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スタートアップのPMが陥りがちな3つの罠

スタートアップのプロダクトマネージャー(PM)の仕事は多岐に渡ります。しかも、フェーズによってどんどん変わります。

創業初期は創業者が1人でPMの役割を担うスタートアップが多いように思いますが、チームが拡大するとPM業務に携わる人が増えてきます。

僕がPMをしているオンラインフィットネスサービス『SOELU』でも、チームの拡大に応じてプロジェクトごとにオーナーを立てるようになり、PMの役割について人に伝える必要がでてきました。

そこで、これまでスタートアップのPMとして4年ほど実務を行う中で考えた「PMの役割と、陥りがちな罠」について書いてみようと思います。PM経験者には当たり前のことが多いかと思いますが、悪しからず…。

そもそもPMって何よ?

PMにはさまざまな役割があります。
プロダクト自体の企画から事業仮説の検証、プロダクト開発運営における不確実性の管理、施策アイディア立案、獲得チャネルの開拓、企画書作成、ワイヤー作成、担当者アサイン、フィードバック、社内外関係者との調整etc etc...

フェーズによってやることを変えながら、その時々でイシュー度の高い業務を遂行します。

そんな、多岐に渡り変わっていくPMの業務の中で、最も重要なのは「何をやるか(何をやらないか)を決める」ことだと僕は考えています。

特に、事業リソースが限られていながら急成長を求められるスタートアップとしては、フォーカスして一点突破を狙うのが王道です。そのフォーカスを定める人=PMと定義して、忘れてはいけないと考えているポイントを3つに絞って書いていきます。

※0→1フェーズでのPMのやるべきことについてはこちらのように優れたスライドがあるので、マーケット選定や根本的な事業仮説の検証は終わりプロダクトをグロースさせていく1→10フェーズのPMの実務に絞ります。

陥りがちな罠

1. 現状から考え「より良い」を逃す
2. 目線の回遊ができず、施策が刺さらない
3. 想定しないから評価できない、変えて試し続けないから繰り返す

1.現状から考え「より良い」を逃す

企画は、目標達成のための手段です。決して思いつきの羅列ではありません。
理想状態や、そこから逆算された事業計画を最短で達成できるかを判断軸として評価されるべきものです。

「作る大変さ」がわかっている人ほど、破壊的な提案より現状の改善を前提条件として考える方が多いように思います。ですが、急成長を志向するスタートアップにおいて「何をやるか」に責任を持つPMは、限られたリソースにとらわれすぎずに非連続的な成長の可能性を探す必要があります。

事業計画を策定し、ゴールから逆算してギャップを埋めていくためには、逆に積み上げ型で施策を評価していきます。具体的には、以下のようなフローでギャップを埋める作業を進めています。

(1)Whereの特定
ビジネスモデル上、どこが優先度の高い課題か定量的なデータを根拠として明らかにする

(2)Whyの特定
課題がなぜ発生しているかユーザーインサイトなど定性的なデータに基づいて仮説を立てる

(3)Howの拡散
事例をインプットしまくり、課題を解決する具体策をなるべく多く出す

(4)Howの収束
施策の「インパクト×成功確度×コスト」仮説を立て、優先度を可視化する

(5)Goalとの照合
施策インパクトの仮説数値を積み上げた結果、期間内に目標を達成できるか確認する

(6)Planの見直し
よほど楽観的か目標が低くない限り、容易に設定した目標には届かないため
①よりインパクトの高い施策はないか考える
②時短する方法はないか考える
③リソースを調達して実現する
といった観点で計画の精度を上げる

こうして「何をやるか」を考えると、大体現状の延長線上以外の施策が出てきます。往々にして実装する側としてはしんどい施策であることが多いですが、PMは理想状態から考えて「やりたくない施策でも真顔で出す」必要があると考えています。

プロダクトを成功させるために現状考えうる最適解であることの説明責任を果たし、信頼関係・お互いのリスペクトがあれば、最終的には理解が得られるはずです。

※とはいえ、破壊的だったり博打要素の強い施策ばかり打っているとかえって事業計画達成角度が落ちてしまうので、確度の高い「改善施策」と博打度合いと期待インパクトの強い「チャレンジ施策」に振るリソース比率は要考慮です。ちなみにSOELUでは、改善7:チャレンジ3程度のリソース配分で施策を打っています。

2.目線の回遊ができず、施策が刺さらない

突然ですが、 Yahoo! → Google → Twitter → StripeでPMを務めてきたShreyas Doshiさんによれば、PMには重要な3つの「センス」が存在します。

