深海魚の如く①

私には3つだか4つ歳下の女友達がいる。
彼女の年齢さえ良く知らないけど、多分彼女も私の年齢を「3つだか4つ歳上」と思ってる。
彼女とは、10数年前に働いていた所で知り合った。
彼女は動物看護師さんで、私は事務。
動物病院と言う小さい空間だったので、顔を合わせる機会は多かったが、忙しくて話してる時間はそれほどなかった。

お昼にご飯を食べる時や、休憩時間、女の子たちは「ディズニーの〇〇楽しみだね!」「今度デートでディズニー行くんだ🎶」とディズニーが好きな子達が多かった事もあり、新しいイベントや、ライドの話で盛り上がっていた。
そんな中遂に、1人の女の子が「さわさん、ディズニー一緒に行きません?」と尋ねてきた。
何を隠そう私は…小さい頃に一度行った切りで、そこまで興味がなかった為やんわりお断りしていた。初めは「えー良いじゃないですかぁ!行きましょ!行ったらハマりますよぉ!」と熱心に誘ってくれていたが、断り続けていたので、段々お誘いもなくなり、お誘いの矛先は私ではなく彼女(K)に向かった。
いつものように、Kに1人の女の子が声をかけた。
どうやら連絡先を交換しようと言っているようだった。
Kは頑なに断っていた。
「職場で仲良しの子を探してるわけじゃないし、ディズニーは行かない。興味無いから。」
顔は笑っていたけど、本心を言っているのが解った。「面白い子だな」という気持ちから、私はKに興味を持つようになる。

「ねー、Kさん。一緒にどこか行きません?」とある日ふと尋ねてみる。
「えーー、そうですねぇ…」とか乗り気じゃないのがひと目でわかる🤣
でも私はKが大好きになってしまっていた。
そこから毎日、仕事で一緒の時はせっせと話しかけるようになっていた。
「どっか行こーよ。絶対楽しいから!!!」と。
異性でも同性でもキモイだろ、こんな誘い方。と思ったけど、私はKの事が何故か好きだったので、諦められず、どっか行こーよと誘う。
何度か誘う内、遂にKは「ディズニー以外なら」と。
私は嬉しくて、ちょっと踊ってたと思う。

で、どこへ行こう…
Kの事好きだけど、Kからしてみたら「この人やたら私を誘ってくるけど、そんなにもどこに行きたいんだ」って思っただろうし、なんかちょっとキモかっただろうな🤣

動物病院は木曜日が午後が休診になる為、思い切って「今日ランチ行こう!」と誘う。
「いいですよ。」と言われる。当日いきなり誘ったし、断られると思っていたので、何を食べるかなんて決めてない。
「じゃー何食べに行く?」と聞くと「え、決まってないんですか?誘ったのに?」と言って、Kが笑い出す。
「だって断られると思ってたもん。」と私。
食べたい物を2人で挙げていった。
「ベトナム料理」「ブラジル料理」「ペルー料理」「とにかくパクチー」「肉」「東南アジアの」
ここまで好きなお料理の方向性が一緒なのが凄く嬉しかった。
その日、初めてKと行ったのは近くのベトナム料理レストランだった。
その日から、毎週木曜日はKとベトナム料理を食べるのが習慣になった。
お互いのことなーーーんにも知らない2人は、何だか意気投合。
元々私は彼女が好きだったので、彼女と居るのがめっちゃ楽しくて、ずっと笑ってた。
毎週木曜日になると、何も言い合わなくても、ベトナム料理レストランに行くようになった。
そうこうしているうちに、話し足りなくなり、Kが突然言う。
「さわさん、うち来る?」と。

もちろん行った。
Kとは、何時間話しても話し足りなかった。
夕方にはKのおうちにいるワンコのお散歩に一緒について行く。
Kの家の庭で椅子に座って夜になるまで話す。

亭主関白な旦那から逃げる為に、女友達と逃避行する内に犯罪を犯すとか言うテルマ&ルイーズだったり、少年の亡骸を探し、線路の上で危機一髪のスタンド・バイ・ミーの様なスリリングでエキサイティングな事なんてなかったけど、何故かいつも2人で出掛けるようになっていた。
「よし!世界旅行しよ!」の一言から始まった世界料理の旅。
ペルー料理を食べにも行ったし、ブラジル料理も美味しかった。
インドネシアもタイも、トルコも。
ペルー料理が好き過ぎて同じレストランに毎週行ったし、ブラジル料理のフェジョンはKは苦手で私は大好きで、好みは全部一緒じゃないと解った。
とにかく時間を一緒に過ごしていた。
そんなんだから彼氏が出来ないんだよと、Kのお母さんは半分呆れていたけど、私が遊びに行くと何も聞かずにお夕飯を用意してくれた。
Kが珍しく「さわさん、クラブ行こう?」と誘ってきた。クラブなんて久しく行ってないな、踊れるかしら。今の流行りの曲なんて知らないし…そもそもKはどんな曲で踊るんだ?グループ魂と電気グルーヴしか聴かないのに、と思って着いて行ったら、数時間後には初対面の男性にサルサ踊らされてた事もある。
フェスに行こうぜと誘われ、数時間後には鑁阿寺(足利のお寺)で音楽に乗ってた事もある。
いくつかの恋も、いくつかの失恋も。
始まりも終わりもKがいた。
Kに彼氏が出来ると、1番最初に紹介してくれたし、私に彼氏が出来ると、3人で出掛けるなんて事も楽しかった。
私にはこう言う付き合いしか出来ないのだ。
「深く狭く」

深海魚位深い所で。
お互い「親友」とか言い合うのは嫌いなのでKの事を親友だと思っていないし、Kも私を親友と呼ばない。
お互いを紹介する時「アモーレ」と呼ぶ。
これは昔、私がイタリアの男性と少しお付き合いした事があった時の「イジリ」なんだけど、半分は本気で言ってる。
Kは私のアモーレなのだ。
ソウルメイトなんてカッコ良いもんじゃない。ちょっとダサいアモーレなんだよな。
Kは言う。
「私は100人の薄い友達より、さわさん1人が良い。」
この人も深海魚なんだ。
だからきっと心地良いんだ。


みんな思うだろう。
100人の友達と深く付き合えば良いじゃん。
それはそう。
そう言うのもあるかもしれない。

でも私はKが良い。
だからって他に友達付き合いが無いわけじゃない。
でも、友達100人分、それ以上かもしれない深さがあるKを大切に思っている。

久し振りにKに会って、沢山笑い合った夜に認めておきたかったから書き始めたけど、話が尽きないので、②に続く事にしよう。





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