Le maquillage, c'est l'arme


「お化粧って何のためにするんだろうね」

そんな会話が始まると、わたしはいつでも真っ先に、自分のためだよ、と言う。

「ありのまま」の自分を世界はなかなか愛してくれないから、
わかっているのにわたしはいとも容易く傷ついてしまうから、
それでも少しでも自分を好きでありたいから、
結局自分の中に潜むルッキズムに抗うことはできないから、

だから、今日もわたしはわたしの顔を愛を持って彩るのだ。
いわば、わたしにとってメイクは鎧だ、静かなる逆襲のための、盾であり矛なのだ。

「モテメイク」とか「愛されメイク」なんて言葉が今日も女性誌の表紙で踊っているけれど、そんなの詭弁でしかない、結局人は自分に自信を持つ人に惹かれるから、そうやって出会った誰かを、好きになってほしい誰かを魅了するために、私たちは堂々とした人間でありたいから、だから私たちは今日もメイクをするのだろう。


どんなに時間がなくたって、必ず唇だけは色を塗る。
最近の武器は、RMKのコンフォートブライトリッチの5番と、CHANELのルージュココフラッシュの97番。甘みを含む鮮やかなレッドオレンジと、情熱をたたえた赤ピンクのシアーリップ。
色味は当日の服装が赤みか青みかに合わせて選ぶ。
メイクだってファッションの一部なのだから、毎日替えてあげないと、ね。

唇が色づくだけで、生まれ変わったような気持ちになれるのはなぜだろう。
新しい口紅を買うだけで、新たな自分に出会えるのはなぜだろう。
ここぞというときに口紅を滑らせるだけで、最強の武器を手にしたような気持ちで挑めるのはなぜだろう。

だけど、「就職活動」では、口紅の色も制限されているんだってね。
わたしのとっておきの武器は、就職活動にはあまり「適切ではない」。

一番真剣に戦わなければならない局面で、最強になれる武器を取り上げられて、わたしはどう戦えばいいのだろう。


「受けがいい」色のリップを塗ったって、それは最適な武器ではあっても、最強の武器ではない。たとえ手にしたってわたしはうまく身体を動かすことができずに、あっという間に倒されてしまう。

わたしは今、メイクに代わる力を与えてくれる武器を探している。けれど、やはりあの二本の口紅を超える何かには出会える気が到底していない。

もしかしたら、武器を増やすための旅をすることが、「就職活動」の意義なのかもしれないね。

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