宮下湯

上京銭湯日記。~第一回 巣鴨 宮下湯~

巣鴨駅南口から徒歩3分。コインランドリーの脇の階段から下に降りて入るこの銭湯は、マンションの地下にあるためそんなに目立つことはない。
けれど、僕の"ホームサウナ"は寝ても覚めてもここだけだ。

大学が近いこともあり、通った回数は50回は優に超える。おばあちゃんの原宿と言われる巣鴨だが、僕はこの街が好きだ。行きつけの銭湯も、行きつけの居酒屋も全部ここにある。作業できるカフェだってあるし、美味しいアジフライを食べれる定食屋さんもある。家電量販店や百貨店といったものはないけれど、この感じがなんか好きだ。

この銭湯に来るお客さんは"サウナー"ではなく地元の人たちばかり。
「地元の人が一緒の時間を過ごしている銭湯なんだな。」
銭湯だから感じたのかもしれないのだけれど、他の場所より温かみがある。番頭をしているおばちゃんと少し話をするのが行く時の楽しみだったりもする。
僕は地方出身だからそういう風に思うのかもしれないのだけれども、多分東京でもこういう無になれる場所を探していたのかもしれない。

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浴場には白湯とサウナと水風呂の3種類がある。定番だがどれも外れてはいけない。

白湯は少し熱めでバイブラと寝風呂と座風呂がある。ヒートポンプという機能を使い、空気中の温度でお湯を温めているため肌触りが柔らかくなるような工夫がされている。子供からお年寄りまで1日の疲れ癒すこの白湯は浸かっている人は心なしか皆いい顔をしている。思わず声を漏らしてしまうほどには気持ちいので行ってみたい方は是非。

僕も一応"サウナー"ではあるが、サウナーが好きな要素が全てあるかといったらそうではないのかもしれない。
サウナは110℃で昭和感溢れるガシガシ系。湿度はほぼゼロではないかと感じるほどで、サウナ初心者にはかなり苦しい気がする。5人が限界のサウナ室はテレビはなく砂時計で時間を計る。静寂に包まれている時もあれば、お隣さんとおしゃべりする時もある。サウナで初めましてをして、サウナで再開する。外では会っても気がつかないだろうけど、サウナだと気がつく。これが不思議でいい関係なのだ。
サウナの聖地フィンランドではサウナは教会と同じように過ごさなければいけないと言われているけれど、宮下湯はこのルールを当てはめてはいけない気がする。

水風呂は、地下天然水を使用しているため肌触りが本当によくリラックスできるのだ。(白湯にも使われています。)水温は16度ほどでカイジでいう「キンキンに冷えてやがる!!」という状態とまるで同じ。
15代目徳川将軍である慶喜のお屋敷があったとされるこの場所は、特に上質な水を引いているとのこと。何度もいうがこの水風呂が本当に気持ちよくて浸かりすぎてしまう。

整いゾーン(休憩ゾーン)がなく外気浴できるところもないけれど、僕はこの銭湯が好きだ。よく大学の友達と二人でくるのだけれど、この歳にしては渋すぎる楽しみ方を見つけてしまった。ここに来て平世志(ここも50回くらい行ってる大好きな居酒屋)に行くのが鉄板コース。

物理的にも、感情的にも"裸"になれるのは銭湯のいいところ。
あなたの毎日が少しだけ楽しくなる場所は巣鴨かもしれません。


執筆者 けいすけ