レッテル貼られて、自分を守ろう
「レッテルを貼る」「レッテルを貼られる」って悪い意味で使われることが多いけど、都合がいいレッテルもある。
広告会社に勤めていた時代、ボクは二足のわらじを履いていた。
アクセス多い「食の個人サイト」をやっていたり、「ジバラン」という自腹覆面レストランガイドを主宰していたりしたおかげか、グルメの雑文の依頼をたくさんもらえ、レストラン紹介の新聞連載もし、食の本も数冊書いていた。
つまり、副業としてグルメ・ライターみたいなことをやっていたのである(グルメって言葉はあまり好きではないが)。
グルメの記事って「書く時間」だけが必要なわけではない。
レストランを食べ歩く時間も大量に必要だ。
極端なときは一日3軒くらい行くときもあるので、夜はたいてい潰れてしまう。
とはいえ、広告会社の日常ってちょっと危険なくらい忙しい。
当時の働き方は、今だったら「超ブラック」と言われてしまうレベルだった。ちょっとここでは書けない残業量だった。
つまり、夜の打合せもとても多いのである。
そういう環境で、いったいどうやって食べる時間を捻出していたか。
レッテルである。
「佐藤は夜いない人」「どっかに食べに行っちゃっていなくなる人」というレッテルを周りから貼られるように、日夜努力したのである。
19時以降の打合せが入ると、「あー、すいません、その夜はどうしてもレストランに行かないといけなくて」と申し訳なさそうな顔で言う。
当然、厳しい先輩とかは突っ込んでくる(まだパワハラとか働き方改革とかいう言葉がなかった頃のお話だ)。
「ふざけんな。仕事だ。そっちは遊びじゃねえか」
「すいません、連載があって・・・」
「連載だぁ? 何の連載だ」
「○○という雑誌で」
「打合せ終わってから書けよ」
「いや、書く前に食べに行かなくちゃいけなくて」
「別の日に行け」
「いや、予約がとれない店でして・・・その日しか無理なんです・・・すいません」
「・・・しょうがねーな。いつなら空いてるんだ」
って感じである。
実は別の日に予約が取れるかもしれなくても、そう言いきってしまうのが大事。
そうやって、意識して「佐藤は食事時の打合せには出ない」「佐藤は夜はどこかに消える」というのを仕事仲間的常識にしていくのである。
これは勇気と不断の努力がいる。
一回でも「食事時の打合せに出る」という先例を作ると「出られるじゃん!」ってなって一気に攻め込まれるので、レッテルがある程度でき上がるまでは、たとえヒマでも「すいません、その日も食事に行かないといけなくて」とお断りする。
ひどい人みたいだが(実際迷惑だと思うが)、こんな働き方改革や副業推奨の時代においても、そのくらいしないと自分の時間や趣味や副業は守れない環境の人は多いと思う。
そういう人には、向いているやり方だと思う。
・・・まぁ、とはいえ、「あなた」という人間の仕事価値がまだ薄い時点では、そんなに効果的ではないかもしれない。
だって「いてもいなくてもいい存在」であれば、「あ、そう」って感じで仕事外されて終わるだけだからね。
でも、それなりに役に立つ存在になっていれば、だんだんにみんなのほうで「あなた」に合わせてくれるようになる。
ボクの例で言えば、周りが佐藤にレッテルを貼った挙げ句、夜に打合せをしなくなるのである。
ボクに合わせて、夜以外に打合せをセッティングしてくれるようになる。
もしくは、食事時には打合せが終わるように急いでくれるのである。
つまり「協力」してくれるようになるのだ。
こうなったらしめたもの。
ボクは「食べる」という趣味&時間と、「それを書く」という副業をオフィシャルに堂々とできるようになったわけだ。
みんながレッテルを貼り、それを認め、合わせてくれるようになったわけである。
別に「雑誌コラム」とか「新聞連載」とか、たいそうな理由じゃなくても大丈夫。
たとえば、友人に「カレーを毎日食べ続けて3年以上」という変態がいる。
彼はそれを毎日SNSなどで発信している。
基本、趣味でやっている。
そんな、他人に実害を及ぼさない趣味みたいなものでも、ずっと続けていると周りが勝手にレッテルを貼ってくれる。「カレーを毎日食べるヤツ」って。
そうなると、たとえば昼時の打合せであれば、クライアントから「今日もカレー食べるんですよね? 協力しますよ。カレー屋で打合せしましょう」とか提案されたりするそうだ。
つまり、カレーを食べることがオフィシャル行事化したわけである。そうなると周りも協力しだす。ニコニコと協力してくれる。
そこまで行くと、いろいろ楽になる。
彼は「カレーを食べ続けたい」という自分の自由を、周りの協力のもとに享受できるわけだ。
あなたの趣味ややりたいことを周りに宣言し、実際に実行してみよう。
それだけでもレッテルは貼られる。
「この時期は必ずフェスに長期間行っちゃう人」
「サッカーシーズンになると残業しなくなる人」
「サウナを究めるために夜はサ活してる人」
「noteを毎日更新するためにいつも飲み会から早めに帰る人」
・・・なんでもいい。
そういうのを、周りがレッテルを貼ってくれるようになるまでとにかく続ける。アピールする。
そうすると、自分の時間を守れて、自由が手に入る。
まぁ最近は働き方改革で「自分の時間を守る」のは昔よりずいぶん楽になったけど、そういう中でも、なんか人に振り回されて自分の時間が確保できないタイプの人は、ぜひ一度試してみることをオススメします。
てなことで。
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。