見出し画像

全国水族館の旅㉔幼魚水族館

どんな生き物でも、赤ちゃんはとても可愛いです。それは魚とて例外ではありません。
自然界の生命にとって、赤ちゃんとは「種族の未来」です。希望が詰まった存在だからこそ、たくましく気高いし、とても愛しく思えます。そんな可愛くて尊い幼魚たちに出会える素晴らしい水族館が静岡県にあります。


水族館業界に新風を巻き起こす気鋭の飼育展示施設

今回訪れる幼魚水族館は、2022年にオープンした若い水族展示施設です。その名前の通り、水棲生物の赤ちゃんたちが主役の水族館であり、水の中の天使たちがたくさん育まれています。
何事も発想が大切。幼魚展示がテーマという独自のアイディア、素晴らしいです。可愛いお魚が大好きな筆者は、もちろん大興奮して突撃します(笑)。

最寄り駅は、JR東海道線もしくは伊豆箱根鉄道の三島駅。ここから水族館を擁する商業施設へと移動します。

三島市の大型複合商業施設「サントムーン柿田川」の中に水族館が入っています。三島駅からさほど遠くはありませんので、車であっという間に着きました。
到着してみると、施設の大きさにびっくり。お客さんもたくさんいました。

柿田川公園の前に立つサントムーン柿田川。複数の大型商業施設が集合していて、ショッピングやレジャーを楽しめます。
サントムーンの各館は連絡通路でつながっており、敷地面積はとても広大です。初見では迷子になりそう(笑)。
幼魚水族館が入っているのは、こちらのオアシス館。建物が立派でワクワクします。

オアシス館に入り、水族館を目指します。とても活気ある商業施設であり、アニメや漫画とのコラボも多くて賑わっています。サントムーンは三島の人々の笑顔の中心なのだと実感させられます。

館内には、水族館をテーマにした漫画『マグメル深海水族館』の試し読みコーナーもあります。生き物好き、水族館好きの方はぜひご覧ください。

エスカレーターで3階の幼魚水族館へ到着。どんな可愛い魚たちが待っているのでしょうか。もう抑えられないほどに心臓がドキドキしています。

幼魚水族館はオアシス館3階に位置しています。可愛い魚たちが育てられている施設ですので、まさに笑顔のオアシスだと思います。

生命を愛する心にあふれた幼魚の楽園

胸キュン必至! 幼魚への萌えが止まらない!!

興奮気味に観覧スタート。本館独自の素晴らしい強みと幼魚の可愛さをお伝えしたいので、成魚よりも幼魚の展示を優先して紹介させていただきます。それでは、よく目を凝らして、小さなアイドルたちの姿を見届けたいと思います。

幼魚たちとの出会いの始まり。タモ網を掲げた館長さんのパネル(写真中央上)には、思わずびっくりしました。
ヤセオコゼの幼魚。成魚になったら怖い彼らも、幼少期はキュート!
可愛すぎるハチの幼魚。すでに筆者の萌えゲージが臨界点を突破しています(笑)。
ヒメエビ類の幼生。甲殻類の赤ちゃんはクリアーできれいですね。
大きな水槽には成魚の展示もあります。こちらのメジナは漁港でよく会うことができ、釣り人からも人気の魚です。

キュートなのは魚だけでなく、キャプションもハンドメイド感があって、とっても可愛いです。親しみやすく読みやすいので、生き物たちの生態の理解が一気に進みます。

イラストと文章が親しみやすいキャプション。ちなみに、モンハナシャコに殴られるのはかなり危険です!
上記キャプションで解説されていたモンハナシャコ。前脚のパンチは超強烈で、このサイズの生物としては異常なほどの強さです。
ゴンズイの解説。集団を形成するメカニズムも、わかりやすく書かれています。
ゴンズイの幼魚たち。仲間と寄り添う姿が可愛い!

