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10万字の原稿を書くたった一つの冴えたやり方

8月4日の土曜日、さわ氏はこちらのイベントに参加した。

さわ氏は編集者である。慎みを知っている。

だからして、昨年もこちらのイベントへの登壇依頼を賜ったとき、「そもそも大した実績もないペーペーの自分が登壇しても参加費に見合った話なんかできんのではないか」と熟慮を重ねた末に辞退したのだが、今年も同じオファーを受けた際、恥知らずにも二つ返事でOKを出したのには相応の理由がある。

ノリだ。さわ氏は「なんかまあいいか」と思っちゃったのである。

さわ氏もいよいよ30歳という人生の大台を突破したことで慎みのセカンドステージに突入し、ニュータイプの慎みを体得した。だから、しばらくは自分の依頼にすべてOKを出してしまおうという心地でいた。

さりとて元来、公衆の面前にまろび出ることを忌避してきたさわ氏であるし、10分間も人前で、しかも一人で話をするなど人生初のことだったので、生来チキンハートの持ち主であるさわ氏は死ぬほど緊張していた。

そんな彼のトークテーマは

「誰でも今日から実践できる、10万字の原稿が書けるようになるたった一つの冴えたやり方」

というものだった。

おそらくほかの出演者は「編集者の目に留まる企画書の作り方」とか「売れるテーマの作り方」みたいなもので来ると思ったので、それとは違うベクトルで、本を出版したいだろう人たちの役に立つ(せめて参加費÷14の金額には見合いそうな)内容にしようという浅薄極まりない思考である。

さてその内容でスピーチ原稿を作り、フリップまで手作りして準備万端整えたさわ氏だが、当日になって主催者の口からとんでもない事実が発覚し、大いに狼狽する。


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