甘い醤油のはなし。

宮崎の飯はうまい。

ひいき目なしにうまい。

牛も豚も鳥も魚も野菜もうまい。

何を食ってもうまい。


だが醤油、お前だけは別だ。


宮崎の醤油は、なぜか甘いのである。

甘みが強めの醤油なんてレベルじゃない。

明らかに甘い。

この甘い醤油が、どうにも馴染めないのである。


甘い醤油改め「あいつ」は主に、刺身を食べるときに現れる。

あいつは、新鮮な刺身を見事に甘くしてくれる。

刺身を食べるときとは、すなわち、酒を飲むときである。

酒を飲むときに甘いものはいらないのである。


たいていの居酒屋では、あいつと普通の醤油がどちらも置いてあるので問題ない。

普通の醤油でいただくまでだ。

が、ときどき、醤油は置いてなくて、刺身と一緒にあいつが出てくる場合がある。

これが困る。


どうしよう、普通の醤油をくださいというべきか。

いや、大将があいつを大好きだったら、どうする。

宮崎の新参者が、大将の好みを否定して良いものか。

いや、でもやっぱり普通の醤油で食べたい。

いや待て、大将の実家があいつを作っていたら、どうする。

大将の生い立ちまで否定してしまうではないか。

ええい、ままよ!


結局、あいつで刺身を食べている自分がいるのである。

いつか、あいつに馴染める日は来るのだろうか。

そのときこそ私は、真の宮崎県民になれるのかもしれない。


そして、あいつを愛する全ての宮崎の皆様、長々と申し訳ありませんでした。

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