幼魚たちの可愛さは無敵。まさに海のアイドルです!
同じアイドルということで、お隣の沼津市のアニメとのコラボが実現しています。たくさんのアニメファンの方々にも水族館を見ていただきたいので、こういった企画はいろいろな施設でどんどん進んでほしいなぁと考えております。

お隣の沼津市を舞台にしたアニメ『ラブライブ!サンシャイン』とのコラボエリア。漁港で出会える魚の幼生アイドルがテーマです。
カエルアンコウの幼魚。可愛さなら、ラブライブのアイドルにも負けません。
ネコザメの子供。本館で生まれた繁殖個体です。顔も体型も、全てが可愛い!
サラサハダの幼魚。黒点をあしらっているのは成魚と同じですが、幼魚は白いので点が明瞭に見えます。
ハリセンボンの子供たち。名前とは違って、装備している針は350本ほどです。

幼魚の展示はまだまだ続きます。皆様のライフゲージは大丈夫でしょうか?
可愛い子の超絶ラッシュで、筆者の心拍数は相当ヤバイことになっています(笑)。一呼吸置いて、中盤戦もどんどん萌えていきます!

コンゴウフグの幼魚。可愛い角は、成魚になるとさらに長くなります。
コンビクト・ブレニーの幼魚。幼魚が成魚の世話をするという、ちょっと風変わりな生態行動をとります。
シマヒメヤマノカミの幼魚。展示生物の入手方法の1つが採集であり、この子も海で捕獲されて水族館にやってきました。
イシガキフグの幼魚。人工繁殖によって生まれた水族館産の個体です。
こちらは成体のイシガキフグ。幼体とはかなり外観が異なります。なお、イシガキフグの成魚と幼魚の同時展示は世界初となります

魚以外の海洋生物も、幼生はとってもキュート。見ているだけで、身も心も骨抜きにされます。軟体動物や棘皮動物に萌えるという貴重な経験ができます。

タコの赤ちゃんの可愛さ、最高すぎます。小さな吸盤が個人的萌えポイント。
マンジュウヒトデの幼体。ちょっとずんぐりした体がラブリー!
こちらがマンジュウヒトデの成体です。幼体よりもさらに厚みとずんぐり度が増し、クッションのように見えます。

強くてたくましい幼魚たちの生き様

突然ですが、椙下聖海先生の傑作漫画『マグメル深海水族館』をご存じでしょうか。
深海生物の水族館を舞台にした本格的な飼育員さんのお仕事漫画であり、生き物の姿がリアルなタッチで表現されています。深海生物の生態と魅力が感動的に描かれているので、「水族館の好きな人には絶対読んでほしい」レベルで強くオススメできる作品です!

いつか本物の水族館とコラボするだろうなぁと思っていたところ、なんと幼魚水族館に展示エリアができていました!

本格的な水族館漫画『マグメル深海水族館』とのコラボ。キャラクターたちと共に深海魚の神秘を学べます。
漫画のイラストと一体化した大型キャプション。驚異的な深海魚の生態をたっぷり知ることができます。
「死」という水族館が避けては通れないテーマについても説いてくれています。死んだ個体は、標本として学術的に生き続けます。それは科学の発展を助ける「崇高な死」なのです。

それでは、深海生物の赤ちゃんたちに会ってみましょう。成体はユニークな形態をした種類が多いですが、幼体はどの子も「めちゃくちゃ可愛い」という共通点を持っています。

アオミシマの幼魚。可愛いお顔を見たかったのですが、なかなか振り向いてくれません(笑)。
ボタンエビの幼体。幼魚水族館で生まれた稚エビです。
トゲカナガシラの幼魚。胸ビレを足のように使って歩きます。トコトコ歩き、めっちゃ可愛い!
タカアシガニの子供。彼らは脱皮して大きくなりますが、一歩間違えると脚がとれてしまうこともあります。甲殻類には脱皮するのも命がけなのです。
ドリルではなく、ポートジャクソンネコザメの卵です。きっと可愛い幼魚が生まれてくるでしょう。

ラブリーかつミステリアスな生体たちの向かい側では、深海生物の液浸標本が展示されています。死亡した個体を標本にすることで、彼らは学術的に意義深い存在となります。彼らの命に敬意を払いながら、1点1点じっくりと見ていきます。

アカグツの赤ちゃんの液浸標本。世界でここでしか見られない貴重な標本です
フリソデウオの幼魚の標本。成魚と比べて短く見える体が愛らしいです。
フジクジラの胎児。クジラではなくサメの仲間です。お腹の中で卵を孵して、赤ちゃんをそのまま出産します。
ワニグチツノザメ。鋭い歯から推測できるように、肉食性の深海魚です。
ヒカリキンメダイ。頭部に見える青い部分が発光器官です。

