千秋楽まであと3日[有田]

お久しぶりです、になってしまいました。「明日から劇場入りです!」とか「いよいよ明日から公演です!」とかを書こうとしていたのに。日記を続けられる人間になりたいと、3日坊主になる度に思っています。

劇団晴天 第十回本公演『遠くまで来たんだ』/『朝をつれてこい』残すところ3日です。
劇場入りしてから場当たり(音響さんや照明さんたちとタイミングを確認しつつ進める通し)、ゲネプロ(本番同然に通すリハーサル)を経て、5月18日に公演初日を迎えました。
稽古場からずっと観てきた作品が、わたしがどんどん好きになっていった作品が、出演者の方々、そしてスタッフさんによって、きちんとお客様へ届けられたのだと終演後の拍手やお客様の表情を見て実感しました。本当にありがとうございます。

稽古場でも感じたこと。1人が何か変わるとほかの人にもその変化が伝播してまた何かが変わる。その、人と人が関係しあって影響しあう様子を見ていて、ああ目の前に人間がいるなあと思う。
会社で映像制作をしていたときは、なかなかそういうことをひしと感じることがなかったんです。1度きり、ノンストップ、ということがあまりないからかもしれない。もちろん映像は映像のおもしろさや、すごい!と震えるような瞬間もあるんだけど。
でも目の前に人がいて、その人たちがお互いの言動にリアクションを重ねつづけて場面が進んでいくのを好きに見聞きしていると、当たり前の人間らしさというのか、それを感じてとても愛おしくなります。
劇場に入ってからはそこにさらに美術や音や光が加わって。そういう要素からも変化の波及が起きているように感じます。

『遠くまで来たんだ』のあるシーンで、三浦葵さん演じる相川光が発する言葉に、その愛おしさはグッと増幅します。目の前にその言葉を話している人がいる舞台だからこそ、いっそう深く深く潜り込んで響くんだと思う。
また『朝をつれてこい』は、作品のあちこちに"現実"と"物語"という言葉が登場します。目の前の現実で物語を展開する舞台という場、もので、その言葉たちを聞くということは、その意味をよりまっすぐ、ずっしりと感じさせます。

木村恵美子さん(kazakami)がゲネプロレポートを書いてくださいました。作品の内容や登場人物それぞれについて丁寧に愛たっぷりに書いてくださっています。読んでみてほしいです。作品の内容自体についてはこちらをぜひ。
『遠くまで来たんだ』 http://emikokimura.com/archives/242
『朝をつれてこい』 http://emikokimura.com/archives/275

わたしは、公演が始まって、毎ステージ観ていて感じたことを書きます。
『遠くまで来たんだ』は、とても優しいおはなし。9人がそれぞれ、誰かのことを少なからず考えている。その思いやる気持ちが報われなかった(報われる報われないじゃないとは思うけれど、そうやって考えてしまうこともあると思う)ときの行き場のない、やるせなさ。それでも、ちょっとでも誰かのことを考えて生きる時間があるということは多分、とても大切で素敵なこと。
そしてわたしの一番好きなシーン。鈴木あかりさん演じる滝本リカが営むペンションでの、河本平助(演: 万代竜一さん)と相川光との3人の話。旅に出る人がいれば、旅先で迎え入れてくれる人がいます。その人は帰っていく人たちを送り出し続ける。どんなに距離が近くなった人でも、最後は出て行くから見送らなければいけない。旅する人だけでなく、その反対側にいる人のことも描いたこの場面がとてもとても好きです。

『朝をつれてこい』は先にも少し触れましたが、この作品を生身の人間が目の前で見せてくれることで、ダイレクトにそしてストレートに作品が届いていると思います。強くて美しい人たちのおはなし。手放せるでもなくずっと抱え続けた悩みや悲しいこと、突然身にふりかかってきたつらいこと。そういう、目を背けたくなるようなことたちに、各々がたくさん傷つきながらでも向き合っている。清い、と思う。その姿から目が離せなくなる。
それぞれが頭の中に見ている理想や夢、の前に毎日を生きなくちゃいけない。生活。生活の中にあるいろいろに丁寧に向かう人、身近な人にもそうあってほしいとはたらきかける人。その人たちが目の前にいることがとても嬉しいと思います。

最近は自分のまわりの人にもいろんなことがあり、わたしからその人たちに何ができるでもなくて、当たり前なのですが。その状況になんとなく寂しさやじれったさを感じていました。
でも『遠くまで来たんだ』『朝をつれてこい』を観ていて、自分の毎日をきちんと、きちんと過ごしながら、自分ではない誰かのことを少しでも考えていられるように生きられたらいいなあ、と思うようになってきました。

どちらも本当に優しくて、それだけではない作品です。
観にいらしていただけたらとても嬉しいです。よろしくお願いします。

-追記-
ゲネプロの写真を載せようと思っていたのに忘れていました。保坂萌さんが撮影してくださいました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?