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別れの挨拶


知らないうちに会わなくなった人がいる一方、会わなくなるのがわかっていながら挨拶もしなかった人もたくさんいる。

クリニックに毎日のように電車で通うようになって、それももう終わる。

毎朝の決まった車輌で乗り合わせるうちに顔を覚えた人もいる。

高校生の頃にも電車通学をしていたからわかる。そういうことはある。

向こうもぼくの顔を覚えているかもしれない。

わざわざそういった人たちに、ぼく、この電車に乗るのは今日が最後なんです、などと言わない。

いなくなった人のことはあとで思い出す。そういえば最近顔を見ないな。ぼくがそうであるように。

この短い間にさえいつの間にか見なくなった人がいる。

帰る前に頻繁に立ち寄っていた駅ビルのコーヒーチェーン。時間帯でだいたい店員さんは決まっている。その顔を覚える。相手はどうだろうか

ガソリンスタンドでバイトをしていた頃、意外とお客さんの顔は覚えるということがわかった。全員とはいかないが。

いつか、会話は交わさなくともそういった人たちとの別れもくる。

そうやって生活は前へと移動していく。時間が直線的に進むのなら。


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