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【合格体験者が解説】森林インストラクターとは。勉強方法、難易度等

皆さん、こんにちは。

イチです。

私は令和4年に実施された「森林インストラクター試験」に合格することができました。

どこかの講習を受けたわけでもなく、身近にもいなかったので、完全独学です。

ここではどんな試験か、難易度はどれくらいか、どんな勉強をすれば良いかということを解説していきます。

森林インストラクターを志す方々の力になれば嬉しいです!

【この記事はこんな方にオススメ】

  1. 森林インストラクターってそもそも何か分からない

  2. どんな試験が行われるのか、合格率がどれくらいか知りたい

  3. 一次試験と二次試験の対策をしたい!

  4. 合格したらどんなメリットがあるか気になる

この記事はこんな人が書いています】
 ・2021年4月、京都で高校教員→岡山で林業(植林)

 ・Webライターとして記事複数
 ・森林インストラクター資格保有
 ・アレルギー多め(スギ・ヒノキ・ハチ)

森林インストラクターとは

目的

一般社団法人「全国森林レクリエーション協会」の説明を引用すると以下のような感じ。

森林インストラクターは、森林を利用する一般の人に対して、森林や林業に関する適切な知識を伝えるとともに、森林の案内や森林内での野外活動の指導を行う者です。

https://www.shinrinreku.jp/examination/index.php

具体的には以下のようなイベントでの講師活動が、仕事内容だと思っておけば良いでしょう。

・植物観察会や採取会

・バードウォッチング

・森林ガイド(宿泊含む)

・林業に関するイベント

・教育委員会からの要請による出前授業

などなど。

こういった活動を行うことができるのがメリットでしょう。

ただ収入がそこまで大きいものではありません。

この資格をとっただけで生計が成り立つようなものではないですが、将来的に自然にかかわる活動の重みは増していくはずなので、重要度が上がっているといえるのではないでしょうか。

いずれにしても、合格したからといって何かの仕事の要請がすぐにくるわけではありません。

様々な活動や研修への参加に取り組むことを通して、積極的にスキルアップしていくことが必要だと思います。

また実際は、森林インストラクターにはもう一つ目的があります。

二次試験会場で説明されたのですが、それは「山村や林業の活性化に資する」というものです。

知識を伝えることはもちろん、それらが活性化できるような活動をしていくことが望まれます。

個人的には行政や教育機関等と連携しながら情報発信していくのも目的達成の方法の一つではないか、と考えています。

人数

現在、「日本森林インストラクター協会」に登録している方は1200名おられます。

本当はまだまだ試験に合格されている方もおられるのですが、実は少しややこしいのです。

日本森林インストラクター協会に入会できるのは、①試験に合格し、なおかつ②全国森林レクリエーション協会に登録している方

つまり、「試験に合格したものの登録していない」もしくは「日本森林インストラクター協会に入会していない」という方が一定数おられるわけですね。

一応私の所属している岡山県には約50名の方が岡山県の森林インストラクターとして登録されています(多分「試験合格者」で数えるとまだおられます)。

組織

基本的には以下の2つです。

全国森林レクリエーション協会

日本森林インストラクター協会

住所は同じですが、業務内容はやや異なっていることに注意が必要です。

上記に加えて、都道府県や自治体別に団体が存在します。

皆さんがお住まいの自治体にも会があると思われるので、調べてみてはどうでしょうか。

資格試験について

筆記の一次試験(9月実施)と、面接・実技試験(12月実施)の二次試験があります。

一次試験は全国各地で行われますが、二次試験は東京で行われることに注意が必要です。

一次試験の試験科目は以下の4つです。

①森林…森林の構造など

②林業…森林における施業など

③森林内の野外活動…ネイチャークラフトなど

④安全及び教育…応急処置法など

それぞれの試験で6割以上の得点を獲得すれば二次試験へ進めます。

試験の難易度

私が合格した2022年(令和4年度)は、受験者200名超に対して100名近くの合格者が出ました。

概算すると約4割という感じです。

ここ5年の合格率を見ると、だいたい3割前後でしょうか。

森林インストラクター試験(一次試験)の勉強方法

さて、それではいよいよ勉強方法について解説していきます。

問題の種類

まずは問題の分析からはじめましょう。

問題の形式は以下の通りです。

 1.記述問題(字数指定があるものとないもの)

