大須賀 覚

アメリカ在住のがん研究者。ひどい医療情報が広がる世の中で、どうしたら患者さんを救えるの…

大須賀 覚

アメリカ在住のがん研究者。ひどい医療情報が広がる世の中で、どうしたら患者さんを救えるのかと考えています。

マガジン

  • 俺たちは誤解の平原に立っていた

    • 20本

    言語があるから人々は分断され、分断された人々は言語によって心を通わせる。 (イメージイラスト:恵三朗先生)

最近の記事

一緒に夢を追いかける人を探しています

ずっと夢見ていたことがありました。それはアメリカで自分のラボを持つこと。 この壁はとても厚くて、その夢を叶えるにはかなりの年月がかかりました。 しかし、その夢をようやく叶えることができて、Osuka labをスタートすることになりました。 今後は次の夢に向けて歩み始めています。それは悪性脳腫瘍に対しての有効な新薬を作ること。この壁もとてつもなく厚いものですが、いつかその夢を叶えるために頑張っていきたいと思っています。 今、その夢を一緒に追いかけてくれる人を探しています。

    • 若手がん研究者に賞を!

      「受賞者は大須賀覚さんです。」 その言葉を聞いたときに、ドッという胸の高鳴りと、頬が熱くなるのを感じた。 立ち上がった私は、壇上に向かうものの、何となく足が地面についてないような感じがして、ふわふわしていた。 通路のそばに座っている同僚が「おめでとう」と声をかけてくれる。 しかし、こんな場面に慣れていないので、笑ったら良いのか、ガッツポーズでもするものなのか、いまいちわからない。結局、半笑いのような、なぜか微妙な顔をして壇上へと向かう。 偉い人から小さな賞状を受け取る

      • 「#コロささ」で応援しあいませんか?

        今年もあと数日を残すところとなりました。今年も新型コロナの影響で、多くの人にとって、大変な年であったこととお察しします。 日常生活に様々な不便があるのは相変わらずで、仕事にも影響がで続けている方もいたと思います。落ち着いたかなと思ったら、次の感染拡大やオミクロンのニュースが出て、心休まらずに不安な日々をおくっていた人が多かったと思います。 本当にお疲れ様でした。そんな大変な時だからこそ、皆さんでお互いを少しだけ支え合いませんか? 「#コロささ」応援キャンペーン海外日本人

        • 俺たちは誤解の平原でやさしく語る

          誤解の平原で、悩み苦しむ患者さんたちを見てきました。 「抗がん剤は毒だから使ってはいけない。食事を工夫すればがんは消せる」と言って、標準治療を受けずにどんどん病気が進行してしまった患者さん。 「糖はがんを成長させるから、甘いものは食べてはいけない」と信じて、大好きな甘いものを全部やめて、苦しい生活をおくっていた患者さん。 世の中に広がる情報にまどわされて、命を危険にさらしたり、苦しい思いをする患者さんがあとを絶ちません。 そんな誤解の平原で、苦しむ患者さんを見るたびに

        一緒に夢を追いかける人を探しています

        マガジン

        • 俺たちは誤解の平原に立っていた
          20本

        記事

          高校生にがん研究を

          私が高校生だった時のある日。私の人生に大きな影響を与える出来事が起きました。 その日、私は人生初のボランティア活動に行きました。国語の先生が誘ってくれて、言われるがままに行った活動でした。 活動の内容は高齢者の入所する介護施設に行って、みんなで紙芝居を披露するというものでした。私は同級生たちと一緒に、不安になりながら、施設に向かいました。 紙芝居がどんな内容だったかは、はっきりと覚えていません。それほど質の高いものではなかったことだけは記憶しています。そんなに多くの練習

          高校生にがん研究を

          ゼロリスクという誘惑

          さあ、始めていきますよ! この往復書簡マガジン「俺たちは誤解の平原に立っていた」は、世間に広がる不正確な医療情報に悩む方に、正確な医療情報を集めるヒントを届けようと始めました。今回が第17回目の記事になります。 さて、まず記事の冒頭で、一つお知らせがあります。 さびしいのですが。。。 この連載は合計20回を持って終了することとなりました。 ヤンデル先生と相談して、noteでの発信は20回で終了として、今後は他の形でさらなる発展を目指すこととしました。 具体的な今後

          ゼロリスクという誘惑

          分母を意識することの大切さ

          さあ、始めましょう! この往復書簡マガジン「俺たちは誤解の平原に立っていた」は、ヤンデル先生と私が、交互に記事をお届けして、正確な医療情報を手に入れるヒントを得てもらおうという、真面目、だけど時々ふざけながら進む企画です。 新型コロナでも色々な情報が溢れて、「どれを信じたら良いか?」と悩まれている方も多いかと思います。そのような方に読んでいただけると、正確な医療情報をうまく見つけるヒントが得られるのではと思います。 今回の記事で15本目となりました。ぜひ、以前の記事タイ

          分母を意識することの大切さ

          複数の情報源を使うことの大切さ

          さあ、始めていきましょう。 ヤンデル先生との往復書簡マガジンも、すでに13本目の記事になります。気がつけば随分ときたなと思います。 さて以前の私の記事では、嘘はやさしいという話をしました。 それに対してのヤンデル先生の返事はこちら 私の記事で出した荒削りの素材に、色を丁寧に塗ってくれています。そして、SNSで医療者が発信することの意味についても深めています。まだお読みで無い方は、ぜひ読んでみてください。 では、今回の話に入っていきたいと思います。 この記事では、医

