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全国水族館の旅㉕ほたるいかミュージアム

まず、この記事をご覧になって関心を抱いてくださった方々へ。ホタルイカ漁は4~5月が旬ですので、ぜひ新年度に行きましょう。筆者がこの時期に記事投稿したのは、皆様に4月に本館へ行っていただきたいからです(もちろん、他のシーズンに来館しても超楽しめます)。
それほど筆者が推す施設、ほたるいかミュージアムをご紹介します。


ホタルイカ漁の港街、滑川へ!

大事なことなので2度言いますが、ほたるいかミュージアムを訪れるなら4月がベストです。本館で展示されるホタルイカは新鮮な捕獲個体ですので、生きたイカたちを見れる可能性が高いのは春の産卵期になります。
なお、筆者はかなりのラッキーパーソンだったようで、冬の時期には珍しい奇跡の6匹のホタルイカと出会えました!

その奇跡体験の舞台は富山県滑川市。ホタルイカ漁で有名な日本海側の街です。
富山市から車で1時間もかからないので、アクセス環境は抜群。街の中には、海から吹く潮風が流れています。

ホタルイカの街、滑川市。漁の時期になると、観光客がたくさん訪れます。
壮大な日本海に面した滑川市。南側を振り向けば、北アルプスの峰々が見えます。
力強く波打つ日本海。春になると、湾内でホタルイカを追い込み漁が行われます。

ほたるいかミュージアムは道の駅ウェーブパークなめりかわと隣接しているので、海岸沿いの道を進んで行けば着きます。道の駅が隣にあるということは、腹ごしらえも現地にてできます。
さっそく、滑川名物のホタルイカを食べに行きました!

道の駅ウェーブパークなめりかわ。ほたるいかミュージアムに加えて、タランピアという体感型レジャー施設も隣接しています。
2階のレストラン「光彩」へ。博物館や水族館の観覧は体力を使うので腹ごしらえは必須(笑)。
「光彩」はパノラマレストランですので、窓から日本海が広く見渡せます。なんという贅沢なのでしょうか!

お目当てはもちろんホタルイカ。シーズンによってメニューが変化しており、漁の時期にはお料理の種類も増えます。新鮮でおいしいホタルイカをしっかり噛みしめて味わいましょう。

パスタの具はホタルイカ。身が詰まっていて超おいしいです!
ホタルイカはサラダとも相性抜群。あっさりしていて、噛みごたえもあって最高!

お腹いっぱいになったら、ほたるいかミュージアムへGO。不思議な光るイカたちの生態や体の秘密、滑川市の漁業文化との関係について学べます。
どんな発見があるのか楽しみですね!

観覧前に1階で一服。富山湾の海洋深層水で淹れたコーヒーです
お腹が膨れたので、今度は心を満腹にしたいと思います。ほたるいかミュージアムへ出発!

富山の海洋生態系とホタルイカの秘密を学ぶ体感型施設

輝くイカたちを育む富山湾の神秘

不思議なイカたちに出会う前に、まず「ホタルイカとは何者なのか?」を知らなくてはなりません。最初の展示室においては、ホタルイカの生物学的な基礎知識に加え、漁業や観光との関連についても解説してくれています。

大きなパネルがたくさんある展示室。写真やイラストでしっかり解説してくれているので、読んでいてとても楽しいです。
ホタルイカの体や分類についての解説。ご覧の通り、発光器官を3種類も備えています。
頭足類の進化系統樹。イカとは、広い意味で言えば貝の仲間です。
滑川市の重要な漁業の1つ、ホタルイカ漁。富山湾の地形を活かした高度な捕獲技術です。
ホタルイカ漁の際には、イカたちのすさまじい発光が見られるので、滑川市の観光資源にもなっています。青く輝く海面を眺める夜のクルージング、最高ですね!

続いては、富山湾の自然の姿を体感します。ミュージアムシアターの大スクリーンにて、水中ドローンで撮影された深海の映像を見ることができます。来館者は富山の海を視覚的に体感し、多種多様な生命の営みを目撃するのです。
なお、ミュージアムシアターの映像は撮影禁止ですので、ここでご紹介することはできません。ぜひ来館してご覧ください。

ホタルイカをはじめ、スクリーン映像で様々な海洋生物が登場するミュージアムシアター。撮影禁止ですので、現地にてご覧ください。めちゃくちゃ神秘的でワクワクする映像です!
深海の記録映像を楽しんだら、さらに観覧を進めていきましょう。海の中をイメージした照明は、とってもムーディーです。

