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ここに出るのか

「近くまで送るよ」

私は今、同じプロジェクトメンバーである先輩の運転で、家まで送ってもらっている。
悪いですよ、と思いながらも内心はラッキー。実はちょっと気になる存在でもある。

「混んでるね。裏道行くよ」

先輩は渋滞を避けるため脇道へとハンドルを切った。車は細い道をくねくねと進み、私の方向感覚を狂わせている。

実は私、超のつく、方向音痴なのだ。東西南北というのがまったくわからない。だからいまこれ、どこ走ってるの?


やがて車は、住宅街を抜け、大通りに出た。

「あ」

フロントガラスの先には、いつものファミレス、いつものコンビニがあった。
ここは私の町だ。

「ここに出るのか!」

思わず叫んでしまってからあわてて言い直した。

「あ、いえ、ここに出るんですね」

「ひょっとして大発見?」

先輩の声が優しく響いた。

「小さな冒険、だったかな」


どうしよう。私の家まであと少し。どこまで案内しよう。

方向音痴もまんざら悪くない。

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「難しいことをやさしく やさしいことを深く 深いことをおもしろく  おもしろいことを真面目に 真面目なことを愉快に そして愉快なことはあくまでも愉快に」(井上ひさし)をモットーに。
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