マーケット選定

スタートアップのマーケット選定を間違えないための5ステップ

「マーケット選定はスタートアップにとって最も重要なものの一つだ」
これは、日本でスタートアップに関わる人にとってはよく認知されていることだと思います。

いくら優秀な人が取り組んでいても、資本力があっても、登るべき山が間違っていたら間違った山に早く登るだけ。

マーケット選定の重要性はよく語られる一方、どのようにマーケットを選定したのか?については、あまりまとまった記事を見ないなと感じています(知らないだけかもしれませんが)。

そこで、このnoteでは僕たちがオンラインでヨガレッスンを受けられる「SOELU」をはじめた際、どのようなプロセスで「オンラインフィットネス」というマーケットを選定したかについて書いていこうと思います。

原体験志向かマーケット志向か

起業には原体験が必要、という「原体験志向」と、マーケットがあるところで事業を起こす「マーケット志向」。
どちらがいいんだ!?という議論を時々見かけますが、個人的には両方必要だと考えています。

原体験というと大げさですが、自分が興味を持てないマーケットで勝負してやり続けられるのか?勝ち切れるのか?そう考えた時、マーケットに対する興味関心がないとやはり厳しいと思っています。
一方で、マーケットがどの程度の規模になるのかを正しく読むのは難しいことではありますが、マーケットがないところで勝負するのは急成長を目指すスタートアップとしてはまずいでしょう。

CEOのショウも自分もこのような考え方だったので、ピボットの決断をした際、僕たちは「興味関心のあるマーケット」の中で「一見ニッチだが、今後大きくなるチャンスのある領域」を探そうと考えました。
※ピボットの経緯については相棒のブログに詳しいです。

興味関心のあるマーケット

ピボットを決めた後、まずは興味関心のあるマーケットをいくつかリストアップし、それぞれの市場についてリサーチしました。
もともとスポーツやマラソンをしていてカラダを動かすのが好きだったこと、身近な人の病気をきっかけに健康について考える機会が増えていたこと…理由はいくつかありますが、真っ先に出てきたのは「運動・健康」領域でした。
他にもいくつか領域が出た中で、以下のようなプロセスで検討を行いました。


Step①大きく、非効率の存在する市場であることを確認する
マーケットとして大きい市場であることは前提として、非効率が存在することを重視しました。
例えば、制度疲労を起こしていて刷新が必要になっている。
例えば、既存プレイヤーがレガシーでユーザーがインターネットの恩恵をあまり受けていない。

そういった観点で、実際にフィットネススタジオに通ったり、大手のフィットネスジムやヨガスタジオのリサーチを重ねる中で、「フィットネススタジオ・ジム」という市場には非効率がまだまだあることを確かめました。
Feel CycleやB-monsterなどブティック型のスタジオは出てきていたものの、「予約して、足を運んで、受講する」という流れは変わらない。通えない人もたくさんいる。通ってみても、忙しいとすぐに休眠してしまうetc...
まだ効率向上の余地があると感じました。

Step②ユーザーの課題をヒアリング
市場として可能性があっても、具体的なユーザーの課題に紐づいていないと事業にはなりません。主に数字で既存市場の解像度を高めた後は、デプスインタビューで課題感について深堀りを行いました。

実際、ユーザーヒアリングをしていても
「通いたい地域で検索してもアフィサイトばかりで欲しい情報があまりない」
「自分の意思だとどうしても続かない…」
「そもそも忙しくて通えない(すぐに退会してしまった)」
etc...不満がボロボロと出てきました。

チャンスのある領域探し

Step③最も深さ×広さをとれる課題は何かを見極める
そこから、スタジオへの新しい形の送客メディアはないか、メディアECの可能性はどうか、ランニングアプリを切り口を変えて続くようにできないか、などなど様々なアイディアを検討しました。

複数の切り口で検討を進める中でも、「運動はしたいけど、通えない/続かない」という課題は深刻に思えました。
21世紀にもなって、通えないからといって健康になれない、理想の体型から遠ざかってしまうなんて、ありえない。

※当時のコンセプト資料より

日本のフィットネス人口は2016年時点で3.3%程度で、17%を超えているUSの1/5以下と言われています。
その一因は、理由は人によって違えど「通えない・通いづらい」ことにあるのではないか、そこを解決することでフィットネス人口を増やすことができるのではないか(広さも十分あるのでは)。

体型に自信がなかったり、出不精だったり、育児に家事に仕事に忙しかったり、妊娠中だったりと、通えない・通いづらい人たちが少しでも続けられるフィットネスを作ることができれば、ユーザーにも求められ、より人が健康になる意義ある事業を作れるのではないか。

そう考えたところから、SOELUははじまりました。

Step④ニッチからスケールするチャンスがあるかを確認する
ニッチからはじまりながらも、多くの人に求められる新しい切り口のフィットネスとして成立するかどうか。
これは検証しないとわからない部分も多いですが、A.ユーザー体験面 B.技術面で検証を行いました。

A.ユーザー体験面
アイディアを話すと疑念を向けられたり反対されることが多かった一方、実際に体験してもらうとユーザー満足度が人によって大きく分かれたことも意志決定を後押ししました。
具体的に言うと、検証期には「通うのをやめてしまった人」「続けられなかった人」から絶賛され、逆に「長い期間通い続けている人」「先生もやっている人」からは反対意見をもらうことが多かったです。
これにより、既存のリアルスタジオのリプレイスに留まらない、新しい市場を生み出しフィットネス人口を大きく広げるポテンシャルを感じることができました。

B.技術面
技術面では、解決するための技術が整い"つつある"ことを重視して考えました。
整いきった技術ではなく、まだ整いきっていない(既存の大手プレイヤーからは粗く見える)、でも可能性のある技術という意味で、WebRTCのような双方向リアルタイムコミュニケーションの技術に目をつけました。

-技術の進歩で、Skype一強時代には難しかった「グループレッスン」の提供が可能となったこと。
-自宅の手軽さとレッスンの臨場感で続きやすい仕組みをつくれること。
-オンラインで取得できるデータを活用するによってより続きやすい仕組みをつくれること。
-5G導入が決まり、動画利用へのハードルはより低くなっていくこと。
-さらに数年~スパンの未来では、PelotonBikeに代表されるIoTフィットネスデバイスや、VR/AR技術を応用したフィットネスが広がることで、通わずにリフレッシュできる体験を高い品質で実現できるようになっていくこと。

こういった背景もあり、今後人の「運動と時間空間」のあり方が拡張されていく中で、入口として「通わずに続くオンラインのライブレッスン」というアイディアで本格的な検証を行うことを決めました。

Step⑤優位性を作れるかを確認する
最後に、競合が参入してきた際の優位性をどう作っていくかを考えました。


※ここについては検証段階ではZERO to ONEで紹介されている「ブランド」「規模」「ネットワーク効果」「テクノロジー」のどれで優位性を作るかの方針だけ固めました(検証してから方針が大きく変わる可能性も高いため)。

おわりに

スタートアップのマーケット選定のやり方の一例として「興味関心のあるマーケット」で「チャンスのある領域」を探すという、SOELUで行ったプロセスをご紹介しました。

実際には他のアイディアも検討したり、行ったり来たりしながら検討を進めていきましたが、未来にあるべき、「今」取り組むべき領域だと納得感をもってやれることが重要だと、今から振り返っても思います。

最後に、SOELUでは一緒にオンラインフィットネスの市場を開拓していくメンバーを募集しています!
(UI/UXデザイナー、エンジニア、プランナー/ディレクターを募集中)

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