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息子に死にたいと言われたら

早いもので、小学校も終業式らしい。もう、給食も終わりだから、来週からはお弁当を用意してと言われて、春休みの存在に気づく。

最近わたしは原稿に追われているのだけれど、書いて書いて書いて、ボロ雑巾のようにクタクタになったら、息子が肩を揉んでくれたり、充電してくれるようになった。

充電は、ぎゅーっとして、ママは世界でいちばんの宝物だよと、言ってくれるプレイです。

彼が幼い頃から毎日伝え続けてきたことを、いまは彼がわたしに伝えてくれる。

がさつな親に似ず、やさしい子に育ったもんだ。あとは、とにかく、はやく校正ができるようになってほしい。(違


さて。

「小1の壁」とよくいうけれど、この一年間は、ちょっとしんどい一年だった。
保育園に比べて、学校が子どもを見てくれる時間が短くなったからではない。

なんというか、

とつぜん、彼が考えていることが、全然わからなくなって、困った時期が長かったからだ。


家で怒鳴り散らしたり、ものを投げたりすることが増えた。
発作が起きたかのように泣きわめき、死んでしまいたいと、ベランダの手すりに手をかけることもあった。
これ、通報されるかもな、と思うくらい大声で言い合いをしたあと、「ママ、ひどいこと言っちゃってごめんね」となるまでが、1時間から2時間コース。
ひとしきり発散したらけろっとして、別人のように明るくなる。


学校に行きたくないと言うこともあれば、家になんか帰りたくないということもあった。

よりによって、熱中症で何人もの人が亡くなった灼熱の日に家出をしたこともあった。
近所を探しまわってやっと見つけたときには、先に手が出た。

どうして家を出たの? と聞くと、死にたかったとこたえる。

でも、飛び降りたり、刺されたりするのは痛いし怖いから、熱中症にかかって死にたかったんだ、という。

ものすごい吐き気におそわれながら、その言葉を聞いていた。
次の日から2日間、熱中症で寝込んだのは私の方だった。


彼は彼なりに、新しく放り込まれた学校という環境に慣れようとしていたんだろうと思う。
面談で先生は、とても優しくて、おっとりした性格のいいお子さんですと言っていた。

わたしに向かって、おい、積み木くずしかよってな言葉を吐いたあとに、
ねえ、学校でもこんな感じなの? と聞くと
学校ではこんなこと言ってないから、言うわけねーだろ、と、捨て台詞のようにさけぶ。

彼自身が、自分をどう扱っていいのかわからなくて、持て余している感じだった。

こんなにはやく反抗期が来るとか、きいてないよー、と思いながら、わたしも彼とぶつかり合いながら仲直りしながら、手を振り払ったり振り払われたりしながら、


小学1年の壁を

超えた、たぶん。


長かったような短かったような、でも間違いなく、今までの人生でいちばん濃密だった一年が、月曜日でひとつの区切りをつける。


この一年は、誰と話すよりも、息子と話している時間が刺激的で楽しくて、
取材以外の外出はほとんどしなかった。

なにがむず痒かったのだろうか。
なにに抵抗していたのだろうか。

あっさり小学校に馴染んで、あっさりいい子ちゃんとして学校生活を送ったわたしとはまったく違う人格の、一人の少年と接しているのは、とても楽しかった。

彼は、彼を取り巻く世界との摩擦をちゃんと感じながら、それでもそのザラザラとした地表に、ちゃんと自分の足で立とうとしていた。
私が20歳を超えてから初めてできるようになったことを、彼は、まだ自分の想いを的確に表現できる言葉を持たないうちから、なんとかしようとしてもがいていた。

そんな一人の少年と、毎日言葉を交わすのは、とても楽しかった。

彼のボキャブラリーは、一日ごとに増えていった。
いまの彼はたぶん、あの日言った「死にたかった」という言葉を、べつの言葉で表現するだろう。


すったもんだしているうちに、季節はめぐり
彼は7歳になり、わたしは43歳になった。

この歳になってもまだ、ひとは、ひとに影響を受けて、新しい言葉を手に入れることができるのだな、と思った一年でもあった。

月曜日は、とうとう終業式だね。
クラスのみんなともお別れだね。

彼が寝る前に、そんな話をした。

ママはまだ寝ないの?
と彼は聞く。
うん、今日はおしごとが徹夜になると思うんだ、とこたえる。

じゃあ、といって、彼はわたしの手を握って充電をしてくれる。
ママは、ぼくの、たからものだよ、と、彼は言う。
うん、ママも、きみをたからものだと思う、と伝える。
小さな指先から、エネルギーをもらう。


1分も経たないうちに寝息が聞こえる。少年の寝つきはすこぶるよい。
彼の指をほどいてリビングに戻る。
テーブルの上には学童の連絡ノートが置いてある。少し感傷的な気持ちになってページをめくる。


ん?

え?


ちょっと待て。


終業式、一週間後じゃん!
まだ春休みじゃないじゃん!


・・・・・・・・・


小1の壁はまだ終わってませんでした。。。




こちらが提案したり誘導したことにはほとんど興味を示さない息子氏ですが、自分でいきたいと決め、往復2時間もかけて通っている塾が、明日、というか、今夜、情熱大陸で紹介されるみたいです。

たしかに、この世界は
驚きと感動に値する

わたしは、そのことを、いつも息子と、息子を取り巻く世界から教えてもらっている。


んでは、また。
さとゆみでした。


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