ここからは、お待ちかねの水族展示です。
飼育展示されているのは、愛すべき富山県の海洋生物たち。日本海という戦場で生き抜くしたたかな子たちに見とれてしまいます。

海洋生物たちの展示水槽。楽しい解説と一体化していて、大人も子供も楽しく学べます。
アカオビシマハゼ。興奮すると、体の色がパッと黒くなります。
隙間に隠れているウミケムシ。ゴカイやヒルの仲間であり、毒針を装備しています。
いろいろな料理になるカワハギ。富山県産の個体は、すごくおいしそうですね。
アカボシヤドカリ。左のハサミが右のハサミより大きいという、アンバランスさが魅力的。

水族展示の工夫の1つとして、水槽底面の下に設置されたミラーがあげられます。
サカサクラゲなどの特殊な例を除き、我々にとって生き物を裏側・下側から見ることは困難です。ですが、いくつかの水槽ではミラーのおかげで「下からの生物観察」を楽しめます。クモヒトデなど、両面を見るのが難しい底生の生き物にはぴったりだと思います。

刺身にもフライにもなるマアジ。実は、この水槽の下方に仕掛けがあります。
底側にミラーが設置されているので、下からもマアジが見られます。まばゆく輝く魚たち、すごく美しい。
クモヒトデ。いつもは体の上部しか見えませんが、ここで例のミラーが役立ちます。
水槽の下のミラーによって、下側の姿を見ることができます。口の形態もしっかりわかりますね。

本館はホタルイカ展示の最高峰施設ですが、他にもすごい強みがあります。それはダイオウグソクムシを飼育展示していることです。加えて、発光器官を擁するヒカリキンメダイたちにも出会えます。不思議と神秘に満ちた深海の環境を、そっと覗いてみましょう。

ダイオウグソクムシたち深海生物の展示エリア。光の届かない海の底を散歩してみましょう。
ダイオウグソクムシ。全長50 cmにも達する最大の等脚類です。深海環境の再現のため、展示エリアは暗くなっています。
こちらはオオグソクムシ。ダイオウと比べれば小さいものの、他の等脚類(ダンゴムシやワラジムシなど)と比べるとはるかに大きいです。
暗闇の中で青く光るヒカリキンメダイ。頭部に小さな発光器官を備えており、暗室での展示に向いています。

超魅力的な海洋生物たちに加えて、イラストやキャプションを使った展示も充実しています。ホタルイカの基礎知識に関する解説はとても明瞭であり、不思議なイカたちの生態には驚かされます。

「ほたるいかの不思議」というシリーズのキャプション。ホタルイカの驚異的な生態を、イラストと明瞭な解説文で教えてくれます。
こちらは発光についての解説。ホタルイカは目眩ましのために発光し、捕食者の攻撃を逃れています。
ホタルイカ以外のイカたちについても、詳しく解説されています。こちらは最大の軟体動物ダイオウイカの実物大イラスト。
世界のイカたちをイラストで紹介。一口にイカと言っても、種類ごとに生態は違ってきます。


奇跡の出会い! 季節外れのホタルイカ!!

冬季の来館ということもあり、筆者はホタルイカには会えそうにないかなぁと考えておりました。しかし、いい意味で予想は覆りました。
なんと、筆者の来館日には、奇跡的に捕獲された6匹のホタルイカが展示されていました! 獲ってきてくださった漁師さんには誠に感謝です。本っっっっ当に、ありがたく観察させてあただきました。

筆者の来館日に捕獲されたホタルイカ。冬にホタルイカが見られるのは奇跡です!
冬のホタルイカは貴重なので、存分に見ておきます。なお、4月の漁の時期に来館すれば、たくさんの個体と出会うことができますよ。
活発に泳ぐ姿は美しいです。ぜひ暗所での発光も見てみたいですね。

ホタルイカが展示されているバットは、本館で最も広い水槽「深海不思議の泉」の中にあります。円形の泉の中には、富山湾の水深333 mもの深海から水が取り入れられており、開放的な空間で海洋生物たちを観察することができます。なお、泉の海水は触ってもOKなので、深海の水の冷たさを肌で感じてみましょう
筆者の推しは甲殻類たち。かっこよくて、可愛くて、おいしそう!

「深海不思議の泉」。大きな泉の中にいくつかのバットが配されており、たくさんの生物が飼育展示されています。
富山湾で獲れたケガニ。立派な風格です。
トヤマエビ。富山県の名を冠する高級なエビです。
モロトゲアカエビ。トヤマエビと並んで、富山県の市場でよく見られるそうです。
コイボイソギンチャク。富山湾の沖にて採集された個体であり、幼体の時期から育てられました。

ホタルイカと並ぶ富山県の名産が「ますずし」です。近年、ますずしの食材となるサクラマスは減少を続けていますが、その窮地を救うために地元の高校の方々が立ち上がりました。新たな水産技術の研究によって、サクラマスの資源量を増やす取り組みです。
このとき、特別展示にて、富山県立滑川高校の海洋科で育てられたサクラマスの幼体を見ることができました。さらに、高校生や教師の方々が取り組む水産研究の解説もあります。若き技術者の研究と情熱、心から尊敬いたします。

