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田中幸宏さんへの37問37答【ライター100人押しかけ問答 #1】

新シリーズです。

インタビューの方法は? ライティングの工夫は? それぞれに違うライターさんの書き方について伺う1問1答シリーズ。

第一回目なのに、快くお引き受けくださったのは、大先輩の田中幸宏さん(@tanayuki)です。


田中幸宏さん @tanayuki

出版社勤務を経て、16年前に独立。フリーの書籍編集&ライター。


Q1:ライターになって何年めですか?

A1:独立してから16年目。ただ、自分のことは、ライターというよりは、「編集>ライター」だと思っている。


Q2:どんな分野で書かれていますか?

A2:おもにビジネス書畑。


Q3:年間何冊くらい担当されるのですか?

A3:10〜12冊くらい。


Q4:執筆場所は?

A4:ほとんど自宅。テープ起こしするときはカフェなどでやることもある。


Q5:テープ起こしは自分でされるんですか?

A5:短いものや、急ぎの場合はときどき自分で。だいたいは出版社の人におまかせしている。


Q6:家での執筆環境は?

A6:MacBook Proの13インチに21インチのモニターをつないで書いている。


Q7:椅子はどうしています?

A7:以前は事務用の椅子みたいなものを使っていたけど、腰をいためたので、giroflexのチェアを買った。そんな高いものではないけれど、それ以来、腰痛は緩和されたかな。


Q8:原稿執筆に使っているソフトは?

A8:ふだんはevernote。ときどきもっさりするので、そういうときはCotEditorというテキストエディタ。Wordは最後の整形で使います。CotEditorは、ウェブで収集したデータ(固有名詞など)をとりあえずコピペするときに、書式情報やハイパーリンクを自動的にカットしてプレーンテキストにしてくれるので便利。あれ、残っていると、はずすの面倒でしょ?


Q9:執筆中は音楽かけます?

A9:ボーカルのないジャズかクラシックをかけていることが多い。悩んでいるときは、無音にして、家の中を歩き回っている。


Q10:外出先にはパソコンは持ち歩かない?

A10:iPad miniのみ。以前、煙草を吸っていたときは、煙草が吸いたくてカフェで仕事をすることが多かったけど(その時代はiPad+キーボード)、今は外でキーボードを使うことはほとんどない。


Q11:外出先でのネット環境は?

A11:iPhoneのテザリング。


Q12:インタビュー前の事前の下調べはどこまでしますか?

A12:社長インタビューの場合は、基本的に広報の方が資料を用意してくれるから、それを読む。著書がある方は著作にざっと目を通し、公式サイトやブログ、SNS、最近の記事などはできるだけ調べておく。


Q13:著作が多い場合は?

A13:全部精読する時間はないので、基本は斜め読み。ただ、その人が世に出るきっかけとなった本と、評判の高い本、あと、版元やスタッフが代わった後の第一弾などは少していねいに読む。


Q14:インタビュー前の質問はご自身で考えますか? 編集さんにおまかせしますか?

A14:基本的に提出しない。版元さんにしても、自分にしても、事前に用意できる質問なんてたかが知れているので、あまり当てにしない。インタビュー前につくられた構成案どおりに書籍ができることもほとんどない。それを超えてナンボだと思ってます。


Q15:先方からインタビュー項目を提出してほしいと言われた場合は?

A15:ざっくり出す(笑)


Q16:ファーストクエスチョンは、最初から決めていますか?

A16:決めていない


Q17:では、インタビュー相手にかける第一声は?

A17:「一番、話しやすい方法で話してください」と言うことが多い。先方が用意した話をとりあえず聞いて、後から質問するほうがいいのか、それともこちらから誘導して話を引き出したほうがいいのか。


Q18:インタビューで意識していることは?

A18:「その話はもう(事前の下調べで)こちらは知っていますよ」ということを早めに知らせる。安心感を持ってもらう意味もあるが、有名でインタビュー慣れしている人ほど「決めのエピソード」があるし、この質問にはこう答えればいいという「型」がある。それを崩せてからが本当のインタビューだと思っている。要は、聞いたことがない話を聞きたいんです。


Q19:取材時の服装は?

