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バリ日記8日目(2/3)

ランチ後はクアッドへ。クアッドとは「4輪の全地形対応車」のことらしい。全地形って……。「ものすごい山道とか、ぬかるんだ道とかをひた走るんだ」と夫は目を輝かせて言う。クアッドやりたい、クアッドやりたいと2日目くらいから言っていたから了解したけれど、おそろしく腰痛に悪そうじゃないの……。あたしゃ、レンタルバイクで未舗装の道を走るくらいで十分だよ。

とボヤいても仕方がないので、腰痛ベルトをさらにしっかりと巻きつける。と、ここで気づいた。あれ? さっきもボートに乗ったけれど、腰痛は大丈夫だった。よく寝たり、泳いだりしている間に、体はかなり元気になってきたようだ。うれしい。

クアッドの集合場所につくと、前の組は出たばかりで、あと1時間ほど待つと言う。ここで静かに待つか、何か見に行くかとガイドのワヤンに聞かれたので、この付近で何が見られるのかと聞くと、「まあ、コピ・ルアク農園か、コピ・ルアク農園しかないね」と、笑いながら言われる。

コピ・ルアクとは、ジャコウネコの糞から採取した豆を使ったコーヒーで、世界一高級なものとして有名だ。ただ、高く売れるものは次第に無理やり作るようになるのが世の常で、以前に「コピ・ルアクは、今やジャコウネコを狭い檻に閉じ込めて無理やりコーヒーの実だけを食べさせて作っている」と聞いたことがあった。そんなのやだー、見たくない。

そこでワヤンに頼み、クアッドの周りの農村をドライブしてもらうことにする。老人たちが道端のあちこちで座っておしゃべりをし、ほっそりした賢そうな犬が走り回っている。闘鶏用の美しい鶏が放たれて、優雅に歩いているのも見える。小柄で目が丸く、緑に光る黒い首がスッとして、バリのダンサーのようだ。小柄ですばしこい白い鶏もいる。

ああいう鶏を、ここの人たちは食べるのだろうか。食生活についてワヤンに聞く。すると、鶏はたまーに食べるが、メインの動物性タンパク質は卵で、でも卵も毎日は食べないと教えてくれた。毎日食べるのは豆腐だそうだ。そういえばスーパーで牛肉も売っていたと思い出し、ヒンズー教徒は牛肉を食べるのかと重ねて聞く。「うーん、本当は食べちゃダメだけど、たまーに食べる。牛肉ってうまいよね」と白い歯を見せて笑った。今見直されている、一昔前の日本の食生活みたいだ。

カカオの木があったので、ワヤンにチョコレートを作るのかと聞くと「チョコレートは自分たちでは作れない。でも、子どもの頃は身を割って中の白い実をキャンディがわりによく食べてたよ」と教えてくれた。

普通の農村の暮らしを車窓から眺めるのはとても楽しかったのだけれど、ワヤンは「何も見せていない」と思ったらしい。気づけばやっぱりコピ・ルアク農園に来ていた。ワヤンの気持ち(か事情)を汲んで行くことにし、農園のガイドさんにバトンタッチ。

ガイドさんは若い男の子で、ペラペラと気持ちよさそうに英語で説明してくれる。ものすごく早口で、私には何を言っているのか全くわからない。横を見ると夫はニコニコしながら「I see, I see」と頷いているので、後で教えてもらえばいいやと思って農園に入る。男の子がちょっと黙ったので夫に、「何て言ってたの?」と聞くと、「いや、ぜんっぜんわからない」と言われた! ガーン。

ジャコウネコは案の定小さな檻に入れられて寝ていた。かわいそうだと思い、ガイドの男の子に「このジャコウネコは、この檻にずっと入れられているのか」と質問する。と、男の子は「だーかーらー」といった雰囲気で、「昼だけ! 夜は出す! 夜は勝手に歩き回ってフルーツを食べる! ジャコウネコは昼間になれば自分でここに戻って寝る!」と言った。自分で戻ってくるのか。聞き間違いかもしれない。

もしそれが本当なのであれば、コピ・ルアク農園はそれほどひどいところではなかった。いろんなフルーツが植えられている植物園に、ジャコウネコのいる檻が2つくらいある感じ。そしてやっぱり最後はコーヒーを買えるお店が。でもなぜかインスタントコーヒーしか売っていなかったのと、やったらに蚊がいたので、足をボリボリかきながら買わずにさくさく出てきた。

元来た道を戻り、クアッドの集合場所へ。ちょうどいい時間に戻ってこられた。さすがワヤン、名ガイドだと感心した。

つづく

▼闘鶏とかおじいちゃんの写真を撮ればよかった。クアッドの村の田園風景


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