 2.選択問題

 3.〇×問題

 4.虫食い(空欄記述)問題

主に以上のようなものになっています。

なお、一次試験に免除制度がありますが、それは以下のような条件付きです。

①一次試験を過去に受けていて、合格科目がある場合はそれを免除できる(5年間のみ)

②森林部門の技術士資格を持つものは、「林業」の試験科目が免除される

ということになります。

参考URL 資格試験の概要 (https://www.shinrinreku.jp/examination/)

問題の傾向

出題範囲は多岐に渡ります。

一筋縄ではいかない…と思われますが、実はそうではありません

著作権の問題があるため詳細には書けませんが、似た問題が、出題形式を変えて出題されることが少なくないのです。

あくまで例ですが、以下の「きのこ」に関する出題を見てください。

 2018年…きのこの生態や繁殖方法に関して記述(300字)

 2019年…きのこの生態に関して虫食い問題

 2020年…きのこの特徴や生態に関する〇×問題

 2021年…木材を栄養とするきのこの特徴について記述する(字数指定なし)

 2022年…森林内の物質循環におけるきのこの働きについて記述(300字)

というような感じです。

繰り返しますが、これはあくまで例です。この通りの出題がなされたわけではありません。

例を参照してもらえるとわかりますが、出題形式が変わっているだけで、実際は「森林内におけるきのこの生態を記述する」ことにフォーカスしています。

きのこに限らず、土壌や森林環境などの問題でも同様に、「出題形式は異なるものの本質的には同じ問をしている」ようなものがあります。

私が言いたいのはこの部分で、徹底的に過去問を演習することが試験の合格に繋がりやすいということです。

じゃあなぜこんなことをしているのか。

森林を語る上で重要な知識だからです。

繰り返し出題されているということは、重要なのです。

「試験は教員からのメッセージ」なんですよね。

森林インストラクター試験も同様で、試験の作成者が「これは覚えておいてほしい」という内容を出題するわけです。

つまり過去問は宝の山。

重要事項のかたまりといえます。

出題形式を変更してまで繰り返し出題している内容、それは絶対に覚えておかなければなりません。

過去問を反復することで、その重要ポイントを体でつかむことができます。

私は「問題の濃淡をつかむ」という言い方をしますが、過去問を繰り返し演習することで、濃いところをしっかりとつかめます。

最低限取り組みたい問題の数は「5年分」。

みっちりやれば5年分でかなりの学習量になります。

余裕がある人、対策の質を向上させたい人は「10年分」です。

私は10年分取り組みました。

正確に言えば9年分です

以下でその詳細を記述します。

勉強方法について時系列で

まず最新のものには手をつけませんでした。

私の場合は2022(令和4)年受験でしたので、2021(令和3)年は解いていません

9年分の問題で対策を十分行い、2021(令和3)年の問題で、過去問対策の精度を確認しました。

時間を計測しつつ行うリハーサルのようなものです。

以下で確認していきましょう。

①前年(2021年)冬、試験問題及びテキスト取り寄せ

②2022年春にかけて試験問題のPDF化とテキストの通読

※PDFにしたのは、仕事の移動時間や休憩時間を有効活用したかったからです。

 なお、PDFにしたのは選択問題や〇×問題だけです。繰り返しいつでも解けるようにしました。

 問題と解答のページが離れていたため、自分でワードファイルに打ち込みながらの作成です。

 打ち込む時間が無い人は、「グーグルレンズ」の「文字認識」機能を使うのが効果的です。

 作りながら問題の傾向把握などもざっくりできたので、有意義な時間でした。

PDFを作らないにしても、一度全体を読んでみることを強く強くオススメします。

PDFが気になる方は個人的に連絡をいただければと思います!

