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第82回 国語教育全国大会を研究要項で自学する➁(2019年10月27日)

 毎年参加している日本国語教育学会の夏の全国大会ですが、今年は仕事の都合で参加できませんでした。
 残念に思っていたところ、毎年一緒に参加している友人が、研究要項を貸してくれました。公開授業やワークショップはもちろんその場にいないとなりませんが、基調提案とそれを受けてどのような実践報告等がなされているかを分析することはできると思いました。
そこで、今回からしばらく、大会の研究要項を自分で読んでいきたいと思って始めた連載の第2回目です。第1回目は以下をクリックしてご覧下さい。

 さて、毎年、全国大会にはテーマがあるのですが、今年は「豊かな言語生活を拓く国語教育の創造ー言葉による見方・考え方を働かせる単元学習-」でした。そのタイトルで、学会の研究部長である鳴島甫先生が基調提案をされています。
 この「言葉による見方・考え方」というのは、平成28年12月21日に、現行学習指導要領の基本方針を示した「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善及び必要な方策等について」が中央教育審議会「答申」として示したもので、その中の第五章「何が出来るようになるかー育成を目指す資質・能力ー」中の「三教科等を学ぶ意義の明確化」の中の「各教科の特質に応じた『『見方・考え方』」(33ページ)に解説について前回掲載しました。

 今回は、その中でも特に「国語科」では「言葉による見方・考え方」をどうとらえたらいいのか、鳴島先生も示された、「答申」の126ページを確認してみたいと思います。

○ 国語科は、様々な事物、経験、思い、考え等をどのように言葉で理解し、どのように 言葉で表現するか、という言葉を通じた理解や表現及びそこで用いられる言葉そのもの を学習対象とするという特質を有している。それは、様々な事象の内容を自然科学や社会科学等の視点から理解することを直接の学習目的とするものではないことを意味して いる。

○ 事物、経験、思い、考え等を言葉で理解したり表現したりする際には、対象と言葉、言葉と言葉の関係を、創造的・論理的思考、感性・情緒、他者とのコミュニケーション の側面から、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉え、その関係性を問い直して意味付けるといったことが行われており、そのことを通して、自分の思いや考えを形成し深めることが、国語科における重要な学びであると考えられる。

○ このため、自分の思いや考えを深めるため、対象と言葉、言葉と言葉の関係を、言葉 の意味、働き、使い方等に着目して捉え、その関係性を問い直して意味付けることを、 「言葉による見方・考え方」として整理することができる。

 「様々な事象の内容を自然科学や社会科学等の視点から理解することを直接の学習目的とするものではない」というのは、これまでの学会の全国大会でも、その他さまざまな国語科の研修の場面でも、研究発表者や講師の先生方が“ついやってしまうけれども、これではいけない”と戒められるところのものです。
 「様々な事物、経験、思い、考え等をどのように言葉で理解し、どのように 言葉で表現するか、という言葉を通じた理解や表現及びそこで用いられる言葉そのもの を学習対象とする」というこの大原則を外れない教材研究、授業実践が求められています。
 そして、国語科の「言葉による見方・考え方」とは、「自分の思いや考えを深めるため、対象と言葉、言葉と言葉の関係を、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉え、その関係性を問い直して意味付けること」であると述べられています。
 よって「事物、経験、思い、考え等を言葉で理解したり表現したりする際には、対象と言葉、言葉と言葉の関係を、創造的・論理的思考、感性・情緒、他者とのコミュニケーション の側面から、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉え、その関係性を問い直して意味付けるといったことが行われており、そのことを通して、自分の思いや考えを形成し深めること」という“言葉の役割”を十分に理解した「言語活動」が国語教育の場では重要になります。
 その「言語活動の充実」のための活動の「場」として国語単元学習の実践報告がされるのが、82回全国大会の目標だということです。
(つづく)


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