1-2. サウジのマクドナルドが男女別の理由

【3行まとめ】
・不倫や婚前交渉を未然に防ぐために、日常生活から男女の分離が徹底されている。また、運転、海外旅行、就職など、女性への様々な制限がある。さらに、映画や公共の場での音楽が禁止されており、娯楽が乏しい。

(写真は、男女別に仕切られたマックのカウンター。首都リヤドにて。)

・厳格な男女の分離 マクドナルドも男女別 
 イスラム教において、姦通(不倫、浮気、婚前交渉など)は、社会の秩序を乱すものとして、厳格に処罰されることとなっています。サウジにおいては、不倫や婚前交渉は死刑とされています。

 不倫や婚前交渉を未然に防ぐために、日常生活から男女の分離は徹底されています。マクドナルドのカウンターですら男女別であり、レストランの同じ空間で食事をするなどもってのほかです。レストランの空間は、男性専用と女性用(家族用)とに仕切りで区別されています。

 こうした男女の厳格な分離が、女性の社会進出を妨げています。企業が女性を雇う際には、パーティションで男女を別々の部屋におさめる必要があり、こうした設備のコストのため、企業はなかなか女性を雇おうとしません。

・女性への様々な制限
 コーランには、男性は女性の保護者であることを定めています 。こうした記述に由来し、サウジでは女性の様々な権利が制限されています。

 例えば、サウジにおいて、女性は運転免許を取得することができません。したがって、車以外に交通機関が発達していないサウジにおいて、企業が女性を雇う際には、通勤のタクシー代を負担する必要があり、これも女性の雇用コストの増加につながっています。政府は、各国からの批判を受け、2018年から女性への運転免許を発行する予定です。

 加えて、女性は公共の場で肌や頭髪を露出することが許されていません。アバヤという黒ずくめの衣装を着用することが義務付けられています。サウジ国内では、外国人女性も同様に着用する必要があります。

 さらに、女性はあらゆる面において、家長(父親や夫)の許可を必要とします。就職をする際にも、はたまた海外旅行をする際にも、男性の許可が必要とされています 。

 そして、男性は女性が人目にさらされることは好みません。したがって、スーパーやホテルの受付で女性が働くことに抵抗感があるようです。

 もっとも、近年では、アバヤ姿の女性がスーパーで働くようになったり、アバヤを着るとしても顔を覆わなくてもすむようになったりと、徐々に変わりつつあります。

 政府は、女性の活躍や就労に向けて、改革を行おうとしていますが、まだまだ道半ばです。

・ポルノは当然禁止
 「女性が見知らぬ男性に肌を見せるべきではない」というイスラム教の教えのため、ポルノも厳格に禁止されています。空港の所持品検査でポルノが見つかった場合、没収や罰金、国外追放などの厳しい処分が行われます。

 また、ポルノに関するインターネット検閲も徹底しており、わいせつな画像だけでなく、文章についてもサウジ国内では閲覧できないようになっています。

・映画や公共の場での音楽も禁止
 他に禁止されているものといえば、映画も禁止されています。サウジ国内には映画館がひとつもありません。

 また、公共の場での音楽の演奏も禁止されています。ショッピングモールやスーパーに行っても、音楽が全く流れておらず、しんとしているため、どこか物寂しい印象を受けます。

 映画や音楽については、コーランに明確に記載されているわけではなく、イスラム法学者の間でも議論が決着していません 。

 実際に、サウジ国内ではネットフリックスを観ることができますし、車内のスピーカーやヘッドホンで音楽を楽しんでいる人は大勢います。

 映画や音楽に眉をひそめる保守層と、これらを楽しむ進歩的な層との一進一退が続いており、線引きは非常にあいまいなものになっています。

 現政権では、サウジの娯楽を推進する方向で政策を進めており、サウジ国内に映画館を作る計画が持ち上がっているようですが、具体的な実現時期は未定となっています。

 また、サウジには人物画のような美術は、あまり発展しておりません。イスラム教においては偶像崇拝が禁止されているためです。

偶像崇拝の禁止との関係で、写真の目線にモザイクが入れられている。写真はRaziさんご提供。ジェッダのショッピングモールにて。

近年では、少しずつ肖像画の発展も見られる。サウジ国内のギャラリーにて。Raziさんご提供。

 そもそも、イスラム教において偶像崇拝が禁止されている理由は、①アッラーは肉体を持った存在ではなく全宇宙的なもので表現することが不可能、②アッラーのみを拝むべきであり偶像を拝むことはアッラーの絶対性を害する、ということなどが指摘されています。

 ここで、漫画やアニメも、ともすれば偶像にあてはまるので、偶像崇拝との関係が問題となります。ここも非常に線引きがあいまいなところで、イスラム法学者の間で漫画やアニメが許されるかどうか、いまだに結論はでておりません。

 ただ、実際の現状として、日本の漫画とアニメはサウジで非常に大きな人気を集めています。サウジの若者は、 「ナルト」「ワンピース」「キャプテンマジート(キャプテン翼のアラビア訳)」が大好きです。

(写真はショッピングモールの妖怪ウォッチ。ムービーとありますが、映画館はないので大きなスクリーンに投影します。ジバニャンはイスラム教の世界にも入り込めるのですね・・・恐るべき日本のアニメ。)


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連載 閉ざされた国 サウジアラビアをわかりやすく

2017年夏、サウジ政府において、政策コンサルタントとして勤務。現在、アメリカの公共政策大学院に在学。サウジを中心とした中東情勢について、初学者向けにわかりやすく説明。問合せ先→https://goo.gl/CekJHY
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コメント2件

ジッダ内の旧市街アルバラド[ البلد ]には古びた美術館があり、近年描かれたものも含め風景画や人物画が多数展示されています。従って、下記の文章は少し言い過ぎかもしれません。Twitterで写真を送りますね。 「また、サウジには人物画のような美術は一切発展しておりません。イスラム教においては偶像崇拝が禁止されているためです。」
Raziさん、貴重なお写真をご提供いただき本当にありがとうございました!本文を訂正して、写真を掲載させていただきました。ご指摘いただき大変助かります。
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