著作権のことがあって、見本でも堂々とさらすのは良くないように思うので…。

全体に一度目を通すだけで全然違います(マジで)

※テキストは1回、ざっくり全体を読みました。覚えるというよりは、どんな分野があるのかをつかむ感じです。

③記述対策は2022年の夏(7月ごろ)から

 繰り返し記述問題を解きました。手が疲れるためパソコンです。

 直接手を動かした方が覚えが良いような気もしますが、性格的に繰り返しやる方が好きなので、こういう形式で。

④試験2週間前に2021(令和3)年の問題に解答。

このタイミングで過去問演習の精度を確認。

ここで初めて試験時間を想定して問題を解きました

解答した感じ、試験時間としてはクリア。

記述が多いので間に合うかが心配でしたが、よっぽどのことが無い限りたぶん時間は足りるだろうという感覚に。

そして苦手な分野を再確認するとともに、4分野のうち3つほどの分野で自信があるようになりました。

⑤その後、もう一度テキストを読む

すべての問題を解き終わり、再びテキストに目を通します。

「あ、この部分は過去問になっていたな」と思いながら読めます。

しかもこれだけ演習を繰り返していると、「こんな部分からでるのか」という感覚も同時にあります

さらにいえば、「この辺から問題が出るんじゃないの?」「こういう問題傾向になるのかな?」という予想がつきはじめます。

ここまでくるともう安心です。

+αで

勉強方法には大別して2種類あります。

 A 1年ごとに【H27年】、【H28年】、【H29年】、【H30年】と問題全体を解いていくパターン。

 B 【H27森林】、【H28森林】、【H29森林】、【H30森林】とジャンルをしぼって解いていくパターン。

苦手な分野がある場合はBのやり方をオススメします。

私は全体的に深めていった方が好きなタイプなので、Aの方法で進めています。

過去問を解きまくって得たもの

全部で3つあります。

1つめは、問題の「濃淡」を獲得したことです。

特に「淡い部分」、つまりしっかり覚えていなくても良い範囲が分かったことは非常に大きいといえました。

2つめは、「用語や扱う知識の変化」に関する知識です。

かつては熱中症という言葉はなく、「日射病」や「熱痙攣」「熱失神」などという語が使用されていました。

現状はそういう言葉はほぼ使用しませんので、これらの知識はなんとなくでも大丈夫でしょう(おそらく)。

3つめは「出題傾向の変化」に関する感覚です。

これには確証が持てないのですが、時代の流れが大きく影響していると考えています。

植物に関する知識はネットで誰でも、大量に手に入れることができます。

言い換えれば、「この植物の名前は○○で、こういう特徴があって~」という話題は誰でもできるようになっています。

この時代に必要なのは、植物に関する知識や、植物同士を見分ける知識よりも、その植物が文化的にどういう働きを持っているか、人間の生活とどのようにかかわってきたかという点ではないかなと。

出題傾向がそういった方向に変わってきているような気がしています。

勉強方法まとめ

以上、私の勉強方法をまとめました。

簡潔にまとめると以下のような流れです。

・テキストを読む
・9年分の問題のうち、記述問題以外をPDF化
・試験の2か月前から記述問題をタイピングで繰り返し解く
・試験2週間前に前年の問題でリハーサル
・残りの時間で弱点克服とテキスト再読

