持続可能な社会って何?を問うことからより良い社会を目指す学び場を開く 松尾沙織さん

渋谷区でSDGs協会を発足し、持続可能な世界の実現に向けて活動するSDGsライターの松尾沙織さんにお話しを伺ってきました。

松尾沙織さんのプロフィール
出身地:東京都武蔵野市
活動地域:東京都
職業:SDGsライター/ダイベストメントコミュニケーター
経歴:1984年 東京都武蔵野市生まれ。2011年の震災をきっかけに、当時の働き方や社会の持続可能性に疑問を持ち、働いていたアパレル企業を5年で退社。「ソーシャルデザイン」という言葉に出会い、NPO法人グリーンズにてライターインターンを経て、編集学校を卒業。現在はフリーランスのライターとして、さまざまなメディアで「SDGs」や「サステナビリティ」を紹介する記事を執筆他、登壇、SDGs講座コーディネート、学びの場「ACT SDGs」を主宰。また、「ダイベストメントコミュニケーター」として気候変動の問題を広める活動をしている。

サステナブルな経済の見える化と
渋谷区SDGs協会

Q.どんな夢やビジョンを描いていますか ?

松尾さん(以下敬称略):私は東京生まれなのですが、いろんなものは揃うけれど、地方や他国に資源を依存していて「東京は実は貧弱なのかもしれない」と感じていました。しかし、よく見みれば東京も自給している地域やものづくりで丁寧に紡がれてきたものがあります。夢の一つは、ここ東京でもサステナブルな経済を見える化したり、つくっていきたい。

もう一つは、まず足元である今住んでいる渋谷で地元のつながりをつくっていくこと。先日何人かで渋谷区SDGs協会を立ち上げました。そこに集う人たちと「持続可能性とは何か」「消費がメインの渋谷でそれを変えていくのにどんなことができるか」を一緒に考えていきたいと思っています。


暮らしの中で"命をつなぐ”
一つひとつの選択を丁寧に

Q.目標や計画などがあれば教えてください 

松尾:この1年間で東京都内に古くから守られているもの、例えば伝統文化や農業など、次世代に残したいものを顕在化、見える化していきたいと思っています。

4月にはアースデイ東京の事務局をやらせて頂き、都内の事業者さんとTシャツを作ったり洗剤を作ってみようと話したり、小さくではありますが衣食住で東京の経済のつながりをつくることにチャレンジしました。

記者:素晴らしいですね。活動の原動力はどこにあるんですか?

松尾:私自身がこの地球上に生まれて、生を受けているという理由を考えたときに、シンプルに「命をつなぐこと」だと思っているんです。

そこに立ち返ったときに、日々の暮らしや活動も未来世代につながっていると思って、自分でできることを探して行動していけるようにしています。

一人の小さなアクションも大勢がやれば大きなパワーになります。一つひとつの選択を丁寧にして、未来世代に迷惑をかけない選択をすることが私たちの責任だと思っています。だからこそ、すぐに行動に移す。そのために生きている。そんな感じです。

個人の学びと本質的な実践を促す
対話の場づくり

記者:学びの場についても教えていただけますか ?

松尾:ライターとして記事を書くことをやってきたのですが、コミュニケーションが一方通行になることが多くて、もっとみなさんと一緒に対話や場づくりをしていきたいと思いました。

あるとき、学びの場で子どもたちと一緒になることがあって自然環境が被害を受けていることを伝えるために、砂漠化が進んでいること、海のマイクロプラスチック汚染のことなどを例にあげて話すと、反応した子どもたちが翌日すぐにゴミ拾いをして行動で表現をしたんです。

一人だけの行動でも、話すこと・行動すること・見せることは大きな影響を及ぼすことをそこで実感しました。だからこそ、一挙手一投足を大事にしたいと思っています。

記者:子どもたちは本当に反応が早いですね。私たち大人の動きを無意識に深く察しているのを私も感じて驚かされることがあります。その他の活動についてはどんなことをされていますか?

