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全国水族館の旅㉜アクアテラス錦ケ丘

飼育技術や水質浄化技術の発達した現代では、水源から離れた陸地の至るところに水族館があります。それが高じて、より身近な飼育展示施設となり、今や商業施設の中にも水族館が設けられています
宮城県には小高い丘の上の水族館があると聞いて、ワクワクしながら出かけてみました。ショッピングモールの奥にはどのような空間が広がっているのか、とても楽しみです。


内陸地のショッピングモールの中に水族館?

アクアテラス錦ケ丘は、仙台市青葉区の商業施設「錦ケ丘ヒルサイドモール」の中にあります。現地の公共交通機関を楽しみたい筆者は鉄道にするか路線バスにするか悩みましたが、その場の気分で電車を選択(笑)。
JR仙台駅から仙山線に乗って、電車移動すること約30分。ヒルサイドモールの最寄り駅であるJR愛子駅に到着です。街歩きも兼ねて、駅から徒歩で行くことにしました。

JR仙山線の愛子駅。仙台駅からは電車で30分ほどです。
徒歩だと最寄り駅からは少々時間がかかります。ちなみに、これはヒルサイドモールではなく、お目当ての水族館まではさらに10分以上歩きます。

勾配の緩い坂道を20分ほど歩き、錦ケ丘ヒルサイドモールに到着。その外観はお城のようであり、とても趣深いです。施設内には多岐にわたる業種のお店が並んでいて、さらに英会話教室や学習塾も入っており、地域の暮らしを支える重要な場所となっています。

駅からノンストップで20分ほど歩いて、錦ケ丘ヒルサイドモールに到着。洋風デザインの外観が魅力的です。
レストランや雑貨店だけでなく、英会話教室やゲームセンターも入っているヒルサイドモール。地域の人々にとって重要な買い物と交流の場になっています。
水族館の観覧前後でヒルサイドモールを楽しみましょう。敷地内のレストランにて軽食をとるのも大いにありです。

お目当ての水族館・アクアテラス錦ケ丘は施設のアクア棟の2階にあります。入口からすでに楽しい雰囲気があふれ出しており、展示への期待が爆発寸前まで高まります。商業施設の中にある魅惑のアクアリウム、どんな世界が広がっているのか気になります。

アクア棟2階に位置するアクアテラス錦ケ丘。開館日は夜19時まで営業しています
窓には飼育生物の写真が飾られています。楽しい雰囲気が伝わってきますね。

不思議な生命との出会いを導く新感覚アクアリウム

魅力的な生体と工夫を凝らした展示スタイル

展示エリアに入って来館者が最初に目にするのは、和の雰囲気漂うメダカたちの展示です。多くの観賞魚と同じように、メダカにも様々な品種が生み出されています。お目利きの愛好家の人々にとっては、たまらなく興味深い展示だと思います。

メダカ類の展示エリア。様々なタイプの水槽が目を引きます。
美を極めた改良メダカたち。筆者は青色の系統が大好きです。
改良メダカの「夜桜」。桜の花びらのごとく可憐ですね。
かっこいい「ブラックオパールシャドー」。濃いブルーが特徴的な改良メダカです。
メダカの身体的特徴についての解説。彼らの美しさの秘密についても学べます。

個々の展示からは「楽しんで観覧してもらいたい」という本館の強い想いを受け取れます。魚との触れ合いを楽しめるタッチプールに、芸術の域に達する魅惑の緑豊かなアクアリウム。生き物たちが有するヒーリング効果に、身も心も癒されます。

植栽豊かなタッチプール。ドクターフィッシュとの触れ合いが楽しめます。
水棲生物の飼育と植生の観賞を融合させた新しいスタイルの展示。盆栽の手法や海外発祥の技術を取り入れて、美しい飼育水槽が誕生しました。

ここからはジャングルゾーン。テンションを上げて進みたいと思います。水族館ファン・熱帯魚ファンなら誰もが心踊る空間であり、力強い淡水のスターたちの共演に感激必至です。展示の魅力に引き込まれ、別世界に迷い混んだかのような心地になります。

ジャングルゾーンに入ると、いきなり大型水槽が出現。アリゲーターガーやシルバーアロワナなど、人気者の淡水魚たちの舞に酔いしれましょう。
遊泳中のレッドテールキャットはかっこいいです。熱帯淡水魚は総じてイケメンだと思います。
秘境の中にいるかのような展示ゾーンの内装。探検をしている心地になり、テンションがどんどん上がっていきます。
水槽の形状はバリエーション豊かです。観覧の楽しさがどんどん増していきますね。

本館には、来館者を楽しませる工夫がいっぱい! その1つが、多くの展示水槽に貼られている生物紹介カードです。
カードには展示生物の情報が簡潔にまとめられていて、生き物の分類や特徴を素早く理解できます。大人気のポケモンカード風のデザインですので、多くの人々が強く関心をそそられるでしょう。

展示水槽には、生き物のカードが貼られています。ポケモンカードのようなデザインとなっており、誰もが楽しく見て学べます。
独特なフォルムのフラワーホーン。とても人懐っこい魚です。
ノーザンバラムンディ。野生では豊富に生息しているアロワナ類です。
貫禄あふれるピラニア。もっとも有名なアマゾンの魚と言えます。
優雅に舞うシルバーアロワナ。多くの熱帯魚ファンからアロワナは大人気です。

