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種まきマシン、デメテル

家庭菜園で作物を育てていて、つい種をまきすぎた作物が一度に順調に育ってしまい収穫しきれない、あるいは収穫したはよいが食べきれない、という経験はないでしょうか。期間をおいて計画的に種をまくことで順番に育ち、毎日ちょっとずつ収穫する、ということができればこのような残念な事態を防げるかもしれません。

私たちfarmtory-labは、Everyday Harvestingというコンセプトのもと、家庭菜園用に種まきを自動化する種まきマシンのプロトタイプを製作し、ギリシア神話における豊穣神・地母神からデメテル(Demeter)と命名しました。デメテルの製作過程と、11月のMaker Faire TaipeiへDemeterを出展したときの様子を以下にまとめます。

製作過程

私(satzz)中心に2名でだいたい週に3〜6時間程度(出展直前は連日でしたが)、製作の時間をとりました。

8月下旬、Fusion360でのコンセプトCG制作。同時にRaspberryPiでのモーター駆動、段ボールやダイソーで買える素材を使った機構検証を開始しました。

9月。上旬にMaker Faire Taipei2018への出展が決定。挙動を安定させるため、レーザーカッターと3Dプリンターを使って、カートリッジセレクタ機構の変更と検証をひたすら繰り返しました。

10月。筐体ができ、機構の変更が安定し、種を段々まけるようになってきたので、スライダ製作にうつりました。

11月上旬。Maker Faire Taipeiへ搬入。ちょっとした大荷物となりました。

当日のデモの様子。想定よりだいぶ派手に種をまいています。

日本の種は持ち込めないため、前日に台北駅地下街のスーパーでキヌアを調達しました。実際には一箇所にこんなに種をまくことはありませんが、日本語・英語での説明で見に来た人にアイデアを伝え、またfarmtory-labに興味をもってもらうことはできたのではないかと思います。子どもたちも動くものは夢中になって見ていました。

デモ中は、小型HDMIモニタとキーボード・マウスのみ接続して動かしていました。舞台裏の様子です。

機構

やや詳細になりますが、デメテルがプランターに種をまく仕組みは大きく3段階に別れます。

スライダーは、種がセットされたカートリッジセレクタを、下にセットされたプランターの上まで水平移動します。水平移動に使うラックギアとピニオンギアは、Fusion360のSpur Gearプラグインで設計し、レーザーカッターでMDFから切り出しました。ピニオンギアの駆動は連続回転サーボを使いましたが、目標位置に移動させたり停止させるためのDutyの制御が難しい(ひとまず、レールの端のスイッチが押される都度キャリブレーションし、モーター回転時間のみで何とか制御しています)ため、距離センサーを使うかステッピングモータに変更するなどの改善が必要そうです。

カートリッジセレクタは、まく種の入ったカートリッジをサーボモーターで選びます。見た目はガトリングガンのようでやや物々しいですが、底部の穴から放出するのは生命の源である種です。8本のカートリッジはストローと、3Dプリンターで出力した漏斗状のキャップで成っています。種のサイズに合わせてキャップを変えることで、カートリッジを振らない限りは種が出てこないようにするのが意図です。

さらに、カートリッジセレクタの穴の近くには振動モーターがついており、カートリッジ内の種に最後に振動を与えてカートリッジからプランターへ種を放出します。

制御

全体の制御にはRaspberry Pi 3 B+を使い、PythonプログラムでGPIOを読み書きしています。サーボモーター電源のみ別系統ですが、制御信号はドライバなどを使わずPiから直接出力しています。

将来の予定

今回の製作とデモではコンセプトを伝えることに成功しましたが、実際に築地インターネットハウスをはじめとした稼働を栽培計画に組み込んでいきたいと思います。そのために、種をまく機能を安定させ、種まきスケジュールの管理などもプロトタイピングし、並行で設計やプログラムを公開したいと考えています。

振り返り

私(satzz)は過去に趣味でH8マイコンやアルミ製筐体でのロボット製作に関わっていましたが、なかなか実動までもっていけず大変だった記憶があります。当時に比べて基盤(Raspberry Pi)・回路(ブレッドボード)・ハードウェア(3Dプリンタ・レーザーカッター)を含めてとれる選択肢が増え、試行錯誤がすばやく回せるようになったということを痛感しました。

ただ、実際に作り始めるとやはり個々の細かい機構のトラブルに長時間ハマりがちでした。Fab Academy卒業生であるmurasakiさんのアドバイスにより、足りない3つの駆動部や筐体を含めた全体を見ながらのIntegrationに早めに移り、ちゃんと形にもっていくことができました。さらに特にMaker Faire直前は足りないパーツの出力や製作、動作確認にもかなりの時間を割いてもらいました。ありがとうございました。

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