松尾:他にはミス日本事務局と日本のサステナビリティを体現するような女性を育てるプロジェクトをご一緒したり、曹洞宗の方とご一緒して子ども向けのSDGsマンガの作成をしたりしています。

それからSDGsの情報発信グループ"ACT SDGs"という1,600人くらいの方が登録しているグループを運営していて、ニュース記事をキュレートしたりSDGsの勉強会を開催したりしています。ここは、一個人としての参加を大事にしていて、今後は個人のエンパワーメントにフォーカスをあて純粋な気持ちを表現したり相談できたりする場になったらいいなと思っています。

これからの時代は組織に所属している個人というよりは、問題が深刻化している時代だからこそ、解決するために組織という枠組みを使うという視点になると思っています。個人が本質的に必要な選択をしなければ、気候変動解決や食糧危機に間に合わないのではないかという危機感を感じているから、この活動をしています。

ファッション業界からSDGsへ
〜問題意識と東日本大震災を転機に〜

Q.今の活動に至ったきっかけや出会いなどを教えてください。

松尾:ライターになる前はアパレル企業に新卒で入って働いていました。

祖母が裁縫好きで、その横でお洋服をアップサイクルしたり古着を解体して縫いなおしたりしていて、その流れで大学も服飾学科に通って、ファッション業界を選びました。

転職をした理由は仕事をする中で、資源の循環がうまくいっていないことに問題を感じて悶々としたことや働き方に疑問を持ったのがきっかけでした。なんでもっとニーズからお洋服を作らないんだろうというのをいつも考えていました。

記者:シーズンごとに新しいデザインの商品が出ますから、売れ残る商品も大量にあるというわけですよね?

松尾:そうなんです。私がいた会社は少ない方でしたが、お店でセール品になってモミクシャになりながら売られる洋服たちを見て、いつも悲しい気持ちになっていました。

営業部に異動してしばらくして体調を崩したんです。お医者さんに行っても「あなたは健康ですよ」と言われましたが、自分としては"健康でない"  し、"やる気がでない"。そんなときに本屋さんにふらっと立ち寄って出会った本が、服部みれいさんという方が書かれた著書『新しい自分になる本』(アスペクト出版)でした。 

服部さんも大腸の病気を患い、元気を取り戻すためにホリスティックな方法を試されてたんですね。言葉遣いや意識、呼吸、それこそ今注目されている瞑想や食事など、自分自身と向き合う方法をその本からたくさん教えてもらいました。食に関しても、それまでは遺伝子組み換えや農薬などまったく知らなくて、なんでこんなに大事なことを親やメディアは教えてくれないんだろうという憤りもそこで感じました。それで健康から食、環境問題へと広がっていきました。自分はそれまで親やメディアでつくられた価値観のなかでしか生きていなかったんだとそのとき気づかされたんです。

松尾:そんなことがあった矢先、東日本大震災がありました。大きな被害を目の当たりにして、もっと人の暮らしに役立つ仕事がしたいと思ったんですね。そこでいろいろ調べていくなかで「ソーシャルデザイン」という言葉に出会いました。その言葉がずっと引っかかっていて、そこから行き着いたのが、その言葉を広めたことに一躍を担ったNPO団体だったんです。そこから団体が持つメディアのライター・インターンに応募して編集学校に通いながらライターになりました。

記者:大きな転換ですね。

松尾:はい。震災によって福島ではたくさんの命が失われ、原発事故で苦しんでいる方がたくさんいるのに対して、原発のエネルギーを使っている東京はほとんど無傷。そのことに気持ち悪さを感じました。東京にいる私たちは、もっと自分たちでエネルギーを作る責任があるんじゃないかと思ったんです。インフラが途絶えた時には、食やそれに関わる農家さんの存在の大切さにも気づかされました。そこから農業を勉強し始め、家の近くに自然栽培の実践塾があって通うようになったんです。そのとき、自分たちの暮らしを自らつくる必要性をものすごく強く感じました。

記者:農業の勉強も始められたのですね。問題意識と行動が本当に連なっていらっしゃる。

松尾:問題意識として、問題同士のつながりがわかるものがあまりないなと感じていました。例えば、本来はファッションもコットン農業につながりますし、そこで児童労働や環境汚染が起きている問題があるにもかかわらず、業界で働いている人には見えづらい状況があります。多角的俯瞰的に問題を捉えることが必要で、そこから根本原因を見つけて根本的に解決をしないと、結局また問題が出てきてしまうし、持続可能な仕組みとして続いていかないのではと思いました。

そういった全体性やつながりを発信したいと思って、まちづくりや持続可能性に関する記事を書くようになりました。そして2016年のはじめ頃にSDGsに出会って、これだ!って思ったんです。社会や世界の全体の問題を見える化しているのがSDGs。今では、それを広めていく活動をライフワークの一つにしています。


"買い支えること"
持続可能な社会の実現は地産地消から

記者:ご自身の普段の生活の中で気をつけていらっしゃることがありますか?

