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【Web3書籍紹介】『テクノロジーが予測する未来』(SB新書)

本の情報

書名:『テクノロジーが予測する未来 Web3、メタバース、NFTで社会はこうなる』
著者名:伊藤穰一
出版社:SBクリエイティブ株式会社
ISBN:978-4815616465

https://amzn.to/3RaD3rT

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こういう人にオススメ!

  • インターネットの生き証人的な立場からの、広範かつ俯瞰した見方が欲しい人

  • 現実がどうかということよりも、未来がどうなっていくかの参考意見を聞きたい人

  • 産官学に関わる仕事をしていて、デジタル庁有識者会議「デジタル社会構想会議」メンバーの思想や哲学に触れておかなければ仕事にならない、という人

総評

 Web3、メタバース、NFTと、世を騒がせている言葉は多いわりに、どれも雲を掴むような話が多い。本書は、雲にはこういう形の掴み方があるということを、産官学それぞれで数々の重役を務めた著者の言葉で紡いだものである。

 とくに序章、第3章、第4章、第6章は豊富な知識と経験に裏付けされているので、どのような未来が来るのか、という書籍タイトルからの読者の期待を素直に叶えてくれるものと思う。

 逆に、第1章(DAO)、第2章(NFT)、第5章(ガバナンスとクリプトエコノミー)などは、一般論に寄っていて、独自の視点というよりは「わかりやすい言葉で語りなおして若干の提案を加えた」という向きが強い。

 これはおそらく、社会に対して革新的なソリューションを提供できている技術や手法のあるものと、そうではない段階のものがあったときに、後者を「さもあるかのように」語るのは誠実ではないと考えているのがにじみ出ているのではないだろうか。

 例えば、DAOによって従来の会社組織が行っていた煩雑な登記や事務や雇用はスマートコントラクトに置き換わると理解はできても、おそらく大半の読者は「でも雇用って、面接したり、履歴書を読み込んだり、給料を決めたり、福利厚生を用意したり、雇用保険に加入したり色々なことがありますよね? 全部DAOやトークンの仕組みでできるわけではないですよね?」で思考が止まってしまうと思う。

 それは非中央集権的な組織と表現されたときに思い浮かぶ組織運用にまつわる面倒くさいあれこれが個別にスマートコントラクトで書かれ、DAOにて運用された実例が国内には無いからだ。「DAO上のアプリケーションとして実装されればできる(はずだ)」の域を出ない。

 本書は、あくまでそういう将来が予測でき、そのために思考を柔軟に変革させていくきっかけを得られることが重視されているので、この引っかかりがちな「理解はできるが納得はできない」ポイントを気にする読者には向いていないと言えるだろう。

 歯に衣を着せずに言えば、本書に実践的な内容を求めてしまうとかなりの物足りなさがある、ということになる。もちろん、帯にも書かれている「破壊的ゲームチェンジに備えるヒント」としてのコンセプトは充分に達成されており、物足りないと思った先に読者が自らアクションをとることが肝要である。本書の冒頭で提示される、テクノロジーへの「リテラシー」と「ビジョン」については、これをきっかけとして、さらに深めていく必要がある。

 その視点、割り切りを持って読み直すと、確かに、DAOやNFTについては、著者の持つ豊富なアイディアからの提案はされているが、読者自身の未来とどう地続きにするかは、読者が考えたり、さらに他の書籍を手に取るか検索などして知らなければならない。

 余談だが、メタバース関連書籍は必ずと言っていいほどSF小説『スノウ・クラッシュ』を「メタバースという用語が初めて使われた作品」として紹介するのだが、そういう「情報」を記しているだけで、それ以上の噛み砕きが一切無いものがほとんどである。

 しかし、本書の著者は『スノウ・クラッシュ』の小説家ニール・スティーブンスンと友人ということで、小説で描かれた概念を具体的にWeb3やメタバースによって実現される世界と照らしている箇所があり、SF小説で描かれた世界がメタバースとして目の前にたち現れたのだという感動を伝えている。

 そういったことも含めて、インターネットだけでなく学術や社会、SFにも精通した著者による、誠実な、騒ぎ立てることのない未来予測ということができるだろう。この本を読んでWeb3やNFTへの「わからなさ」が氷解できたならば、他の書籍をあたって掘り下げていけばよいだろう。最初に読みたい入門書。

主な章の紹介

 詳細な解説書というよりは、網羅的な入門書であるので、イチオシの章のみ「こういうことが書いてある」というポイントを紹介する。

序章 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる

  • Webの変革の歴史を「誰をディスラプトしたのか」=「ひっくり返した相手」から比較するという視点で、黎明期から「eコマース」「ポータルサイト」「SNS」「CGM」といった重要ポイントを押さえながら説明。

  • Web3の特徴として「分散」「プロトコル」を挙げ、プロトコルレイヤーとアプリケーションレイヤーに分け、プロトコルレイヤーが厚くなることのメリット/デメリットを論じ、未来にどのようなことが起こるかを見る。

  • ビットコインやNFTに代表されるクリプトエコノミーを筆頭に、Web3においてトークンが行き交う世界を定義、ガバナンストークンとDAOによるエコシステムについて網羅するとともに、コミュニティの在り方を視点に据え、Web1.0、Web2.0、Web3の流れの中でできることが増えていることを説く。

  • メタバースをVRに縛られない広義の仮想空間そして「何らかの価値の交換が行われている空間」と定義。

  • 来るべきWeb3時代に社会変革につながるエネルギーを感じるとともに、可能性の域を出ていない現状については、これからの未来は我々で決めることであるとしつつ、テクノロジーを活用したよりフェアで平等で持続可能な社会へと大きなパラダイムシフトが起こっていくと予測する。

第3章 アイデンティティ

  • 序章での定義を起点に、メタバースの重要な点として「多様性」を挙げ、性別や人種、障がいの有無などの区別なく守られることが重要と説く。

  • 人々にとって、みずからの身体性はアイデンティティの構成要素であるとしつつ、それによってまた縛られているほか、ニューロダイバーシティ(脳神経の多様性)の例からコミュニケーションとしても現実世界は不平等であることを挙げ、そこからの解放に対してテクノロジー的な基盤は十分整っている。

  • メタバースはプラットフォームだが、Web3とくにブロックチェーン技術、NFTによって1つのプラットフォームに縛られずに自身のアバターやそこで取引し入手したものをも自由に移動できるとする。

  • 半面、旧態依然としたWeb2.0的な、所有の主体をユーザーに置かないプラットフォームを指向する人々もいる。

  • メタバースでは、複数のアイデンティティを場ごとに使い分けるのが簡単にでき、その場のコンテクストに必要な情報だけをアイデンティティに紐づけること、アイデンティティ・マネジメントも可能となる。

(以上)



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