咲月

高卒Web編集者、24歳。東京や仕事や私のあれこれを書きます。

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マガジン

  • 私信東京@文学フリマ東京37まで毎週更新🎶

    文学フリマ東京(11月11日)まで、毎週日曜日にnoteを更新することにしました。これまでインスタ(@yorube)で投稿してきたエッセイを、1週間分ずつまとめてアップしていきます。 ※インスタは今もほぼ毎日更新しているので、よかったらぜひ覗いてみてください🎶 https://www.instagram.com/_yorube/

最近の記事

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東京百景、はじまっている

又吉直樹さんの書く文章が好きだ。彼の“東京百景”というエッセイ集に、こんな一節がある。 私もまさにそんな感覚で、梅雨をすっ飛ばして訪れたせっかちな今夏に、背を押されるようにして実家を出た。 7月からひとり暮らしをしている。 起きてすぐ音楽をかける、顔を洗う。トーストと卵を焼きながら、コーヒーを淹れる。アイスコーヒーは、水出しより冷やしたものより、ギチギチの氷で急冷するのがいちばん美味しいって、最近知った。 牛乳買って帰らなきゃ、今夜こそ洗濯機を回そう。 出勤前から退勤

    • 親友の彼に会わせてもらった

      今年に入って、恋人を紹介してもらう機会があまりに多い。先週末の彼で4人目だった。20代半ばって感じだね。 みんな「1回見て」ってノリで持ちかけておいて、本当に会わせてくれるのが面白い。 ちなみに私は、友人とその恋人が一緒にいるところを見るのが、異常に好きだ。 「いつから付き合っているんだっけ」に始まり「どっちが先に好きになったの」「どのくらいの頻度で会ってるの」と、既知の話題から攻めていく。 そんなことは彼女から散々聞いて耳タコなんだけど、本当に聞きたいわけではないので良

      • スキップに一段飛ばしの人生

        どうしても許せないことがあった。 しかし父の死を起点として、悲劇を喜劇に変える技術ばかり発達させてきてしまった私は、それを飲みの場で、笑い話として披露したらしい。エピソードトークのもととなった出来事は本当に笑えないことで、だからこそ余計にヘラヘラ話したのだろうと想像がつく。 推量ばかりなのは覚えていないからだ。さほど弱くないはずなのに、該当の話をしていた時の記憶がすっぽり抜けている。恐ろしいことよ。 翌日上司からみっちり搾られたが、有難い説教だったのでここに留めておく。

        • ライフイズワーク is

          勤め先は「長期休暇」が本当に長い。お盆も正月も10日前後ある。 子どもの頃はその3倍以上あっても足りなかったのに、今は10日ですら持て余してしまって、立派な社会人だなと思った。 今年は1月9日が仕事始めだが、元日から在宅でなにかしらタスクをこなしている。 年末に納まらなかったわけではない。ただ東京に帰ってきてしまえば考えるのは仕事のことばかりだし、手を動かしていないと自己肯定感が下がる。働いていた方がよっぽど幸福度が高いのだ。 昨日は上司と食事をして、そこで出た話を今朝資

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        記事

          2023、ラブリーたちのおかげ

          毎年、母か祖母から聞く気がするセリフ「もう恵方巻のチラシ出てたわよ」。 思えば、指先が冷たいと初めて思う頃にはすでに肉まんが出ていて、マフラーを巻く前からおでんが並び、クリスマスケーキやおせちの広告も随分早くからローンチされている。 季節の先頭を走っているのは間違いなく、コンビニだろう。 生活に最も密着したコンビニが1番のせっかちで、イルミネーションやデパートが追い越そうと必死になるから、世間はいつも忙しないのだ。 カレンダーだけがいつも地に足をつけて、私と並走してくれて

          2023、ラブリーたちのおかげ

          12月30日のクリスマス

          12月28日に仕事を納め、昨日地元へ帰ってきた。 見慣れた、でも看板が変わっていたり新しいお店ができていたりする、風景に染み入る。あかい陽に照らされ撓んだ空、真ん中がもうすぐ海についてしまいそう。 各駅停車でも2時間で帰ってこられるくらいの距離だけど、やっぱり“地元”というのは特別だ。生まれてからずっと同じ町で育ててくれた両親に、感謝している。 うっかり東京の鍵をさしてしまい、ああ間違えたとさし直した。 「ただいまー」 「おかえり」 言うことも言われることもすっかり減っ

          12月30日のクリスマス

          東京と、東京を好きな母と

          乱立するビルのあいだからのぞく狭い空、冬の朝や、一駅歩くという行為。ふとした瞬間に「私、東京にいるんだ」と思う。越してきて2回目の冬なのに。 幼い頃、母が弟妹を実家に預けて私とふたりきりで出かけてくれる日が、年に一度だけあった。その日は決まって東京に行った。 「ここは浅草って言うの、母さん若い頃ここで神輿かついでたのよ」 「わぁずいぶん変わったわね、あのお店がなくなってる」 母に手を引かれ、パタパタ歩く。 その街その街の思い出話を聞いたけれど、細かいことは覚えられず、た

          東京と、東京を好きな母と

          こんな時代でも、音楽の世界ではただしく季節がめぐっている

          ひさしぶりにイヤフォンを買った、有線のやつ。 1つ前はもらいもののワイヤレスを使っていたのだけど、耳の穴が小さいのかたびたびこぼれるので、いつもヒヤヒヤしていた。 電車とホームの隙間とか、便器とか、ポロッと落ちないようにって。 ある時ついに片耳失くしてしまい、それきり外では聴かなくなった。 最初は手持ち無沙汰でも、代わりはいくらでも出てくる。 通勤中は、メールを返したり調べ物をしたりするようになった。もう1年くらい続けていた。 それが今さら改めてイヤフォンを買ったのは、