松尾:東京の資源循環と持続可能性を自分でまずは実践しようと思って、極力東京のもの、自然栽培や無農薬のものを食べ、東京のコスメを使うことにこだわっています。極力地球に負担をかけずに生きたいと思っています。そのために地産地消を心がけていますし、最近では住んでいる近所のコミュニティ農園にも参加しています。

記者:徹底されていますね。

松尾:自分がやってうまくできなければ、人もできないと思うからです。それにいくら問題を発信しても説得力にかけるので、人は聞いてくれないのではないかと思ったんです。それに加え、自然や生態系と調和することを考えながら、そういった暮らしや未来を一緒に目指せる人たちを、買い支えていくことがまず持続可能な社会の実現には大事だと思っています。

記者:購買活動は買い支えていくという循環システムに貢献するイメージなんですね。

松尾:はい。ここまでこだわっているのは、ある自然栽培の農家さんに会いに行ったことがきっかけでした。化学物質過敏症のご家族がいて、その方はその農家さんがつくったものしか食べられない。その境地を想像したときに、そういった方が生き生き暮らすことができるように、まず自分が市場を支えることが大事だと思いました。そのとき、社会的に弱い存在をつくってしまっている今の社会構造や社会意識が根底にあると感じて、食に関する記事も書くようになりました。

記者:人や地域経済を支えたいと願う心が今の活動の原動力になっているように感じました。小さい頃からなんでしょうか。

松尾:そうですね。小さい頃から世話焼きだったり、人に何かをプレゼントするのが好きだったり、有意義なことにお金を使いたいという意識はありました。母がアフリカの子どもへの募金箱を家に置いたり、父がものを大切に使うタイプだったので、そういうところからきているんじゃないかなと自分では思っています。後は長女だからですかね。


考え続けることをやめない

Q.読者の皆さまにメッセージをお願いいたします。

松尾:SDGsの考え方や内容はすごく大事なことだと思います。ただ、なんでもそうなのですが、言葉に踊らされずに「本質的な豊かさって何?」「持続性って何?」と向き合うことや考え続けることが大事なのではないかなと思っています。これを読んでいる皆さんにも、ぜひ向き合っていただけたら嬉しいです。

記者:ありがとうございます。


松尾沙織さんの詳しい情報はこちらです。

 記事一覧 松尾沙織
ーーSDGsは人類の生存戦略であり、企業の生存戦略でもある。目標から逆算する「バックキャスティング」で持続可能な企業を実現。
2030年の世界のために、日本企業には何ができる? SDGsについて、そろそろ本気で語り合おう
https://miraimedia.asahi.com/cafe/japanese-company/

ーーアイデアソンで子どもたちの自分ごと化を促進。子どもたちの柔軟な発想が企業のヒントにも。食べ残しから、開発途上国に必要な新しい仕事まで。親子でともに考える地球のみらいは?
https://miraimedia.asahi.com/cafe/parent-and-child

ーー大人の学び場にも有効、保育園の場づくりから学ぶ、これからの新しい教育。園児同士がディスカッション?茶々保育園グループが掲げる「クリエイティブ教育」と「オトナな保育園」
http://miraimedia.asahi.com/sdgs2030/chach

ーーひとりでもすぐにでもできるSDGsアクションと、地球環境、生物、社会、地域、みんなが幸せになる経済のあり方。未来社会への投資 人や地域、社会を思うセレクトショップ『エシカルペイフォワード』
https://miraimedia.asahi.com/sdgs2030/ethical-payfoward

ーー世界100か国以上から1,000人のミレニアル世代が集まるSDGsイノベーションラボとデンマークのサステナビリティ の関係とは。
SDGs達成度世界2位の国、デンマークに学ぶサステナビリティhttps://miraimedia.asahi.com/sdgs2030/
unleash


【編集後記】

インタビューをさせて頂きました澤田と稲垣です。淡々とお話しされる松尾さんの一言ひとことには、沢山の方々との深い交流が描かれていて、一つひとつの出会いを本当に丁寧にされていることが伺えました。編集においてもその姿勢は変わらず、最後の最後まで妥協せず、言葉を大切に"伝えること"をされる松尾さんに私はライターとしての心得を教えて頂きました。自然の循環と経済の循環が調和し、持続可能な社会の実現を共につくっていきたいと思わされる出会いでした。心から感謝します。ありがとうございました。


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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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さわゆう

20代で社会教育と音楽療法の実践をし、尊厳教育に着眼しているnTechに出会う。それ以降、尊厳をテーマにした場づくり、コミュニティづくりに積極的に参加。夢は、世界一斉に平和を歓喜する大合唱をすること、創ること。

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