感情的なゴーン擁護論を排す

海外の論調を含め、感情的なゴーン擁護論と東京地検へのバッシングが起きている。特に司法の現場を知らない海外メディアの評論家的な「日本劣等国論」が目につくので、冷静な整理をしておきたい。

強欲な(greedy)経営者はそれはそれでいい。単に堂々と高額報酬を受け取ればいい。それをヤミ報酬にしたり、フリンジベネフィットに仮装したかどうかが問題の核だ。

ヤミ報酬が金商法の開示義務の対象になっていれば、一発アウトで金商法違反。そうでない場合は、illegalに水面下で報酬をわたくししようとした故意があるので、商法の特別背任、横領などの刑法犯に触れうる。ここの立証は若干手間を取るが立件は不可能ではない。さらに、最終的に、「たまり」と呼ばれる現金など財的価値がゴーンサイドに残っていて、それについて所得税が課税・納税がなされていなければ脱税であり所得税法違反。数十億円規模の巨額脱税は国家秩序を害するので、確実に実刑となる。

立証の難しさ云々だが、司法取引がなされていることの実相をきちんと把握すべき。司法取引の際の供述は「共犯者の自白」といって、法的証拠能力として最強。ここがミソ。共犯者の自白の法理をわきまえずに、立件が難しいとかの議論は無知かわざと触れないようにしているとしか思えない。刑事訴訟法は英米法の流れを踏まえているので、そこいらあたりの海外メディアは「きちんと勉強して!」となる。

さらに、「ロッキード事件の時のように、政府間で司法協議があるはずなのに…」とかいった妄想があるが、日米には安保条約があり、米従属的な側面が当時は強かった。フランスとの間に、いったいどこに従属的に対応しなければならない関係があるのか。さらに、ロッキード事件では米国人の刑事訴追を免れることを日本の司法当局が確約したという構図で、今回とは全く逆。その辺の理解のないまま、「政府間協議」をあげつらうのは井戸端会議の域を出ない水準。そういった暴論はきちんとファクトをベースに退けていけばいい。

いずれにしても、会社の巨額のカネを経営トップが何年にもわたって勝手にわたくししていたのが今回の事件の本質。ここを犯罪に問わず、あるいは課税しなければ、国家主権が蹂躙されることになる。これは日本でも米国でも、フランスであろうと、どの国でも同じ。そのうえ、租税主権を害する行為には国家は断固として立ち向かうのが公理。もちろん、捜査拘留が長期に及ぶといった批判には人権上こたえなければならない。証拠隠滅の恐れなどないと見極めがついた時点で拘束を伴わない取り調べに切り替え、ただし、起訴までは日本国外への出国を禁じる決定を裁判所から得ればいいだけだ。

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