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「小1夏休みの壁」は『はじめて国語辞典』(学研)で乗り越えられるかと思ったけどダメだった

「小1の壁」ってよく言われるじゃないですか。
あれって、保育園に比べて子どもを預けられる時間が短くなる。いきおい仕事ができる時間が減る。そのことに対する大変さだと思っていたんですが、そんなもんじゃなかった。

ここまで、一度も育児を大変だと思ったことのなかった私が、「小1の壁」には、結構やられました。主に、メンタル面が。

何、あれ、何なの。毎日配られるプリントの数。罰ゲームなの。
ベルマークの件はどのプリントに書いてあったけと思って探しても、control+Fで検索できない不便さ、21世紀もかれこれ20年になろうとしてるこの世の中でどうかしてる。

それに何なのあの小学1年生の男児って。プリントをくしゃくしゃにしないで持って帰ってくるのは無理ゲーなの? 消しゴムをバラバラにしないで使うのは無理なの? あと、鉛筆、芯が見えるところまで噛むのよせ。

そして何より、私! フリーランス生活に慣れすぎて、規則正しい集団生活や、日々のルーティンワークに、脳みそがものすごく拒絶反応を示してる。学校に通っているのは息子だけれど、毎日同じ時間に息子を送り出すのだけでも、きつかった。毎日同じことやるの、本当に向いてない。

そんなこんなの3ヶ月がやっと過ぎ、だいぶ「小1の壁」に慣れてきた矢先に、これ、到来ですわ。「小1“夏休み”の壁」。

なんでこんなに夏休み長いの。そして息子氏はなぜ、こんなに学童に行きたがらないの。そして何より!

君はなぜ毎朝、5時半に起きるの!!!! 
学童は8時15分からだから、まだ寝てていいでしょ。ていうか、寝ててくれ。

いや、起きるだけならまだいい。その時間から、『ヘビVSワニ』とか『わけあって絶滅しました』とか『日本の歴史 織田信長』とか読むのもまだいい。

しかし、わからない言葉があるたびに、母を叩き起こそうとするのはやめてくれ。

「ねえ、ママ、宿主ってなに?」とか
「ねえ、ママ、条約ってなに?」とか、
「ねえ、ママ、ベンガル湾ってどこ?」とか、

悪いけど、たとえばっちり目覚めていたとしても答えられないようなことばっかだから、朝の5時半に聞かないで、お願い。せめてあと1時間寝かせてくれ。昨日入稿で死んでるんだよーーーー。
そう叫んでも、とまらない。
「ねえ、ママ、武器商人ってなに?」とか
「ねえ、ママ、難民の受け入れってなに?」
って、もっと難しくなってんじゃないかっ!!

…………

無理。絶対無理。あと1時間寝かせて。死ぬ。死んじゃう。と思った。
でもね。
ふと、寝ぼけた頭で思ったのよ。

私は生活全般にあまり向いてない体質だと思ってる。だから、様々な家事や育児は手を抜いたとしても、そこまで罪悪感はない。息子のリクエストにこたえられなくても、ごめんね以外のアレしかない。眠いし。
だが、しかし。
出版業に関わる人間であることには、誇りと矜持をもって働いている。ここまで熱心に本を読んでくれている読者に対して、この態度はよくないって。どんなに眠くても。彼らは未来の私たちのクライアントなのである。そうなのである。
なので、心を改め、立ち上がったよ。
そして、状況打開すべく、買ったよ。

『はじめて国語辞典』(学研)!!!

私は息子に、国語辞典の使い方を丁寧に教えた。彼もとても興味を持っているようだ。
すごくすごくすごく期待できそうだ。
これさえあれば、朝の5時半に叩き起こされることもなく、彼も、本を読みながらフラストレーションが溜まることもなかろう。ありがとう、金田一先生!
明日の朝は、6時半まで寝れる!!!
期待しかない!!!



いやー甘かったね。



次の日の朝、私は、「ねえ、ママ、虜ってなに? 虜にしてみせるってなに?」という声と、文字通り、バシバシ私を叩く息子に、叩き起こされた。5時だった。いつもより、30分もはえーよ!

でも、寝ぼけた頭で私は、思い出した。
そうだ、今日の私は丸腰じゃない。国語辞典があるじゃないか。
今こそ今こそ『はじめて国語辞典』(学研)の出番だ! 
金田一先生を召喚するのだ!

そこで私は、彼に伝えた。
「昨日買った、国語辞典で調べてみたら?(ドヤっ)」
と。

「ああ、そうだよね!!うん、調べてみる」と、息子氏。
パラパラと辞書をめくる音が聞こえたかと思うと、しばらく静かになった。

せ、静寂!
 これで今日からは眠れる!

夢は3分後に打ち砕かれたね。
「ねえねえ、ママ、載ってないよ。どうやって調べるの?」
と、またしても、ポカスカ叩かれる。

いや、載ってない訳ないだろうよ。ちゃんと見た? と、り、こ、の順番だよ。昨日教えたよね。と、このあたりは、布団をかぶったまま答える。

それでも彼は載ってないと言う。ママが代わりに調べて、ママがやってよう、と私をゆすり続けるので、ほんとうにもう、最後の気力を振り絞って1ミリくらい目をうっすらあけて、辞書を引いた。コンタクトレンズ外さないまま寝ちゃってたね。目がかぴかぴだった。

虜…………

トリコ……………………

とりこ………………………………

…………

……………………

………………………………

載ってなかった……………………


『はじめて国語辞典』(学研)に、とりこの文字はなかった!!!! 


なんで!なんでなの? 学研さん! あってもいいじゃん! 「虜」! あってほしかったよ。
金田一先生、、、「虜」、載せてほしかったです!!! 

(↑息子氏をして「虜」を調べさせた原典はこちら。青山剛昌先生の『まじっく快斗』第2巻)


初めての辞書引き体験が不発に終わった息子は、一瞬で辞書への興味を失い、引き続き、わからないことがあるたびに私を叩き起こすようになった。

「ねえねえ、ママ、関数ってなに?」
(それがわかんなかったから、国文科に進んだんだよ!)

かくして、「小一の壁」は、まだまだ続く。

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