ソアリン・ファンタスティック・フライトの音事情

ごきげんよう。ソアリンが好きです。
ソアリンの好きなところをまとめました。

ライトモティーフ

楽曲中において、特定の何かを表す要素として繰り返し用いられる旋律のことをライトモティーフと言ったりします。
ウェーバーやワーグナーのオペラが有名ですね。『スター・ウォーズ』の《ダース・ベイダーのテーマ》もそうです。
この技法はソアリンのアトラクション楽曲にも使われていて、どの旋律が何を表しているのかが全てアトラクション内で分かるようになっています。
まずはどんなモティーフがあるかを確認していきます。ライドスルーミックスに登場する順に見てみることにします。

1.冒頭のフルート
軽やかに連符が流れていきます。
非常に爽やかで美しく、凛とした旋律です。

2.印象強い5度跳躍
ex)「シbーファー ミbファシbーファー
ソアリンと言えばこのメロディ!と思い浮かべる方も多いでしょう。
冒頭は旋律の跳躍に加えて低音が入ることで、力強さと空間が広がったような感じを受けます。
余談ですが、5度跳躍は映画音楽でも頻繁に使われています。
ex)『スター・ウォーズ』『E.T.』

3.大きな流れを持つ旋律
「ドーレーソードファーミー ソーシbーラーソー」
前述の5度跳躍の旋律の直後に現れる、美しい旋律です。5度跳躍の旋律よりフレーズの取り方が長く穏やかなため、旋律のキャラクターが違って聞こえます。
個人の見解ですが、拍子も4/4から2/2に変化しているのでは?と思っています。

とりあえず以上3つのモティーフを挙げてみました。
どれも異なる特徴を持っていて識別しやすいですね。(ちなみにモティーフの要素を補い合うというのは結構大切なことです。それぞれのモティーフを認識しやすく、また、曲中での展開のバリエーションが増えます。)

次に、この3つのモティーフが何を表しているのかを考えてみましょう。

ここで考える根拠として、アトラクション本編前のプレショーも視野に入れます。プレショーではそれぞれのモティーフと結びつくキャラクターが順に登場しますが、その登場時にキャラクターと結びつくライトモティーフとなる旋律が一緒に流れています。

1.アレッタ
プレショーに入って最初に聞こえるのは1番のライトモティーフです。実はプレショーの映像が始まる前にも1番のモティーフを使った旋律が流れていますが、そこでは旋律線が目立たないようにアレンジされています。
明確に聞こえるのは、アレッタが飛んでくる時です。一際耳に入りやすいようにフルートがかなり印象的に旋律を提示しています。
また、アトラクション本編最後でも、1番のモティーフと共にアレッタが飛んできます。

次に、2番は一旦置いといて3番のモティーフを見てみます。

3.ドリームフライヤー
プレショーでカメリア・ファルコが語ってドリームフライヤーの影が映し出される時、初めて3番のモティーフが登場します。プレショー開始から随分と時間が経っていますが、ドリームフライヤーの存在を印象づけるためにここまで出さずにいたのでは?と考えています。
また、3番のモティーフの登場の仕方も素敵です。
今まで積極的に使われてこなかったトランペットで旋律が提示されることで、聴衆の耳が一気に惹きつけられます。また、フレーズの長さや滑らかさも違うため、聴衆はドリームフライヤーの存在に注目が切り替わり、コンテンツに対する集中力が持続しやすいのではないかと思います。

2.飛ぶことそのもの
かなり抽象的であり、またこじつけに近いものですが、私なりの解釈として記しておきます。
このモティーフを考えるにあたって、モティーフの旋律自体の特徴と、楽曲におけるモティーフの使われ方から見てみましょう。

まず、2番の旋律の特徴として5度跳躍が印象的です。
5度上という結びつきが強い音程で力強く上行すること、跳躍した先から更に上行しているのも、どんどん上に向かっている印象を受けます。
音程での分かりやすい表現です。