自然界のジャングルでは、熱帯魚だけでなく多種多様な爬虫類たちも暮らしています。ジャングルゾーンの隣には爬虫類ゾーンが設けられており、美しさと可愛いさを併せ持つ魅力的なアイドルたちが続々登場します。筆者をはじめ、生物マニアは爬虫類の生体展示が大好物です(笑)。

爬虫類の展示区画。多様な爬虫類たちの魅力が漂っています。
睡眠中のキタアオジタトカゲ。可愛いすぎです!
バーミーズパイソン。とっても美しいうえに、めちゃくちゃ強く、自然界では大型動物を捕食することがあります。
ケヅメリクガメ。陸棲・水棲を問わず、カメには本当に癒されます。
なんと、爬虫類たちには社員証明書があります! 各個体に関心と愛着が湧いてくる素晴らしい工夫です。

ユニークな展示はまだまだ続きます。個人的に度肝を抜かれた工夫は、マレージャイアントスコーピオンの特殊な展示です。
飼育ケース備えつけのライトを当ててみると、サソリの体が青白く発光します。サソリの体に含まれる物質の特性を利用した素晴らしい展示手法であり、生き物の不思議な秘密に触れられて、大人も子供も好奇心を強く刺激されます。

一見、何の変哲もない飼育ケース。ですが、UVライトを当てると……。
ライトの紫外線に反応して、マレージャイアントスコーピオンの体が光ります! サソリの外骨格に含まれる物質は、紫外線の光を受けることで発光するのです。
アフリカウシガエル。外来生物として問題になっていますが、生体はとっても可愛いです。
シナスッポン。首を伸ばした瞬間が萌えポイントです。

水槽の形状や配置の工夫も本館の強みの1つです。水族館にはエンターテインメント性を求める人も多く、水槽の見せ方は大きなアピールポイントになると思います。展示に引きつけられた瞬間に、来館者はスタッフさんが仕掛けた技の虜になっているのです。

小さな窓のような並んだ水槽。本館には、自然と来館者の目を強く引きつける展示が本当に多いです。
ナマズ類のギバチ。うまく正面を向いてくれました。
リーフフィッシュ。葉っぱに擬態して、気づかれることなく獲物に接近します。
コリドラスシュワルツ。黒いドット柄の模様がかっこいい!

生き物たちが織り成す美のファンタジー空間

ジャングルゾーンを抜けると、世界の全てが一変! 照明の配色も館内の雰囲気も妖しさが増し、摩訶不思議なファンタジーゾーンへと突入します。
1つ1つの水族展示がアートのごとく煌めいており、近代美術館の中にいるような心地になります。ムード満点の展示空間ですので、カップルでの来館にもオススメですね。

ファンタジーゾーンへ突入。これまでの雰囲気から一転して、妖艶な世界が目の前に広がります。
この透明の柱は展示水槽です。生き物たちとスタッフさんが作り出す幻惑の魔術、まさにアートです。
柱の中にはパロットファイヤーシクリッドが泳いでいます。彼らの赤いボディが、さらに不思議な雰囲気を演出してくれています。
美術館に並ぶ絵画のごとく、壁面に埋め込まれた水槽。カップルで来館すると、ロマンチックな一時を過ごせるのではないでしょうか。

ファンタジーゾーンを彩る魚たちは、まさに百花繚乱。水槽の神秘的な演出と、よくマッチしています。SNS映え抜群のミステリアスな空間にて、多種多様な魚たちをたくさん撮りましょう。

ブラックファントムテトラ。名前も見た目もかっこいい!
ムーディーな水の空間を泳ぐオヤビッチャ。大きな個体は食用になり、よく焼き魚として調理されます。
風格漂うモトロ。アマゾンに棲む淡水のエイです。
ちょっとジト目なのが可愛いサンドシャーク。シマザメという別名で呼ばれることもあります。
アルビノのコロソマ。黄金がかった白いボディには、赤色の照明がマッチしています。

ミステリアスな生き物が次々と現れる中で、筆者の推しはキュートか節足動物たち。大好きなオオグソクムシに加えて、カブトガニの赤ちゃんにも出会えます。1つ1つの動きを観察してみると新たな発見があり、きっと彼らを大好きになると思います。

オオグソクムシ。なお、筆者は食べたことがありませんが、巷ではオオグソクムシの粉入りせんべいが売られているらしいです
カブトガニの幼体。砂中に潜っている個体も多くいました。

長い神秘の回廊を抜けると、広いホール空間へと出ます。雄大な池では大勢のニシキゴイが飼育されており、屏風絵に描かれたワンシーンのごとく、優雅に泳ぎ回っています。
本エリアでは、コイたちへの餌やりを体験することができます。高貴なニシキゴイも、おいしいご飯を前にすると食欲全開で突撃してきます(笑)。