サクラマスの展示水槽と研究解説資料。地元高校のすさまじい実績、とても勉強になります。
滑川高校で生まれたサクラマスの幼体。高校生や教師の皆さんの可愛い子供たちです。
滑川高校のサクラマス増殖についての新聞記事。なお、本プロジェクトでの活躍により、滑川高校の学生の方々は大きな水産研究会で表彰されています

実は本館では、他の水族館にはない独特なショーが見られます。それは「ホタルイカの生物発光ショー」です。暗闇の特設ホールの中で、青く妖艶なホタルイカの発光を楽しめます。
ただし、ホタルイカの輝きを見ることができるのは、4月から5月付近の漁の期間のみ。それ以外のシーズンでは、ホタルイカとは違う生き物たちの生物発光を拝めます。どの季節に訪れても楽しめますが、やはり一生に一度はホタルイカの光輝を見てみたいですね。
なお、発光ショーは撮影禁止となっています

こちらの曲面の壁の向こうが、ホタルイカ発光ショーのホールとなっています。撮影禁止ですので、ぜひとも現地にて肉眼で楽しみましょう!
発光しているホタルイカの写真。漁の時期には、富山湾の沿岸にたくさんのホタルイカが打ち上げられます。写真で見るように、陸に乗り上げても発光し続けています。

生体展示を存分に楽しんだら、ホタルイカの生物学的特性と漁業について学びましょう。
イカたちは全身が不思議の塊。知れば知るほど、彼らのすさまじい能力に魅了されてしまいます。これほど不思議な生き物が日本海に棲んでいることに感激です。
さらに、ホタルイカを獲り続ける漁師さんたちの技術力にも瞠目してしまいます。日本の漁業のパワーってすごい!

ホタルイカの体の構造についての解説。発光器官だけでなく、ロートや吸盤などの優れた器官を装備。イカの機能美には本当にうっとりしてしまいます。
ホタルイカの発光メカニズム。暗闇の中で全身発光する様は、宇宙生物のごとく神秘的です。
ホタルイカの捕獲プロセス。多くの方々の努力によって、我々は本館で生体の観察を楽しめるのです。
ホタルイカ定置網「わら網」。ターゲットの群れが逃げにくい構造となっています。漁のシーズンが過ぎた後は、ホタルイカや様々な海洋生物の産卵場所として活用されます。

学術的にも産業的にも、ホタルイカは富山湾になくてはならない存在です。これからの春もホタルイカたちの輝きを拝み続けられるように、日本海含めた全ての海洋環境を守っていかなくてはなりません。
ほたるいかミュージアムの各種展示は、海の保全と水産資源の持続的利用について考えさせてくれます。

ほたるいかミュージアム 総合レビュー

所在地:富山県滑川市中川原410

強み:ホタルイカをはじめ富山湾の海洋生物の専一な調査研究に基づく学術的知見、「深海不思議の泉」など日本海の神秘を間近で楽める特殊展示、ホタルイカ発光ショーや暗闇での深海生物展示といった来館者の好奇心を刺激する創意工夫

アクセス面:とても広い駐車場のある道の駅に隣接していますので、車での来館がオススメです。富山市から走り出せば、下道でも1時間もかからずに滑川市に到着します。また、あいの風とやま鉄道滑川駅・富山地方鉄道滑川駅から歩いて10分ほどで辿り着けますので、電車で来館するのも大いにありだと思います。ただし、魚津水族館へハシゴする場合は車を使った方が断然便利なので、ぜひともレンタカーを借りましょう。

野外個体の生息フィールドに最も近い立地環境ですので、ホタルイカについて最も詳しく学べる展示施設となっています。ホタルイカという滑川市のシンボルを専一に研究し、地域と一体になって学術活動をしていることがよくわかります。富山湾の海洋生物展示の中には、地元の漁師さんから提供された生体もいるので、地域と水族館の強い絆を感じさせてくれます。
生息地域の水族館で観察する生き物たちには特別性を感じますし、ダイオウグソクムシたち深海生物の神秘性にも魅了されます。さらに、ホタルイカの生物発光ショーは本館でしか見られないので、ぜひとも来館して唯一無二の輝きを楽しんでください。

改めて、ベストな来館シーズンはホタルイカ漁の時期である4月から5月です。4月に富山旅行ができるように、今のうちに日程の調整・有給休暇の申請などを済ませておきましょう!

ホタルイカは滑川の大切な名産物。街の中をよく見ると、至るところでイカたちに出会えます。

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