次に、楽曲におけるモティーフの使われ方についてです。
2番のモティーフはアトラクション冒頭でドリームフライヤーが飛び立つシーン、ノイシュバンシュタイン城、イグアスの滝のシーンで主に使用されています。
逆に、地上に戻る際には1番と3番のモティーフのみが現れ、2番のモティーフは登場しません。
また、冒頭のモティーフ全体が見える場面の更に前、1番のアレッタを表すモティーフの後ろで5度跳躍のみがトランペットによって提示されています。
このことから、2番のモティーフ、というか5度跳躍そのものが飛ぶことを表しているのではないかと考えました。
ちなみに、博物館内で流れているキューラインBGMやスクリーニングルームBGMも5度跳躍から始まる主題の曲が流れています。5度跳躍自体が飛行を表すモティーフだとすると、博物館内は飛行を想起させる旋律と共にあると考えられます。
もちろん作曲者が明言しているわけではなく、作曲上の都合でモティーフとして用いられるケースも多々ありますから、必ず音に情景的な意味があるとは限りません。それでも、音楽をテーマパークに落とし込んで楽しむという視点から見るとこういう発想もありなのではないかな、と思って妄想をしています。イマジネーションは人それぞれですから、皆様も是非各々の解釈を見つけてお楽しみください。

スクリーニングルーム


スクリーニングルームにはBGMが常時流れていますが、それとは別にアトラクション体験上の注意映像が流れます。
その際、部屋全体に聞こえるように流されていたBGMとは異なり、映像に関わる音だけが映像が上映されるスクリーンの近くのスピーカーからのみ流されます。
スクリーンは映像が上映されるまではただの壁ですから、スクリーン付近から音を鳴らすことでゲストの視線誘導をしているのです。
音量も元のBGMより大きめに流されますし、映像に使われている曲はBGMに使用されている曲と拍子感が違うので耳に入りやすくなっているのではないかな?と思っています。

ソアリン外壁

ソアリンは建物の外側を白い外壁に囲まれていますが、その外壁自体にもスピーカーが配置されており、BGMが流されています。
その中の1つに、パペリーノ通りに向かって配置されたスピーカーが確認できます。
パペリーノ通りはハーバーにある通りですが、奥に入り込んだ通りのため、ハーバーのBGMが聞こえにくくなっています。そこにソアリンのBGMが入り込むようにスピーカーが設置されることで、ソアリンのBGMに耳の意識が惹きつけられてから綺麗な博物館が目に入るという流れができます。
街を歩く美しさを演出する素敵な音遣いですから、是非一度耳を傾けてみてください。

アトラクション座席スピーカー

アトラクション本編の話に戻ります。
ソアリンは縦に3列座席が並ぶ形でスクリーンを見るアトラクションです。そこで映像とBGMが流れるのですが、どうやらBGMを流すスピーカーは耳元にあるわけではない気がするのです。3列目に座った際は、他の列より音が上から聞こえてきたような感覚でした。
これは完全に私個人の感覚なので根拠はありませんが、3列目は音のバランスとして旋律や高音が大きく、逆に1列目は低音がよく聞こえるように感じます。
これは地響きレベルの低音を違和感なく聞いてもらうための調整なのではないかなと思っています。似たような調整だと、太陽の塔の内部が分かりやすいかと思います。太陽の塔内部には音響スコアが展示されており、床に埋め込まれたスピーカーからは低音が大きく、天井などの上方に設置されたスピーカーからは高音が大きく流れるように指示があります。
どうしても低い音は地面を伝って振動そのものを体で感じることが多いので、上から低い音が飛んでくると違和感に繋がります。それを考慮して、ゲストより下にあるスピーカーから低音を大きめに流しているのでは?という推測に至りました。
(特に数値での計測はしていません。そもそも勘違いである可能性は高いので、音響の引き出しの1つくらいに捉えていただければ幸いです。)


今のところ代表的な音遣いについて書いてみました。まだ他にもチャームポイントが沢山あると思います。この書き物が、皆様のパークに耳を傾けるきっかけになれば幸いです。

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