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うしろあたまに秋をみる

駅のホームで毎日同じ人のうしろあたまを見ている。
えりあしだけひょろっとやや長いショートカットの女性。
私はいつも前から4人目くらいの位置で朝の急行列車を待っているのだけど、その人はいつも最前列にいる。
かれこれ、半年ほどその人のうしろ頭をわたしは見ている。

うすらオレンジ黄色い茶髪、おっと根本がどうも伸びてきたぞ、そろそろ染めどきだなあとか、えりあしがどうも肩につきそうだぞ、などさながら季節の草花をながめる老人のような心持ちである。

そろそろ剪定したい、なんて思っていたら週明け――薄らさし込む朝の光に照らされし彼女のうしろあたまは、少しだけ短く整備されていた。
色は、なんだかマロンクリーム的な感じになっている。

このひとの、えりあしがチョキンと切られておかっぱボブにでもなってしまった日には、私は果たして彼女を識別できるんだろうか。
あれ、さいきんいないな……なんて思って、私は彼女を永遠に見失ってしまうだろう。
私は彼女のうしろ頭を知っているだけであって、決して彼女のことを知っているわけではないのである。
それは決してさみしいことではなく、
私だったらどこかで誰かが私のうしろあたまに親しみを感じてくれていたらうれしいと思う。
うしろあたまに思いを馳せて、そっと我がうしろあたまを撫でる、
そこにひんやりと秋の空気がある。













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