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さみしさのあまりスコットランド人の兄ちゃんの家に転がり込む

ひょんなことから、知り合ったばかりのスコットランド人の家に転がり込んでいる。
いまみたいにふと一人になって、4階のアパートの窓から曇り空をゆうゆうと飛ぶカモメをみていると、はて私はいったい何をしているのかなと思う。
テーブルにはスーパーで買った安いバラと、昨日の吸い殻と、ハンドクリームと、小銭とツナ缶と2つのウィスキーグラスがある。

スコットランドのアパートはうすら寒い。
床に転がっていた年季の入ったバスローブを勝手に借りて、なんとか寒さをしのいでいる。

ここに来る前まで、私は安ホステルに滞在していた。
二段ベッドの下の段で朝の早いバックパッカーたちを見送った後に、
のそのそと地下の台所に潜り込み卵がフライパンの上でゆっくりと色を変えていくのを見つめる。もう少ししたら火を止めて、半熟の黄身をパンにつけて食べよう。私の脳みそはそんなことで幸せになるくらい単純に出来上がっている。

ふと気がつくと、隣のコンロで背の高いフランス人の女の子が薄い薄いクレープを焼いていた。
Hiと簡単な挨拶を済ませて、私たちはなんとなく同じテーブルについてお互い寝癖のまま世間話をする。
彼女もまた、なんとなくグラスゴーにやってきてこれから仕事を探すのだと言っていた。ひとつ私と違うのは、もう家が決まっており友人もたくさんここにいるのだということだった。
このままじゃあといって二段ベッドに戻るには惜しいくらい天気が良かったので、私たちは歩いて30分くらいのところにある有名なグラスゴー大聖堂に行ってみることにした。
週末だったので、インドや中国からの観光客がわさわさといる中、でっかい教会のでっかいステンドグラスから燦々と入る光が妙に綺麗だった。

セリーヌという名の彼女は、さっと適当な布切れをバンダナのようにして髪をくくり、ただシンプルな白と黒の服に質のいいストールを巻いているだけなのだけど、ああやっぱりフランス人ってオシャレだなーと阿保面の私は無垢な憧れを抱く。

夕暮れのテラスで彼女とカクテルを飲んで、しばし笑っていたのだけど、
私はどうあがいても、さみしかった。

セリーヌと別れ、一人賑やかな街に取り残された私はとうとう

「街をひとりで歩いていたらたまらなく寂しい気持ちになっています」

と恥も外聞も捨てたもらったら困るメールランキング入り確実の文章を書きなぐり、ジョージに送った。

やさしい彼は、いまロンドンから来ている友人と呑んでいるから、よかったらおいでと連絡をくれた。
と、
ここで私は何を思ったか「オッケーじゃあ漫才ショーを見てから行くね」と「なんじゃい!」とひっくり返ってしまいそうなメールを返し近くのコメディクラブに入る。
気もそぞろのまま5ポンド程度の入場料を払い、若手のStand-Upコメディアンのショーをみる(ひとり漫才のようなもの)

なぜ素直にジョージらにすぐ合流しなかったのか謎だが、きっとわたしはひと笑いして憑き物を落としてから行きたかったのかもしれない。
弱ったままひとにすがりつくのは想像以上に勇気がいるのだと思った。

この日のコメディアンはひときわスコットランド訛りの激しい青年で、なぜか最前列に座ってしまったわたしは意味がわからないなりにリアクションを取らざるを得ない環境にくたびれ果てて外に出ると、すっかり約束の時間を過ぎていた。
急いでバス停に向かうも、やはりバスは来ない。

1時間も遅れてバーに到着すると、ジョージとその友人が私を迎えてくれた。昨日あったこと(ヤク中のにいちゃんに追い回されたこと)を話すと、彼はビールを奢ってくれた。そして「うちのソファでよかったらしばらく泊まってもいいよ」と彼は言う。

私はばかである。

自分からわざわざ危ない環境に身を落としておいて、ああイヤダイヤダと駄々をこねた挙句人のやさしさに漬け込んでダラダラ日々を過ごしている。

きっと私は彼がこういってくれるのを待っていたんじゃないだろうか。

こんな自分をほったらかしにして、私は笑ってビールを呑んでいる。
限りないばかである。



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mitchell

脚本を書いたり、ミュージックビデオを撮ったりしている/イギリスに引っ越しました

イギリスをさまよう女の記録

31歳無職女イギリスに引っ越しました。
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