A19:企業の社長などのインタビューはジャケットにネクタイで行くこともあるけれど、基本は普段着。スーツは1着も持ってない。


Q20:取材中はメモを取りますか?

A20:取っているけれど、あとで一切読み返さない。というか、読める字で書いていない。メモをとっているのは、相手に「ちゃんとメモをとっている」という安心感を持ってもらうためだけで、実際にはテープ起こししか見ない。


Q21:メモをとるときに使っているメモ帳は?

A21:ロディアのメモパッド。でも、ぶっちゃけ、なんでもいい。ロディアを使っているのは、レイアウトや図を思いついたときに、破って版元さんに渡せるから。


Q22:録音はしますか?

A22:基本的に版元さんがしてくれるので、自分用にはバックアップとして。iPad miniで「頭出しレコ」というアプリを使っている。これは、あとから音声データを「ひらがな」で頭出し検索できるアプリで、そこそこ便利。


Q23:録音した音声を聞くことは?

A23:ときどきある。テープ起こしで聞き取れていなかった部分の確認や、その人が言った言葉のニュアンスが消えている場合。できるだけ本人の言葉だけで書きたい。


Q24:例え話などは作らない?

A24:考え方などの説明は、著者自身が言っていない言葉でも「こういうことが言いたかった」とわかりやすく説明できればいいと思うけど、エピソードは基本的につくらない。どうしても取材で出てこなかったエピソードが必要な場合は、著者が別の書籍で言っていることや、講演録などから探す。


Q25:書籍の関連資料はどのように管理していますか?

A25:紙資料はもらったときのクリアファイルのまま保存。


Q26:インタビューのテープ起こしなどは?

A26:evernoteに入れる。


Q27:著者の過去の書籍などは?

A27:あれば電子書籍で読む。デバイスはiPad mini。あとで見返したい部分にはハイライトを引いておく。


Q28:インタビュー取材が全部終わり、執筆をスタートするとき、まず何から手をつけますか?

A28:まず、テープ起こしを全部読む。テープ起こしは、取材のたびに前回分をざっと読んでから臨んでいるので、その時点で数回読んでいるけど、あらためてすべてのテープ起こしを読みながら構成を考える。


Q29:構成を考えたあとは?

A29:同じカテゴリーに入る話ごとに切り分けて、evernoteに貼り付けていく。本ごとに「ノートブック」を作成し、カテゴリーごとに「ノート」があるイメージ。全体の構成が頭の中ではっきりできているときは1章から順番に書くけれど、構成がつかみきれていないときは、書きやすいパーツから書いていく。ある程度パーツがそろったら、全体の流れの中に位置づける。


Q30:編集さんに納品するときは?

A30:そのままデザイナーさんに渡しても大丈夫なレベルまでワードで整形して送る。時間がギリギリで五月雨式に入れることも多い。


Q31:一度編集さんに送ったあとに、最後まで到達したら先に納品したものを変更したくならない?

A31:ほとんどならない。そのまま入稿してもらうケースがほとんど。


Q32:ゲラではどれくらい赤字を入れますか?

A32:自分ではほとんど入れない。


Q33:それは、入稿前に相当推敲しているから?

A33:というより、字が汚いんです(笑)。赤字を入れても、オペレーターさんが誤入力することが何度もあって、申し訳なさすぎて。だから、できるだけゲラで赤字を入れなくてすむように原稿を書こうと思っている。


Q34:使うボールペンなどにこだわりはありますか?

A34:フリクションは大っ嫌い。筆圧がいるから疲れる。ジェットストリームの3色ボールペンか、2色+シャープペンシルを愛用してる。


Q35:普段どれくらいの書籍を読みますか?

A35:資料でパラパラ目を通す本は除いて、月に10冊くらい。そのうち95%は電子書籍。


Q36:小説は読みますか?

A36:あまり読まない。翻訳書を読むことが多い。


Q37:ライターにとって一番大事なことは?

A37:ライターは文章力より、体力とストレス耐性。編集にしろ、ライターにしろ、〆切までの「最後の砦」になるケースが多いので、ストレス耐性がないと厳しいと思う。


たなゆきさん、ありがとうございました! 


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