【インタビュー】私がApple製品にカバーをつけない理由―傷を愛せ。

子どもの頃から物を大事にする性格だという27歳女性Aさんにインタビュー。Apple製品にカバーをつけない意外な理由が明かされます。(取材・構成:西部湯瓜)

小学校の時から物持ちがよかったんです。同じものを他の子よりも長く使えるというか。

――どうして他の子と違って物持ちが良かったんですか?

わりと工夫していたんですよね。例えば教科書だったら、教科書のサイズごとに並べ替えたり、端っこを揃えた状態でカバンや机にしまうようにしていました。

――裁断面を揃えることで、ピンポイントで傷つくものを減らす効果があったというわけですね。

はい、教科書なんて普通の子は一年も使えば、破れたり、ボロボロになっていて。でも私の教科書はすごく綺麗なままでした。他の子だったら一週間くらいしか使っていないような状態で。学年が上がる度に思っていました。「綺麗なまま捨てるのもったいないなー」って。

――なんとなく毎年違和感を感じていたんですね。

それが何年も続いて、高校生になりました。高校二年生のときに、iPod nanoを買ったんです。とても欲しかったものだから、専用のケースも買って、大事に大事に使っていました。

――でも今は専用ケースに入っていないですよね?

買ってから5年くらい経ったときに、そろそろ壊れるだろうと思っていました。常に最新版のiPodが出ているし、そろそろこれも寿命かなって。そんな風に思ってケースから出してiPod nanoを直接手に取ってみたんです。鏡みたいになっている裏面はキラキラしてて新品みたいだったんですよね。それを見た時に思いました。「もうすぐ壊れて捨てるっていうのに、こんなに綺麗なら今まで大事に守ってきた意味がないな」って。

――教科書の時と同じですね。

そうなんです。それだったら、いっそのことボロボロになってくれた方が捨てやすかったのにって思いました。その日からカバーを外して裸の状態で使いはじめました。そしたら、使いやすさも上がってたんです。タッチパネルの上の透明なビニールが無いから、操作したときの反応もいいし。そのまま使い続けて、意外とそこから5年経った今でも、現役で使えています。さすがにちょくちょく傷は入っていますけど。

――(iPod現物を見ながら)たしかに、ところどころ傷が入っていますね。

でもそれが良いんです。手に馴染むし、「私のiPodだ」って感じがして愛着が湧きます。最初からカバーなんかつけて新品みたいな綺麗さをキープしようとしなくても良かったんですよ。そう気づいてからは、他のものも綺麗に使わなくてもいいやと思えてきて。

――スマホにもカバーしていないんですか?

スマホは落としちゃうこともあるし、壊れる率が高いから、カバーしています。しかも、今はみんなiPhoneユーザーだから、他のものと区別がつきやいように、派手なカバーをつけています。派手なカバーをつけると、さっき言った「自分のもの感」も生まれます。

――そういえば、そのトートバッグからMacBook Airがはみ出ているのが見えますけど、裸でカバンに突っ込んでいるんですか?持ち歩き用のソフトカバーもせずに?

滅多に外に持ち出さないので。でも今日来る途中に転んでしまって。

――えー。

転ぶ時に「PCが危ない!」と思って、とっさにMacBook Airを守りながらこけたんですけど。角っこが地面とぶつかって、少し欠けてしまいました。

――うわ、ほんとですね。でもこれがまた愛着に繋が...

繋がりません。これは後悔しています。