          こんな時代でも、音楽の世界ではただしく季節がめぐっている

          あなたのユートピアも、きっとまもられますように(文フリ感想)

          ガールフレンドと遊んだ。最近行きたくて仕方なかった焼肉に付き合ってもらい、満足感はそのまま、銭湯で臭いだけ落としてきた。 帰りのコンビニで買った、137円のインスタントラーメンを啜りながら書いている。23歳最後の夜。 先週末はじめて「文学フリマ」に参加した。 終了後は泥のように眠ってしまい、週明けは本職があまりに忙しく、感想を出せていなかったので、軽く残そうと思う。 noteやインスタを見ていただければわかるとおり、私は文フリに並々ならぬ思いがあった。冷静になって振り返れ

          あなたのユートピアも、きっとまもられますように(文フリ感想)

          元日に破局してから、今日までのこと(お知らせあります)

          暑中お見舞い申し上げます 溶けちゃいそうなほど暑いまいにちですが、お元気ですか。 卒業したバイト先みたいに、気に留めつつも足が遠のいてしまっていたnote。久しぶりの更新です。 noteと離れてからの半年強、Instagramに拠点を移して書いていました。 ここに置いていたような2,000字超のものではなく、原稿用紙1枚分いくかいかないかくらいの短いエッセイですが、ほぼ毎日アップしています。今170投稿くらいかな。(Instagramはこちら) 久々にログインしたら、n

          元日に破局してから、今日までのこと(お知らせあります)

          父さんとの、たわいない思い出

          「これで足りてますよ」 一瞬理解できずフリーズしてしまってから、QUOカードの右上に「1000」と書かれていることに気づいた。 「ああ、すみません」 500円だと思ってましたと笑った、私なんて見えないみたいに、店員さんは無表情でレシートとカードを突き出した。 ニコッとくらいしてくれてもよくない?別にいいけど。 500円だと思い込んでいたQUOカードが1000円分だった。 仕事帰りは、こんなささやかなラッキーがしみる。ハッピーは頭を悩ませてくるのに対して、ラッキーは気兼ねな

          父さんとの、たわいない思い出

          「上京したばかり」の賞味期限は過ぎたけど

          今朝カーテンを引いたら、窓が結露していた。 まあるくぷっくりと膨らんだ水の玉が、ポロロンと滑って落ちてゆく。あちこちで気ままに流れるのを眺めて、なんだか流れ星のようだなと思う。 私はカーテンを握って自分の方へ寄せた。実家の、裾のカビたカーテンを思い出したのだ。 まだ9月だというのに、それどころかつい先日まで夏日だったのに。 カーテンを端へ押しやり、サッシに手をかける。カラカラという音から少し遅れて、空気がふわっと部屋へ流れ込んできた。水分を含んだ、しっとりと冷たい空気だ。一

          「上京したばかり」の賞味期限は過ぎたけど

          何者でもない時間だって

          改札を抜けた人々は、地下通路を通って、解散・解散・解散。 メトロにはたくさん出口があるけれど、朝の東京では、迷っている人など見かけない。みんな、自分がどこへ出ればいいか知っているのだ。 迷わない人の群れにプレッシャーを感じつつ、考えずともB2へ向かっている自分に苦笑。 Web編集者に転職してから、1年と2ヶ月になる。 仕事にも人間関係にもすっかり慣れ、自分が何を求められているのか察して応えられるようになってきた。 帰宅と同時にバタンキューだったのが、仕事後文章を書けるほどの

          何者でもない時間だって

          愛さえあれば安心な世界に生まれたから

          彼と別れた翌日、私は普段通りの時刻に出社した。彼の布団から。 恋人と別れようが、体調が悪かろうが、毎日やってくるなにかしらの締め切りは、ひとつも待ってくれない。 仕事の波は高く荒く、少しもその勢いを緩めない。1日休めば、次の日の私はあっという間にのまれてしまう。有休は、実質無意味だ。 愛の話をする。 ずっと不安だった。私は彼と付き合っていていいのかと。 彼の「愛してる」に呼応する時、脳内にはクールなもうひとりの私がいて、いつも「それはほんとう?」と問いかけてきた。彼女

          愛さえあれば安心な世界に生まれたから

          死ぬほどウザくて、大好きだった

          高校時代、私の心をジャックしたやつがいる。 彼はデメキンと呼ばれるほど目が大きく(ムカつく)、冗談言ってばかりのくせに成績が良く(ムカつく)、白くて小さいチワワみたいな子と付き合っていた(ムカつく)。 私が持っていないものをぜんぶ持っている彼が、眩しくて仕方なかった。 好きな人の話になると必ず「でもあいつ彼女いるじゃん」と言われ、承知していると返せば「やるね」と冷やかされたが、やるもんか。 私は“ゴールキーパーがいてもシュートを打つ”なんて勇敢さを持っていたわけではない。む

          死ぬほどウザくて、大好きだった

          友達はだんだん減ってくけど

          プリクラが嫌いなjkの妹 彼からずっと「あの箱にふたりきりで入るのが照れ臭い」と拒まれてきたプリクラ。先日ついに撮ってもらえたので、さっそく妹に自慢した。 しつこくしていたら「私プリクラ嫌いなんだよ」と一喝された。彼女曰く、たいして仲良くもない子とも撮らなきゃいけない、いわゆる“jkカルチャー”に耐え難い苦痛を感じ、嫌いになってしまったらしい。なるほどねぇ。 400円で買っていた空っぽの時間 私もjkの頃は、たいして仲良くもない子と撮っていた。わかるなぁと思いながら写

          友達はだんだん減ってくけど