Product sense: The ability to usually make correct product decisions, even in the presence of major ambiguity (Both macro-level and micro-level)
意志決定力:不確実性の中でも、事業仮説レベルから文言設定レベルまで、おおよそはプロダクトについて正しい意思決定をする能力(私訳)

Analytical sense: The ability to frame the right questions, evaluate multiple facets of a problem, derive solutions, and simulate possible outcomes(Based on available data and anecdotes)
分析力:データや事例から適切な問題設定をし、多様な側面(視点)から問題を評価し、解決策を引き出し、結果仮説をシミュレートする能力(私訳)

Execution sense: The ability to align people towards a particular objective and orchestrate complex projects(While exercising creativity, empathy, and persuasiveness, in addition to superb organization abilities)
実行力:卓越したソフトスキルに加えて創造力、共感性、説得力を向上させながら、チームを目標にフォーカスさせ、関連するプロジェクト群を指揮する能力(私訳)

このうち特に分析力に秀でた人にありがちなのが、ビジネス目線に引っ張られすぎることです。

理想状態の数字から逆算して考える思考は、出発点がビジネス目線での思考です。ですが、ビジネス目線優位で企画を進めてしまうと「表面上それっぽいけれど、プロダクトのユーザーには刺さらない施策」が実行されることが多いように思います。これを防ぐには、

(1)アイディア段階でユーザーさんにとって価値(理由)のある体験となるか?をチェックリストとして入れておき自問する
(2)社内外のペルソナ像に近しい人の意見を聞く
(3)ワイヤーやプロトタイプを作って社内外の反応を見る

といったフローを入れ「ユーザー目線」のフィルタがかかるようにすることで大きく外した施策となる可能性は減らすことができるでしょう。

逆に言えば、スタートアップにおいてはそれ以上の「うまくいく理由」を探すことにあまり意味はないと思っています。ビジネス・ユーザー両目線で可能性があると思えたなら、あとは優先順位をつけて試してみる。

その方が、余程検証にかかる期間やコストが大きくない限り改善スピードは早まると考えています。検証速度は成功確度!

3. 想定しないから評価できない、変えて試し続けないから繰り返す

PDCAサイクルで言う「Plan→Check & Action」の部分、OODAループで言う「Decide→ループ」の部分です。

事業計画の精度を上げていくうえで、振り返りは欠かせません。振り返りによって、事業計画が机上の空論でない、より精度の高いものにしていくことができます。

(1)仮説と実インパクトにどの程度差分があったか(目標数値達成率)
(2)成功確度の評価は正しかったのか
(3)コストは想定通りだったか

こういった側面から振り返りを行うと同時に、「変える」ことも重要です。小さく検証するのは大事だけど、小さく検証してイマイチだからといってすぐに諦めていたらうまく行くものもうまく行きません。

例えば、視界の悪い砂漠を歩いていると仮定して

「引き返すか迷っているその場所は、オアシスの一里手前かも知れない」

と考えるようなものかもしれません。
砂塵が吹き荒れていて先が見えなくても、向かう方向が正しければいつかはオアシスにたどり着きます。

同様に、施策のベースとなっている仮説が確度高く棄却されない限り、インパクトの大きい施策は簡単に引っ込めずに粘るのが吉だと思います。
また、うまく行かない原因は大きくわけて、以下の3つがあります。

(1)そもそも仮説が間違っていた
(2)解決方法が間違っていた
(3)エグゼキューションがイマイチだった

数値データやユーザーヒアリングから導き出した仮説であれば、すぐに棄却せずにまずは(2)(3)を疑ってみることをおススメします。
細部を変えるだけで、効果が大きく変わることも実際に起こります。(もちろん、元となる仮説が間違っていたら話は別ですが…)

なかなか成果が出ないと、同じ場所をぐるぐる回っているように感じることもあるかもしれません。ですが、高速で改善を回すことで着実に改善は進んでいきます。螺旋階段のように、ぐるぐる回っていても気が付いたら見える景色は変わっているかもしれません。

最後に

スタートアップのPMは、やることが多岐に渡ります。また、時期によって求められる役割がどんどん変わっていく刺激的なポジションだと思います。

SOELUでは、PMはもちろんUI/UXデザイナー、エンジニアなど、職種に関わらず、一緒にオンラインフィットネスという新しいマーケットをつくる仲間を絶賛募集しています!
興味ある方は、ぜひFacebook/Twitter宛に気軽にメッセージください!


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