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私の人生を変えた小説5選

初めて本格的に書いたnoteである、「『小説』の価値」(https://note.mu/sawapple_7/n/n7752a6a29446)が計100スキを超えました…!ありがとうございます!!こんなにたくさんの反響をもらえるとは予想だにしていませんでした。
なんとこのnote、合計3000人近くの方に読んでいただけているようで。note公式ツイッターにも載せていただいて、今週のおすすめノートにも載せていただいて、本当に感無量です。まさか初めて書いたものがここまでたくさんの人に届くなんて思ってなかった。

自分の書いた文章を褒められるというのは、なによりも嬉しいものですね。私にとって「書く」という行為は、自分の心の奥底の、普段人にあまり見せないところを曝す行為であって、その分すごく不安になりながら公開しているので、良い反響があると本当に励みになります。

そのnoteでは、「小説は他人の人生を経験させてくれる存在である」と書きました。スキが100を超えた記念に、わたしが「人生を経験させてくれた」と感じた大切な小説を、5冊ほど紹介しようと思います! 新しく増えたフォロワーさんへの自己紹介も兼ねて。
基本的には根暗なので、あまりハッピーな話は読みません。暗めの失恋小説が多いです。てかそういう話しかない…?そういうの読んでうわあんつらいーって泣いてばっかりの人生です(笑)
なにか小説読みたいけどどれから読めばいいのかわからないな〜!という人の参考になれば幸いです。ネタバレはなるべくしないように努めます。


1.ノルウェイの森/村上春樹

言わずと知れた村上春樹の代表作。私にとってはもうバイブルとも言っていいほど読み返しているこの小説、なにが魅力って、「登場人物がみんなどこかしら歪んだり欠けたりしているのに、どこか身近にいそうなところ」なのではないかと思います。それが多くの人の共感を呼び、単行本文庫本合わせて1000万部以上売れるという結果に繋がったのではないかと。

この小説に出会ったのは、一昨年の夏。『ノルウェイの森』自体はずっと実家にあって、読んでみたいなぁと思っていたのだけれど、いい意味でも悪い意味でも有名な小説すぎて、なんだか手を出すのを憚られていたのです。しかしそんなときたまたま、仲のいい女の子が「とても素敵な小説だよ」と言ってくれて、意を決して読んでみることに。吸い込まれるみたいに小説の世界に落ちていって、2日で読み切ってしまいました。

この小説のテーマは、「哀しみ」です。生きていく上では避けられない、私たちを突如襲ってくる、どうしようもない哀しみ。

ちょうどこの時期の前後、精神的にすごくつらいできごとがあって。『ノルウェイの森』に描かれているどうにもならない生の哀しみが、その傷ついた心に呼応したのかもしれません。ひとつひとつの文が、心に染みていくようでした。

ここで、わたしの好きな、緑という登場人物の台詞をひとつご紹介。

「人生はビスケットの缶だと思えばいいのよ」
「ビスケットの缶にはいろんなビスケットがつまってて、好きなのと好きじゃないのがあるでしょ?それで先に好きなのどんどん食べちゃうと、あとあまり好きじゃないのばっかり残るわよね。
私、辛い事あるといつもそう思うのよ。今これやっとくと後になって楽になるって。人生はビスケットの缶なんだって」

この台詞に出会ったのが、先ほども述べた通り少ししんどい時期だったので、私はとても救われた気持ちになったのでした。あぁ、いまは辛いけれど、いつかは楽になれるのだろうな、と。真っ暗な井戸の底に沈んでいたわたしに、一筋の光が差した瞬間でした(井戸の比喩を見てニヤリとした皆さん、お友達になりましょう)。

『ノルウェイの森』、もはや、この作品に出会う前の自分がどうやってこの小説なしに生きていたのか思い出せないくらい、自分の根幹をなしている小説のひとつです。

村上春樹は結構好きで、とりわけ初期の短編の作品群が好きですね。「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」とかは、たった五ページなのに人生のエッセンスが詰まっていて、本当に魅力的な物語だと思います。


2.ナラタージュ/島本理生

「『小説』の価値」にも書いたように、わたしが初めて長い間その世界観から抜け出せなくなった小説でした。どういう出会いだったのか、詳しくはそちらのnoteをお読みください。(https://note.mu/sawapple_7/n/n7752a6a29446

この小説に描かれているのは恋愛だけではありません。人生において出会ってしまうどうしようもない「悪」、癒えることのない心の傷、生き続けることの残酷さ…それらを通して、「人生」とはいったい何なのか、この小説は、そういった普遍的な問いを私たちに投げかけてきます。その点では、『ノルウェイの森』についても似ているかもしれません。

留学先に持ってきそびれたので、お気に入りの台詞を紹介できないのが本当に残念…!私は基本的に読書をする際に、素敵だと感じた台詞や表現には付箋を貼るようにしているのですが、『ナラタージュ』はその習慣を始めたきっかけの本でした。付箋を貼ってふとした瞬間に読み返したくなってしまうくらい、繊細で美しい表現で溢れていたのです。何度も読み返したので、もう本屋さんでつけてもらったブックカバーも、だいぶ裂けてしまいました。

(ちなみに、この無地のブックカバーは、有隣堂書店さんのものです。全10色?くらいあって、それぞれの本に合わせて色を選ぶのが楽しくて、文庫本を買う際にはいつも有隣堂で買うようにしていました。)

島本理生の小説の魅力は、比喩表現の豊かさと、繊細な心情表現にあると思っています。他にも、『一千一秒の日々』『君が降る日』『週末は彼女たちのもの』などがお気に入り。あとは『恋のトビラ』というアンソロジーに収録されている、「初恋」という短編の物語、これもものすごく好き!ナラタージュと同じくらいには切なさに胸を打たれた話なので、島本さんの小説を読みたいなぁと思っている方には、絶対に読んでほしい物語のひとつです。

直木賞を受賞なさったと聞いて、本当に嬉しかった!


