないといけない。聞かないと命に関わる。

また、入店してテーブルに座ってから聞いてダメだったらもっと迷惑だから、どうしても入店前に店頭で聞くことになってしまう


なんか、これがどうも「迷惑な客キタ」「変な客キタ」と思われるらしく、わりとつらい対応を受けることがあるのだ。

10軒に1〜2軒くらいの確率で。

まぁこうして説明するより、いくつか実例を読んでもらった方がわかりやすいかもしれない。

以下は、オーバーに書いているのではない、実際の例である。

実例(1) シッシッと追い払われる


ランチ時、日本人がやっている東南アジア料理店で実際にあった話。

海南鶏飯(いわゆるシンガポール・チキンライス)が店頭ディスプレイにあったので、急に食べたくなった。

たぶん海南鶏飯には魚ダシや魚エキスは使ってないだろう。
ナンプラー(魚醤)やオイスターソースをタレとして使うかもしれないけど、普通の醤油をもらって食べればなんとかなるかもしれない。

とりあえず聞くだけ聞いてみよう、と思った。

カウンターだけの小さな店でカウンター内は年輩の日本人夫婦。
まだランチのラッシュまでに時間があり、席も五分程度の入りだ。
聞いても迷惑にはならなそうだ。

※ 店頭や店内に日本人従業員がいない店は、正確な意志疎通ができず、アレルギー患者にとっては怖すぎるので最初から入らない(高級店を除く。高級店はちゃんと対応してくれることが多い)。


「あのー、お忙しい時間にすいません。魚介類のアレルギーがあるんですが、このチキンライス、ダシとかナンプラーとか」

「は?」(と、店主と思われる男性)

「あ、すいません、魚介類のアレルギーがあって、タレとかソースに魚の」

「あのね、これはチキンライス。チキンの料理。わかる?」

「はい、だから、あの、アレルギーがあって、タレとかに魚醤とかオイスターソースとかが」

「シッシッ」


・・・つか、犬を追うようなシッシッって動作、久しぶりに見たわw

店頭でしばし固まってしまったのだが、店内のお客さんたちがみんなこっちを凝視している。
「あー面倒くさい人が来たって思われてる!」って、惨めになって退散した。

※実際はお客さんがそんなことを思っていることはないと思うが、こういうことが続くとどんどんネガに考えがちになってしまい、なんか悪いことしているような気持ちになっていたたまれなくなるのである。


・・・たぶん、いろいろ面倒臭いことを聞く変な客と思われたか。

いや、そうじゃなくて、なんか面倒くさい取材か、クレームか、なんか売りつけようとしている営業かなんかが来たと思われたのか・・・

もしくは、チキンと魚の違いもわからない変な客に喰わせるメシはねえ、って思ったのか・・・


この「シッシッ」は、アレルギーになってわりと初期に体験し、かなりのトラウマになった

いままで外食は「超得意分野」だった。
そこから急に疎外され、ひとりぼっちになったような気分になった。

なんだろうな、大リーグボール3号で左腕がダメになって姿を消した星飛雄馬が、野球を忘れられず、ちょっと草野球に混じれないかと思って勇気を出して近寄ったら「おまえみたいなチビいらねーww」とか嘲笑されて追い返されるみたいな?(たとえが古っ)


・・・もともと気持ちが弱っているので、こういうひとつの体験から簡単にウツになったりする。実際あのころの抑うつは、この体験が引き金だったかも・・・


もうひとつ例をあげよう。


実例(2) とにかく拒絶される


ランチ時に、あるハンバーグ店で実際にあった話。

まぁハンバーグなら魚系は使ってないでしょ、って思うよね?

でも、隠し味として「うまみ」を足すために、魚介類のダシやエキスを足している店もたまにある。ソースも和風ソースを使っている場合もある。

「うまみ」は、日本人の大切な味覚だからね。

あと、定食にスープがついていたりする。
これが和風スープとかだと、ほぼ魚ダシを使う。まぁこれは断ればいいのだけど。

ということで、ランチの店頭でとりあえず聞いてみた。

まだ店は半分くらいの入り。
行列も出来てないし、訊きどきだ。

席に案内してくれようとするアルバイトさんに、こう言った。

「あのぉ、ランチの忙しいときにすいません。
 魚のアレルギーがあるんだけど、魚のダシとかエキスとか使ってたりしないでしょうか?」

※ たまにアルバイトさんで「魚介類」という単語が通じない方がいることを学んだので「魚(さかな)」と言うことにしている。
また、アニサキス・アレルギーだと言うと、アニサキスの説明をしないといけない。厨房のシェフはまだしも、店頭のアルバイトさんレベルだとまず知らない。そんなことしているとランチの戦場では迷惑になるので、総じて「魚」と言うことにしている。


「はぁ・・・あの、うち、ハンバーグ店ですけど?」

「はい、でもソースとかに使っている場合もあって・・・」

「はぁ・・・ちょっとシェフに訊いてきますね」

「あ、それと、定食のスープ・・・あ、行っちゃった。まぁいいか」

「・・・すいません、どういったご用件でしょうか?、とシェフが」

「あ、いや、アレルギーがあって」

そのとき、遠く厨房から、大きな声が届く。

「すいませーん、うち、そういうのやってないんで!」

お客さんたちが一斉にこっちを向く。
最高にイヤな瞬間だ。。。死にたい。オレはクレーマーじゃない。

「あ、いや、あの・・・ただ、アレルギーが」

と言いかけても、あとはこっちの言葉にかぶせるように、

「申し訳ありませーん!」

のくり返し。
はよ帰ってくれというのがありあり。

アルバイトさんが困った顔して「すいません」と言う。
言外に「すいませんが、お引き取りいただけますか?」というニュアンス。

・・・もうとりつく島もない。
とにかく、注目が集まるのが嫌いな性分なので、退散した。

※アレルギーのことを世の中に広めるためにはここで踏ん張ってアピールするのも大事かもしれないけど、まだアレルギー一年生でそこまで強いハートは育っていない・・・



しかしなんだったんだろう、「そういうのやってません」って。

やっぱあれかな、「アレルギー対応とかやってないんですー」ってことかな。

まぁ小さい個店なので完全対応が難しいのはわかるし、シェフも不勉強を恥じているのかもしれない。とはいえ・・・(つらみ)


このふたつは経験した中でも酷い例ではある。
でも、10軒に1〜2軒は、これに近い惨めな体験をする。

もう怖くて外食にどんどん消極的になってしまう。

たとえ入店させてくれても「忙しいのに迷惑な人キタ」「かわいそうな人キタ」というような目で見られ、いたたまれなくなることは多い。

自意識過剰かもしれない。
でも、そう感じてしまう。
なんか同質な空間に異物が混じった感がすごい。

障がい者とかアレルギーの人とか病人とか、みんなこういう体験をしてきたのだなぁ・・・(いままで気づかずすいません)


まぁ、そういう人は忙しい時間に店に行くな、ということかもしれないし、ランチはそういう対応をちゃんとしてくれる高級店に行くことにしよう、とか、そのうち割り切れるかもしれないんだけど。

まだアレルギー一年生みたいなもんなんで、ショックの方が先に立つのです。


あ、そういえば書いてて思いだしたけど、たまに「そんな魚全部ダメなんてアレルギーあるんだ・・・初耳だ・・・すげー・・・というか、本当か? 聞いたことないぞ。こいつ何か保健所とかからの覆面捜査員じゃないのか」みたいに、ものすごい警戒をされることがある。

そういう体験については、また書こうと思う。

なかなか興味深いよw

ということで、また。



古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。