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バリ日記4日目(1/5)

4日目。日曜日。ガイドブックもないし、バリの達人ぶっていた夫は、実は自分がほとんど観光名所を覚えていないことに気づき、前日ひそかにガイド付きツアーを頼んでくれていた。そういうの、大事。できないことは、誰かに頼めばいいんだよなあ。そして、自分で電話をかけてツアーを頼んでくれていたことにも、感激する。

いつも通り充実した朝ごはんを食べた後、ツアーの車に乗り込む。ガイドのワヤンはバリの民族衣装、腰に巻くカメンと頭にかぶるウダンを身につけている。クリッとした目で英語が通じる。運転手の名前もワヤン。彼はどちらかというと少し東アジア風の、つまり日本人に似た顔立ち。
二人ともワヤンなので、どう呼び分けたらいいのか迷ったのだけれど、けっきょく運転手ワヤンは「我はミッションを遂行するのみ」と、一言も発しなかったので問題なかった。

大勢で回るツアーだと思っていたけれど、私たち夫婦だけのために二人がきてくれたと知って驚く。なので調子に乗ってさっそくわがままを言い、目的地に行く前に両替所に寄ってもらう。

3日まで使っていたのは成田空港で両替したインドネシアルピア。空港の両替所のお姉さんに「レート悪いですよ、いいんですか?」と言われたのを押して両替したのだけど、現地で両替してみてびっくり。相当違った。成田では1円87ルピアくらいだったのに、バリでは127ルピアだった。成田空港でルピアを買うものではない。今後の教訓にする。

ツアー最初に行ったのはバロンダンス。
バロンダンスは、良い精霊バロンと、悪い魔女ランダの戦いを表したダンスだそうだ。「良い」「悪い」と便宜的に描いたけれど、本来善悪は切っても切り離せないものなので、戦いには終わりがないらしい。
こういう価値観は好きだなと思う。

バロンがかわいい。シーサーみたいな、獅子舞みたいな雰囲気で親近感がわく。動きも顔もキュンとする。

最後はランダの魔法にかかり絶叫しながら自分の胸を刃で突き刺す人たちが出てきて、お坊さんが聖水をかけて納める……はずなのだけれど、ダンサーたちは何かが乗り移ったかのようなヒステリー状態で、全然納まらない。
本当に刺さってしまいそうなほど強く、刃を模した木の棒で、何度もなんども胸を突き刺す。(何人かは、乳首を執拗に刺していて、そんなことしたら何か悪い病気になっちゃうんじゃないかと心配になった。)
絶叫しながら他のダンサーに担がれて、舞台から消えていった女もいた。なんでもバロンダンスは夜やると、乗り移った人が戻らなくなって大変だから、朝やるらしい。

こういうヒステリー状態をショーで見ると、入り込んでしまった人にとってはトラウマになりそうだし、客観的に見た人は日常の中でヒステリーが起こせなくなるなあ……と思った。「あ、私今、ランダが乗り移ってるみたいじゃない」って思っちゃいそう。

完全に観光客向けのショーとして行っているらしく、来ているのは同じようにツアーで連れられてきた外国人とおぼしき人ばかり。
前日のケチャダンスもそうだったけれど、バリの人々は観光産業を、自覚的に本気で、まっすぐにやっている感じがする。
「観光客向けだから宗教行事もちょっと手を抜く」とかではなく、「観光客向けだから、観光客が楽しめるように最大限考える」という方向で、自分たちの宗教や文化を大切にしながらやっている感じ。などと、冷静に考える。

前日のケチャダンスよりも客観的に冷静に見たのは、昼間だったのと、私たちの前に座るカップルがショー中に喧嘩していて、そっちのショーも気になってしまったから、かも。
男性の方が、具合が悪くなったか何かで席を立とうとしていたのに、女性の方がなだめていた。声もやや大きく、英語だったので「クタのホテルなどで出会った、まだ日の浅いカップルなのか?」「なぜ気分が悪いのに座らせておくのか?」等と二人の関係や喧嘩の行方が気になってしまった。

私のバロンをどうしてくれるんだぁ! と、思いながら車に戻り、次の場所へ。ウブドの工芸店巡りだ!

(つづく)

▼バロンダンスの一幕。指先と目の動きがすごかった。


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