たくさんのニシキゴイを飼育する池。照明演出と相まって、魔法の異世界にいるような感覚に見舞われます。
本エリアでは餌やり体験もできます。さっそく、コイたちが元気に群がってきました(笑)。
池の中央には球体型の水槽が設置されています。展示スタイルに合わせて、ベストな水槽を選ぶのも水族館の技ですね。

同エリアには、海水魚たちの展示もあります。かっこいい子、可愛い子、きれいな子、個性あふれる魚たちが自慢の姿を思いきり見せてくれます。
筆者の推しはクモウツボ。強そうな見た目でありながら、実はおとなしいというギャップに萌えます。

かっこよさと可愛さを併せ持つクモウツボ。ウツボの中では比較的おとなしい種類です。
コトヒキ。西日本では食用としてメジャーな魚です。
ハナミノカサゴ。鋭い毒の棘を有する、美しく恐ろしい魚です。

アクアテラス錦ケ丘は宮城県の水族館ですが、なんと沖縄の生き物たちの研究・展示室があります。本館の特別エリア「沖縄生体研究室」では、沖縄諸島に生息する様々な生命と出会えます。固有種の数多く飼育展示されており、珍しい生き物たちの姿に来館者は目を奪われることでしょう。

琉球の生き物たちを展示する「沖縄生体研究室」。宮城県の水族館で沖縄の生態系が学べるとは最高です!
マングローブの生える水域を再現した水槽。名スナイパーのテッポウウオが展示されています。
サンゴ礁の生き物たちも集結! ルリスズメダイの美しさは宝石のようです。
固有種オキナワミナミサワガニ。沖縄本島の北部森林地帯「山原」にのみ生息しています。

琉球の大自然の中で、筆者が特に出会いたい生き物は固有の爬虫類・両生類です。その生態や姿はとても興味深く、研究者やマニアの人々が熱中するのは至極当然の道理。彼らを観察していると、沖縄の山林や河川への繰り出してみたくなりますね。

ヤエヤマイシガメ。乱獲によって個体数が激減し、絶滅危惧種となっています。
めちゃくちゃ強いアカマタ。日本一好戦的なヘビと言われており、ハブさえも捕食してしまいます
アイフィンガーガエル。日本で唯一子育てをするカエルです
3匹で佇むミヤコヒキガエル。アジアヒキガエルの宮古島産固有亜種です。
オキナワシリケンイモリ。ペットとしての需要が高まると共に、販売目的の乱獲が問題となっています。

エンタメMAXの本館の展示も、いよいよフィナーレです。最後のエリアでは、涼しげな水槽の中で彩り豊かな金魚たちが待っています。
可愛いランチュウが見られて筆者は大満足! 金魚は形態やカラーリングのバリエーションが豊富であり、きっと来館者の好みに合った推しの子が見つかると思います。

金魚たちの展示水槽。メダカやニシキゴイと並んで、日本が誇る重要な観賞魚です。
簾の飾られた水槽で、多様な金魚たちと対面。展示の最後も視覚的に楽しませてくれます。
筆者の大好きなランチュウ。最後の最後まで、目と心の保養になりました!

別世界に迷い込んだかのような新鮮な観覧体験ができるアクアテラス錦ケ丘。本館のエンターテインメント性は極めて洗練されており、家族連れの多いショッピングモールには最適な展示施設と言えます。
生命の美しさに触れることで、生命の尊さを感じ、それが環境保全へつながっていくのだと思います。アクアテラス錦ケ丘での観覧は、生き物への愛情を呼び起こす素敵な経験となるでしょう。

アクアテラス錦ケ丘 総合レビュー

所在地:宮城県仙台市青葉区錦ケ丘1-3-1

強み:展示生物の美しさを引き出す照明配色や水槽配置の工夫、多種多様な生物の魅力と空間演出の相乗効果で生まれるファンタスティックな空気感、カードゲーム風の生物紹介や爬虫類の社員証明書といった展示各所にあふれる「遊び心」

アクセス面:錦ケ丘ヒルサイドモールへの主なアクセス手段として、仙台駅前のバス停から路線バスが出ています。またJR仙山線の愛子駅にてタクシーに乗れば、駅から5分程度で到着します(行こうと思えば徒歩でも行けますが20分以上はかかると思ってください)。ヒルサイドモールには大きな駐車場がありますので、東北地方にお住まいの方、レンタカーを使用される方は、そのまま車で向かいましょう。

生物マニアはもちろん、家族連れやカップルも含めて誰もがワクワクしながら観覧できる魅惑のアクアリウムです。極限まで創意工夫が施された水槽の配置や展示の見せ方など、多彩な技で来館者を終始楽しませてくれます。カードゲーム風の生き物紹介、爬虫類の社員証明書といった遊び心満載のアイディアも素晴らしいです。
生き物とスタッフさんが魅せる極上のイリュージョン。美術館的な要素を取り入れ、なおかつ水族館の強みを活かしたエンターテインメント性抜群の飼育展示スタイルとなっています。本館の観覧を通して、水族館の展示には無限の可能性があるのだと感じました。

ヒルサイドモールの周辺にも、様々なお店が立っています。水族館を観覧した後は、スーパー銭湯で旅の疲れを癒してはいかがでしょうか。

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