これで一次試験対策は終了です。

森林インストラクター試験(二次試験)の勉強方法

二次試験は「面接」と「実技」です。

面接は「なぜ森林インストラクターになりたいと思ったのか」「どういう活動がしたいか」という基本的なことが聞かれます。

具体的に今後の活動をイメージしていれば問題ないかと思われます。

実技も含めて10~15分ほどなので、試験官の方もあまり深堀りできないのかもしれません。

実技に関する記述は全国森林レクリエーション協会のHPを引用しましょう。

実技試験では、あらかじめ提示される素材の一つを使って、森林インストラクターとしての模擬演技をしていただきます。

https://www.shinrinreku.jp/examination/

具体的には鳥の絵、実際の枝葉、ロープなどです。

それらをつかって模擬演技を行います。

ちなみにですが、どのようなものが面接会場に置かれているかは事前に提示されているので、準備して試験に臨むことが可能です。

5分程度で計画していくと良いでしょう。

私は「ヒノキの枝葉」を使用して模擬演技をしました。

さて、この面接と模擬演技ですが、それぞれ確実にアウトなパターンがあるようです。

面接の場合は、「試験官と口論になった場合」など、参加者との不和が想定される言動があったとき。

実技の場合は、「説明予定の枝葉を取り違えた場合(ヒノキの説明をしているのにスギの枝葉を持っている)」など、間違った説明をしたとき。

以上がアウトのパターンでしょう。

落ち着いて、自分の力を発揮すれば大丈夫です。

加えて、二次試験に関しては免除制度があります。

なお、当協会が実施する「森林インストラクター養成講習」並びに当協会が認定する国や地方公共団体等が実施する森林インストラクターに関する講習の修了者は、申請により実技試験が免除されます。

https://www.shinrinreku.jp/examination/

自分の住んでいる近隣で養成講習が実施されていれば検討しても良いと思われます。

森林イントラクター試験+αにかかった費用

費用は誰もが気になるところかなと思いましたので、一応まとめておきます。

出費は全部で9種類。

 1 森林インストラクター養成講習テキスト選集(改訂7版) 3660円(送料込み)

 2 過去問10年分 4900円(送料込み)

 3 森林インストラクター受験費用 18000円

 4 試験当日の交通費+宿泊費等(二次試験は東京)

試験で必要な費用は以上ですが、これだけで「森林インストラクター」として活動できるわけではありません。

 5 森林インストラクターの登録料 5000円(5年ごとに更新。つまり年間1000円)

この登録をしなければ森林インストラクターを名乗ることはできません。

また、森林インストラクターの組織の項目でも説明しましたが、それぞれの組織の入会金もあります。

必須ではないですが、入会しておいた方がつながりができるため活動しやすいと思います。

 6 日本森林インストラクター協会 入会金 5000円(初回のみ)

 7 日本森林インストラクター協会 年会費 5000円

 8 都道府県ごとのインストラクター会 年会費 ○○円

 9 自治体ごとのインストラクター会 年会費 ○○円

以上、それぞれまとめてみます。

試験に必要な経費(1~4) 25000円程度 + 交通費や宿泊費

活動に必要な経費(5~9) 初年10000円+α
(2年目以降5000円+α)

参考文献

私は森林インストラクター試験の中でも「土壌」に関する問題が苦手でした。

なかなか覚えられなくて…。

そんな悩みをツイッターに投稿したところ、「土壌」に関する参考文献を教えていただいたので、ここで紹介しておきます。

土 地球最後のナゾ~100億人を養う土壌を求めて~ (光文社新書)

新品価格
¥1,012から
(2023/8/28 23:11時点)

この本は専門用語が少なく、非常に読みやすかったです。

筆者のギャグセンスが光るこの一冊。

「土」には12種類しかないという基本的なことから学べます。

森林インストラクターの資格試験よりも深く土を知ることができました。

しかし林業に従事しているので、表土が流出した山を見た際の、残念な気持ちも倍増するようになりました…

とにかく、「自分が苦手な分野の本を探す」という方法でオッケーだと思います。

いろいろと参考文献を紹介しているHPなどもありますが、全般的に対策するよりは、ピンポイントで対策しましょう。

ちなみにですが、紹介してくださった方は「おとがわますみ」さんです。https://twitter.com/tsubura_ji

林業マンガを描いておられる方で、ストーリーだけでなくかわいいキャラクターも魅力です。

非常に親切な方で、土壌に関するHPも教えてくださいました。https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/soiltype/br_type/br_type.html

もちろんご本人に名前を載せる許可をいただいております笑

そのほか、X(旧ツイッター)は「鳥」について勉強する際にも役立ちました。

季節の鳥たちを写真に撮っている方々の、ダイナミックな写真はやっぱり違いますね。

ネットでの写真では物足りない方にも満足いただけるんじゃないかなと思っています。

まとめ

以上、森林インストラクター資格試験についてまとめました。

もし質問があればコメント欄からお教えいただけるとありがたいです。

可能な限りお答えしますので!

皆様に良い結果が訪れることをお祈りしています。

参考リンク先

日本森林インストラクター協会 http://www.shinrin-instructor.org/index.html

全国森林レクリエーション協会 https://www.shinrinreku.jp/

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