お次は人工繁殖によって誕生した幼魚たち。水族館の魚も、我々の食卓に上がる養殖魚も、人々の強い想いで育てられた個体なのです。
どんな生き物でも、自分の手で飼育すれば、とても可愛く思えてきます。どのような生き物たちがどのような人々の情熱を受けて育てられているのか、生体展示とタブレット解説にて学べます。

繁殖飼育されている方々の解説を、タブレットで見ることができます。貴重な情報ですので、余すところなくチェックしましょう。
ヒラメの幼魚。小さな目が可愛すぎる!
アワビの子供はこんなにもキュートです。成体になったら、感謝しながらいただきましょう。
バフンウニの幼生。成体になると怖い彼らですが、子供の頃はトゲさえも可愛く見えますね。
タブレットには、生き物たちの成長についての解説も流れます。とてもわかりやすく、素晴らしい生態学習だと思います。

愛らしい幼生たちは、海洋だけでなく河川や磯にもあふれています。身近な水域に目を向けると、自然界の中でたくさんの生き物の赤ちゃんを発見できるでしょうか。次なる区画では、淡水域や潮溜まりで暮らす幼生たちが待っています。

ポリプテルス・エンドリケリーの子供。可愛さとかっこよさを併せ持つ素晴らしい子。
両生類ウーパールーパー。彼らは幼形成熟という特性を有しており、幼生の頃の特徴を残したまま成長していきます。
オヤビッチャの幼魚。岩から覗いてる姿が可愛いですね。
トゲアシガニ。岩などに張りつき、素早く動きます。

観覧を通して、たくさんの赤ちゃんたちに出会ってきました。私たちの観点からすれば、ちっちゃな可愛い魚たちですが、彼らは決して弱い存在ではありません。小さな幼魚たちは自然界という厳しい戦場に生まれ、襲いかかる敵との戦いに勝ち抜き、数えきれないほど試練を乗り越えて成魚になるのです。
たくましく生きる幼魚たちからは、我々も学ぶところがあると思います。彼らの力強い生き方を知ると、明日からの人生を強く生きようという活力が湧いてきます。

館長さんからのメッセージ。幼魚の魅力に加え、我々が社会を生きるヒントも伝えてくれています。
沼津市の大瀬崎で見られる深海の幼魚たちの写真。自然界でも水族館でも、幼魚はとっても可愛いのです!

幼魚水族館 総合レビュー

所在地:静岡県駿東郡清水町伏見52-1 オアシス館3階

強み:愛らしい幼魚の展示をテーマにした強力な独自性、水棲生物の生態を様々な展示内容でわかりやすく伝える創意工夫、多数の人工繁殖個体を産み出す飼育技術の高さ

アクセス面:自家用車かレンタカーで来訪するのが理にかなっていますが、サントムーン柿田川はとても賑わう商業施設であり、休日は駐車場が混雑している可能性も考えられます。運が悪くて満車になっていた場合は、周囲の有料駐車場を利用しましょう。なお、サントムーンは最寄りの駅(JR東海道線・伊豆箱根鉄道の三島駅)からそれほど遠くはありませんので、公共交通機関を利用するのも大いにありです。仮にタクシーを利用しても、時間もお金もさほどかからないと思います。そのときの自分にとってベストなアクセス手段を選びましょう。

幼魚たちの可愛らしさ、たくましさが最高でたまりません。ただ魚の赤ちゃんが可愛いだけでは終わらず、彼らが持っている生態的な特徴やしたたかな生存戦略についても説いてくれます。また、生物飼育や標本展示の意義を考えさせられる構成となっており、あらゆる面で多くの学びが得られます。
個性派の水族館ですので、展示内容には独自の工夫がたくさん見られます。成体と幼体が同時展示されている種類もいて、成長過程における生き物たちの差異を直に理解することができます。加えて、手作り感満載のキャプションは極めてわかりやすく、それでいて学術的なポイントをしっかり押さえているので、来館者にしっかりと生き物の秘密が伝わっています。
個人的に、これだけの幼魚を定期的に展示に供給できる飼育技術・採集技術はすごいと感じました。水族館がたくさんの人々の努力の上に成り立っているのだと、改めて強く感じます。生き物への愛が詰まった楽しい幼魚水族館、ぜひ多くの人々に訪れてほしいと思います。

観覧途中には、成カリブと幼カリブの展示もあります(笑)。館長さん、尊敬しています!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?