ロイヤルホストの閉店アナウンスが良いらしい

と聞いて、やってきた。高崎駅東口の近くにあるロイヤルホスト。

時刻は9時半ごろ。
初めてロイヤルホストにきた。ノスタルジーを煽る、最低限かつ高級感のある店内装飾、派手な装飾の無い洗練されたメニュー。
もちろん、あの小うるさい配膳ロボットなんて一台もなく、平日の閉店間際、きれいな制服を着たどこかやるせなさそうな店員が何名か。まあまあ大きな音のBGM、どっかのオーケストラかなんかのゆったりした感じのあんな感じのやつ。夢でみた客船の中で流れているような、ああいう感じのやつ。

席につくなり、すぐ目についたヨーグルトのパフェ的なものを注文、本当はコーヒーだけが飲みたかったので単品のものがあればそれにしたかったのだが、無いなら仕方がない。ドリンクバーを注文。(聞くところによると、地域の所得層によってドリンクバーの有無を分けているらしい…)


注文してしばらくメニューをぱらぱらと見てみる。他のファミレスに比べて高級志向なのは知っていたが、まさかここまでとは。普通に食べたいものだけを注文したら、すぐに5000円くらいいってしまいそうだ。ヨーグルトのパフェが700円くらいだったのが有難い。細客ですみません。

飲み物をとりに行く。遅い時間ということもあって店舗特製ブレンドコーヒーと銘打たれたポットは空っぽで、仕方なくドリンクバーマシンのてきとうなコーヒーのボタンを押し、どぼどぼ出てくるそれをカップで受け止める。飲み慣れたあの酸味がする。心なしか、よく知っているドリンクバーのコーヒーよりも熱く感じた。

さくらももこのエッセイを読みながらしばらくしていると運ばれてくるヨーグルトパフェ。これの美味しいこと!ひとくち食べた瞬間驚いて辺りを見回してしまい、挙句遠くの席のツーブロと目が合ってしまう始末。
カシスとバニラのアイスクリームと甘くないヨーグルトの絶妙なバランス。シロップづけの黄桃が中に入っており、懐かしい気持ちになった。
そしてまたしばらく本を読み、パフェをたべてコーヒーを飲み、優雅に時間を浪費したのちにやがてやってくる閉店時間。そうそう、これを待っていたのだ。



ーーー

ハイウェイを走る車のテールランプの光が、
無数の赤い光の帯となって、暗い夜の静寂(しじま)をながれてゆきます。
にぎわしいざわめきもやがて囁きとかわり、
赤い光の帯もいつしか1本、また1本と消えて
漆黒の闇が静かにあたりをつつんでゆきます。
ロイヤルの閉店の時間が参りました。
明日もコーヒーの香り、ロイヤルの香りを店内いっぱいに漂わせて、お客様をお待ちしております。

それでは、ドビュッシーの月の光とともに、お別れです。

〜♪


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完璧だ。時間が完成した。昔、中学生のころよく夜更かしして聴いていた深夜ラジオの“ジェットストリーム”を思い出す。透明感のある言葉選びが、ゆるやかな時間の流れの輪郭を明らかにして、まるで一日の終わりの寂しさを連れて明日への希望を抱かせてくれるような、素敵な詩だ…

あとロイヤルホストの一人称ってロイヤルなんだ…

会計をしていた大学生かなんかが「えっこんなアナウンス流れるの?!」と騒いでいてそれもまた良かった。

あーまた来たい…何度でもこの時間を繰り返し味わいたい…そう思いながら退店。

こんな時間にコーヒーを何杯も飲んだので案の定次の日は寝不足でしたとさ

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