3.うたかた/吉本ばなな

人魚という名前の女の子が、生き別れの兄弟かもしれない嵐という男の子に出会って、恋に落ちていく物語です。

それでも嵐を好きになってから私は、恋というものを桜や花火のようだと思わなくなった。例えるならそこは、海の底だ。

開いて一ページ目にあるこの二文に、すっかり心を奪われてしまいました。恋を海の底に例えるそのセンスに震えました。透き通っていて、美しくて、それなのに悲しくて、上がってくることができない…。吉本ばななの美しすぎる恋愛観に圧倒された瞬間でした。

他にもう一つお気に入りなのが、この部分。

人を好きになることは本当にかなしい。かなしさのあまり、その他のいろんなかなしいことまで知ってしまう。果てがない。嵐がいても淋しい、いなくてももっと淋しい。いつか別の恋をするかもしれないことも、ごはんを食べるのも、散歩するのもみんなかなしい。これを全部 "嬉しい" に置き換えることができることも、ものすごい。

もう、すごくないですか、このフレーズ。読んでいるだけで胸がぎゅぅっと締め付けられてしまいます。

吉本ばななご本人は、この小説をあまり気に入ってないようですが、わたしはこの爽やかさもとても素敵だと思っています。私のお気に入りにしては珍しく、ハッピーエンドで終わる小説です。

個人的に、よしもとばななは、「心の傷とそこからの再生」というコンセプトの物語においては、右に出る作家さんはいないのではないかと思います。どんなに辛いことがあっても、静かに少しずつ、人は回復していくことができる。この世界には、思ったよりも素敵な出来事が、まだまだ溢れている。よしもとばななの小説を読むと、いつもいつも、そういった前向きで優しい気持ちになれるのです。

他の作品では、『ハゴロモ』『デッドエンドの思い出』「ムーンライト・シャドウ」(『キッチン』所収)などが好きです。


4.白いしるし/西加奈子

高校生のときに読んでみて、まったく魅力がわからず、むしろちょっと気持ち悪いくらいの感想を持った作品であったのに、大学に入ってから読み返したら、わかる、わかる…!と、グイグイ引き込まれ、ところどころ涙を流しながら、たった一日で読み切ってしまった小説。

小説の魅力は、読み返して感想が変わるところにもあると思います。物語自体は変わらないから、感想が変わったということは、自分が変わったということ。そうやって、自分の変化を確認できるのも、読書の魅力のひとつなのではないでしょうか。この作品も、10年後の自分が読んだら、また違う受け取り方をするのだろうな。

ちなみに内容について述べると、猪突猛進超絶怒号疾風怒濤の片想い小説、って感じです!疾風怒濤と形容したことからも分かる通り、『若きウェルテルの悩み』くらいの激しさを想像していただけると助かります。可愛らしい猫の表紙からは予想もつかないくらいのヘビーな恋愛感情が、これでもかとばかりに物語中に渦巻いています。誰もが底なしの恋の沼に溺れているお話です。

これも、留学先に持ってきたと思ったのに、なぜだか見当たらない…!台詞を紹介できないのがまたもや残念。

西加奈子の文章は、熱量がものすごくて、読んでいて大地震に巻き込まれたみたいな気持ちになるというか、心の奥底から揺さぶられる感じがしてとても好きです。『i』もとてもよかった。私もあんな文章を書ける人になりたい、と思わせてくれる作家さんの一人です。


5.風味絶佳/山田詠美

山田詠美はそれまで読んだことがなかったのですが、この小説をきっかけにハマってしまいました。まず、日本語が桁違いに美しい。谷崎潤一郎を彷彿とさせるような文学的世界観に、恍惚としてしまいます。
この『風味絶佳』は短編集なのですが、その中でもとりわけ表題作の「風味絶佳」、大人の不器用な恋を描いた「海の庭」がお気に入りです。
「滋養豊富、風味絶佳」とは、キャラメルのキャッチコピーのこと。これは、恋の風味をキャラメルになぞらえた物語なのです。主人公の志郎とそのおばあちゃん(通称:グランマ)の、それぞれの甘くてほろ苦い恋の行方はいかに。読み終わった後、いつもはっきりと舌にキャラメルの味が浮かんでくるので、山田詠美の文章力には驚かされるばかりです。

ちなみにこの「風味絶佳」、映画化もされていて、主人公の志郎を柳楽優弥、お相手の乃里子役を沢尻エリカが演じています。この乃里子が、結構あざと可愛いタイプの女の子で、物語中で主人公にこんなことを言うんですね。

「いやって言うのは、いいってことなんだよ」
「そうなの?」
「そうだよ。たったひとりにだけ、いやといいは同じ意味になるんだよ」

なんかもう、こんなこと言えちゃう女の子、凄すぎる。いやまあ確かにそうだけど、その通りなんだけど、私には絶対言えません。さすが山田詠美としか言いようがありません。



以上です!大好きな本を紹介するのって楽しいなー!

私にとって、本を読むということは心の薬のような存在です。落ち込んではいつも、言葉に救われる人生を送っています。これらの小説に出会わなければ、いまのわたしはいなかったと言っても、過言ではありません。

もしこの記事の評判が良ければ、お気に入りの本紹介第2弾、映画紹介や漫画紹介などもしたいなと思っています。ですので、気に入られた方がいらしたらぜひスキを押していただけると嬉しいです!

それでは。


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