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書籍ライターから見た『ファクトフルネス』の特徴と面白さ。コラムには書か(け)なかったこと

今日、朝日新聞のtelling,さんの連載コラムで、『ファクトフルネス』について書きました。

telling,さんは、ミレニアル世代女子向けのコラムなので、自身の体験に寄せたものにしたのですが、ライターとしてこの本を読むと、また全然違った感想を持ちます。
これは、このコラムでは書け(か)なかった内容なので、こちらで書いてみます。

私がこの本を読んで一番勉強になったのは、本の構成です。

中でも

①エピソードファースト(≠結論ファースト)
②批判の事前回避

の2点が、徹底されていたことが興味深かったです。


まず
①エピソードファーストについて。

この書籍、どの章もまずは、著者や著者の周りの身近なエピソードから話がスタートするんですよね。剣を呑む話。ドブに落ちて死にかける話。貧困地で友人の医者に罵倒された話など。

一見、「世界の話」とは関係なさそうな身近な物語が、新しい「ファクト」への導線になっているという構成です。
これは、各論→総論の書き方で、(ひと昔前の)ビジネス書の鉄板と言われる「結論ファースト」とは逆の書き方です。

私たちにとって身近な物語(ストーリー)はすらすら読みやすい。

え? ドブに落ちて死にそうになった? で、それで? それで? って前のめりになる。そうやって、ページをめくる推進力がついてから、データが出てくる。
この構成、データや数字に拒否反応を示す人にも、すっと理解しやすい作りになっているなと感じるのです。

最近、男女ともに、理系文系問わず(理系文系というくくりは雑ですが)、売れている本を分析すると、この「エピソードファースト」が多いなと感じます。

かくいう私も、telling,のコラムは、「エピソードファースト」で書くフォーマットで、どこまで書けるかに挑戦しています。

と、ここまでさも自分で考えたかのように書きましたが、私がこの「エピソードファースト」を強く意識するようになったのは、『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』を作った編集者の乙丸さんにインタビューさせてもらってからです。

今回『ファクトフルネス』を読んで、改めて、エピソードファーストの構成による、読書のしやすさを実感しました。


次に
②批判の事前回避について

これは、私も書籍を書いている時にいつも意識しなきゃと思いつつ難しくて壁に当たりがちなことなのですが、

『ファクトフルネス』では、読者が心の中で感じる、もやっとした疑問や、批判的な感情に対して、すべて先手先手が打たれているところです。

「・・・・と感じる人もいるかもしれない。それは当然だ。その気持ちは否定しない。しかし・・・という見方をすることも大事だよね?」
という書かれ方をされている箇所が、何十箇所もあったと思う。

これは、自分が「・・・と感じる人」だった場合、効果絶大。あ、そうかこの著者さんは、それはもちろんわかった上で、さらに新しい世界を提示してくれているんだ。そう思えるからです。

この本は圧倒的な事実を元にして書かれた本ですが、「データが正しいのだから、正しい」という言い方をするのではなく、「正しいデータと言われても感情的には納得できないよね。うん、わかるよ。だけど・・・」というコミュニケーションが随所で行われていることによって、時々感じる自分の感情のガス抜きがされ、最後まで気持ちよく読めるのだと思うんですよね。


この2点が、書籍ライターとして、本当に勉強になった点でした。


・・・・・・・・・・ここからネタバレ・・・・・・・・

そして、最後に。

ここからはネタバレ。まだ読んでいない人の驚きを奪いたくないので、これから読む予定の方は、読み終わってからどうぞ。


余命いくばくもないと知った著者さんが、最後に選んだ手段が「書籍の発行」であったことが、本当にもうなんというか、この仕事をしている私にとっては、福音のような、そんな感じで泣けて泣けてたまりませんでした。

国境を超え、時代を超え、より遠くまでボールを放る手段として「書籍」が選ばれたこと。このこと自体が、私にとって、とても嬉しいことです。

ハンス・ロリングさんに「届いてます。ほんと、ここまで届いてます!!!」って大声で伝えたいくらいです。


頑張ろう。
できるだけ遠くまでボールを投げられるように。


んでは、また。


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[美容ライターとしての記事はこちらにお引越ししました]



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