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審判に黙って従うラグビー。審判をなんとか欺こうとするサッカー。


なんかこんな表題にするとサッカーファンに怒られそうだけど他意はない。

サッカーにおける審判への文句やアピールも、それはそれで戦略だということはわかってるつもりだし、フェアな人がいるのも知っている。

でも、ラグビーの試合を観れば観るほど、屈強かつアドレナリンの出まくった男たちが審判の笛には従順かつ速やかに従うことに、毎回感心するのである。

そして、「ラグビーってやっぱりいいなぁ」と思うのだ。

中学高校とラグビー部だったというひいき目ももちろんあるw
サッカーに比べるとずっと日陰の存在だったので、たまには褒めさせてくれ、という想いもある。

とはいえ、客観的に見て、やっぱりフェアで気持ちのいいスポーツだな、と、思う。

昨日から始まったワールドカップ日本大会でラグビーに初めて触れる人も、その辺に驚く人は多いのではないだろうか。

審判に激しく文句を言って試合が止まったりしない。
わざと倒れて審判にアピールしたりする人もいない。
きわどい判定のプレイでも、審判がいったん判断を下したら、みんなすぐさま従う。

「審判にアピールするのも戦略のうち」であるサッカーに慣れた観客の目に、その辺はとても新鮮に映る気がする。


なんでそんなにフェアなのか。

その理由としてよく上げられるのは「ラグビーは紳士のスポーツだから」とか「ラグビーは上流階級のスポーツだから」とかいうことだけど、もともとの原始的な初期ラグビーにおいては、殴る蹴るも含めあらゆる乱暴が許されていたので、その辺の理由もどうなのかなと思う。

ボクが思うに、一番の理由は「全員が一致してフェアプレイしないととても危険だから」ではないかと思う。

観れば誰でもわかるが、本当に危険。
リアルで観たら、ぶつかり合う音とか本当に凄い。

親だったら、我が子が出てたら気が気ではないだろう。

もともと激しくぶつかり合う陣取合戦である上に、手も足もすべて使ってよく、そして(アメリカンフットボールのような)防具も着けない。

だから、もともと反則に対してものすごく厳しいのである(それは自分たちの身を守るためでもある)。

そして、そういう反則が起こったらすぐ罰せられるように、審判には非常に大きな権限が与えられている

その権威を守るために、審判に対する文句やアピールは基本的にNGだ。
文句を言ったりアピールしたりすると、それはすぐ反則を取られ、自チームにとってとても不利なことが起こるのである。


あと、もうひとつ、とても面白いなと思うのは、その「非常に大きな権限を与えられている審判」が、だからこそなのだろう、選手たちとコミュニケーションを取ろうとすることだ。

ワールドカップ日本大会初戦「ジャパンvsロシア」戦でも、マイクを通して審判のすべての発言が聞こえていたが、よく審判が「Thank you very much」と選手に言っていたのに気がついた人がいると思う。

あれは、審判が、プレイ中に選手とコミュニケーションをとって、選手がそれを聞きいれてくれると「ありがとう」と返しているのだ。

この辺のことをわかりやすく書いてくれている記事があったので、共有したい。


リンク切れするとイヤなので抄録すると、

たとえば、ラグビーのレフリーには、他のスポーツにはあまり見られない特徴がある。レフリーにマイクが装着されており、音声が観客や視聴者に届けられるようになっているのだ。よく聞くと、「(ボールから)手、放して!」とか「まだ! 早い!」、時には「ありがとう!」とレフリーが言っているのが聞こえる。
審判が選手に「ありがとう」とはどういう意味なのか。国内外のトップレベルのゲームで数多く笛を吹いた経験のある平林泰三氏(Libalent所属プロコーチ)が解説する。
「ラグビーのレフリングでは、反則行為で相手チームが不利益を被ったかどうかが、プレーを続行させるかどうかのカギになります。そのため、展開中のプレーが相手の不利益にならないように、レフリーは事前に選手に言葉で促します。『このままいくと、笛を吹かないといけない』というときに、「やらないで!」と言い、それに応じてくれた選手に『ありがとう』というわけです」
アンパイア、ジャッジなど、他のスポーツで審判を意味する役割の人たちには、「選手のプレーを判定し、時には不正を見つけて罰を与える」のが仕事であるように見えるが、平林さんによると「ラグビーのレフリーには選手と共によいラグビーを創造する役割がある」というのだ。


いやー、面白いよね。
ある意味、ゲーム・メイクをしているのは審判なのだ。

そして、そういうコミュニケーションを通して、選手たちは「審判がこのゲームをどう仕切りたいか」という考えを理解し、それに協力してゲームを作っていく。

・・・いいなぁ、なんだか。

ラグビーには知れば知るほど好きになるいろいろな魅力があるんだけど、でも、この辺の審判との関係性や、強面な男たちがどこまでもフェアに審判に従う感じを、ボクはとっても好きだし、愛しているのである。

もしアナタがまだ「ラグビーってなんかピンとこない」「ルールが難しすぎてわからない」というのであれば、ガチムチな男たちがすんごく素直に審判の判断に従う可愛さ、みたいなところに注目して観てみるのも面白いと思う。

ものすごく熱く激しいプレイをしているのに、審判が笛を吹いた瞬間に「ま、仕方ないね」という顔して、みんなサラリと切り替える。

その辺の反応が、たぶんとっても可愛く見えるから。

ま、ちょっとマニアックな見方だけどw、是非その辺も、味わってみてください。


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さとなお(佐藤尚之)

コミュニケーション・ディレクターです。 さとなお名義で食やエッセイの本、佐藤尚之名義で広告関係の本を書いています。最新刊は『ファンベース』(ちくま新書)。 1995年から個人サイト「さとなお.com」を運営しています。

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コメント5件

昔はラグビーでも主審に見えない場所で相手選手を踏んづけたりしてた問題がありました(いまは知りませんが)。
ただサッカー選手はちょっと接触しただけで大げさに痛がったり(そしてその演技が無駄だと気づくとすくっと立ち上がって、何事もなかったように戻っていくw)、某選手みたいに自分から倒れる人までいるし、みていて非常に格好悪いですね。
何かを上げるために何かを下げる人って心底クズだと思うよ
その事を伝えると別にいいじゃないかと開き直る
そのせいで嫌われてることを自覚したほうがいい
これからもラグビー不人気のために他のスポーツ下げ頑張って下さい
面白い話を読ませて頂いてありがとうございます。
私はラグビーを体育の授業でしかプレイした事はないのですが、観戦はスポーツの中でも一番好きです。
こういう新しい楽しみ方を教えて頂いて感謝します。
ちょっと前に海外で警察から「サッカーのファンは言うこと聞くけど、ラグビーファンは聞いてくれない危ない」っていうお話について書いてほしいですね。ラグビー選手は紳士的な方多いですがラグビーファンって民度低いんですよね。
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