          複数の情報源を使うことの大切さ

          若手がん研究者への支援を

          がんの新薬が生まれる過程は長く険しいものです。 ある日、一人のがん患者さんの元に新薬が届き、その小さなお薬を服用する。数ヶ月後、その薬によって腫瘍は小さくなる。 小さくなった検査画像を見て、患者さんと家族には笑顔があふれる。 そんなシーンの陰には、実は長く険しい戦いの歴史があります。 その薬が患者さんに届けられるずっとずっと前。おそらく10年以上くらい前に、その薬の物語は一人の若いがん研究者から始まっているかもしれません。 その研究者は朝から晩まで研究室で実験をして

          若手がん研究者への支援を

          不正確な情報はやさしい

          さあ、スタートしましょう!! 前回の私の記事では、医学における正確さは常に変化するという話をしました。 それに対するヤンデル先生の記事では なぜ、ガンキャノンが好きなのかという話。。。 ではなくて、医療情報が更新されるというのは、どのようにされるのか、積み上がってきた情報の最後の少しが変化するのであって、根底から変わるものではないという話でした。 私の大好きな記事でした。ちなみに、私はガンダムではアッガイが好きです。 さて、今回は正確さとはちょっと離れて、医療情報

          不正確な情報はやさしい

          変化こそが正確さの源

          さあ、始めましょう! 往復書簡マガジン「俺たちは誤解の平原に立っていた」の第9回目です。 前回の私の記事では、「正しい」の決め方についてお話ししました。医療でこの薬は効くのかなどを決めるには、質の違う積み木を重ねて、その高さで「正しい」かの判断をするというお話をしました。 それに対してのヤンデル先生の記事では 「こういう正しさもあるよね」という自己主張が許されない場面が医療にはあるという話で、とても熱い、素晴らしい記事でした。 多様な価値観を持ってもらって構わないの

          変化こそが正確さの源

          「正しい」の決め方

          さあ、始めましょう! 往復書簡マガジン「俺たちは誤解の平原に立っていた」の第7回目です。 第5回目の私の記事では、正確な医療情報の中心を見つけるコツについて解説させてもらいました。「政府機関・国際機関が発する情報」を軸に情報を探していくと、正確な医療情報を上手く集められるということを解説しました。 第6回目のヤンデル先生の記事では、なぜ「政府機関・国際機関が発する情報」は正確なのかについて、「多数の批判の目にさらされる」という点と、「常にアップデートされている」という点

          「正しい」の決め方

          私の最新研究をご紹介

          私がこの5年間ほど費やして進めてきた研究の成果を、米国の科学誌Journal of Clinical Investigationで発表させてもらいました。 今回はその内容について、一般の方にもわかるように、噛み砕いた形で、少しご紹介させてもらいます。 放射線治療はがん治療の根幹をなすものの一つで、多くのがん種に対して行われています。しかし、いくつかのがん種では放射線治療が効きにくく、せっかく治療を行っても、すぐに再発を起こしてしまうことがあって、そのメカニズムの解明が待た

          私の最新研究をご紹介

          正確な医療情報の中心はどこだ!!

          さあ、始めていきましょう! 往復書簡マガジン「俺たちは誤解の平原に立っていた」の第5回目です。 第3回目の私の記事では、医療情報の分布という話をして、正確な情報ほど重なりあうという話をしました。 前回のヤンデル先生の記事では、そこに2項対立の話を加えてくださって、不正確な情報を大事なものと勘違する理由を解説してもらいました。これは本当に大事なことです。 とても良い感じに、医療情報の見極め方が徐々に深められていると思います。 さて、今回の記事では、以前から使っている下

          正確な医療情報の中心はどこだ!!

          医療情報を俯瞰する

          さあ、始めましょう。 往復書簡マガジン「俺たちは誤解の平原に立っていた」の第3回目です。 連載1回目となる私の記事では、誤解の平原が広がっている中での私の決意を書かせてもらいました。 連載2本目となるヤンデル先生の記事では、彼の決意が語られていました。 まだ、お読みでない方はお読みいただければ嬉しいです。 さて、今回の連載3本目から、「誤解の平原」を進む人たちへの、医療情報についての解説を、本格的に進めていきます。 よーーし、やるぞ! と気合入ってます。 だけ

          医療情報を俯瞰する

          俺たちは誤解の平原に立っていた

          ふと気がつくと、俺たちはある平原に立っていた。 北風が吹くその平原で、目に入ってきたのは、一人の老人だった。 その老人はゆっくりと北に向かって歩いていた。老人の靴の裏には、大きな重力がかかっているかのように、その一歩は重々しく、ゆっくりだ。 そこに青いコートを着た男がやってきて、その老人に声をかけた。 「幸せの街へ行きたいなら、あの山道を通った方がいい。道は険しく危険だけど、あの道でしか到着できない。もうたくさんの人が行ったから、間違いのない道です。大変かもしれないが

          俺たちは誤解の平原に立っていた