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バリ日記11日目(1/2)

2016年9月11日、日曜日。ホテルはずっとジェゴグ(竹製のガムラン)のポロンポロンという心地よい音楽が流れていて、ぐっすり眠った。でも夫はちょっと風邪をひいた様子。機密性の高い部屋でエアコンが効きすぎていたのか、それとも前日32度って感じのお湯で長いシャワーしたからか(それも2回。私は1回だけ)。

青緑のタイルが美しいプールサイドで、朝ごはん。私はミゴレンをチョイス。2日に1回はナシゴレン、3日に1回はミゴレンを食べている。いや、それ以上かもしれない。でもおいしい。4部屋しかないホテルだが、宿泊客は私達だけなのか、それとも朝ごはんは室内でとっているのか、私たちしかいない。静かな朝ごはんを満喫する。ヤシの木やバナナの木越しにウブドの棚田が見える。朝靄がかかってとても美しい。

丸一日観光に使えるのは今日は最後。出がけに前日見つけた洗濯物屋さんにお願いしていた洋服を取りに行く。タンジュンベノアの選択屋さんも安かったけれど、さらに安い。シャツ4枚&パンツ2本くらいで確か200円くらい。前日は一人で溌剌とした女の人が仕事をしていたけれど、今日は若い男の子がいる。ものすごく似ているので息子さんかもしれない。ちょうど私達の服を仕上げしているところだったので、ちょっと待つ。

荷物を引き取って向かったのは市場。現地の市場に行くのが好きだ。

私たちにしては珍しく早めに行ったので、お店の中には開店準備をしているところもある。そんな開店準備中のお店の店先にきれいな色のサマードレスを見つけた。日本では部屋着になっちゃうかもしれないけれど、見ればコットン100だ(コットン100は比較的丈夫なので好きなのだ)。でも2色あって選べない。両方買うことにして値切ってみようと思い立ち、交渉してみた。そしたら、 「お互いにとって良い日になる願掛けとして、それでいいよ!」とすんなりOK。なんかとても楽しくなった。

広い市場で、大きな建物の中と外にお店が広がっている。夫は結婚指輪として買った指輪を失くしたので、指輪を買いたがっていた。まさか市場で結婚指輪がわりのものを買うのかと驚いたけれど、すぐにものをなくす人なので、まあ良いかと思い直す。

歩いていると、ちょうど手頃な銀細工屋さんがあった。いろんな指輪があるのだけれど、夫は「SSSSSS」と、アルファベットのSのような記号がずらっと刻まれた指輪が気に入ったらしい。清香のSってことねと勝手に決めて納得する。

お店の人がその意味を「サイレンス」と言っていたので、気になって後で調べたらこれはサンスクリット語のアヴァグラハという記号で、日本語の「……」のように、歌詞や詩のなかで沈黙をあらわすものとして使われるらしい。なんだか深い。

私はそのお店でいぶし銀の小っちゃなガムランボールを買った。とてもきれいな音で身につけておくと願いが叶うらしい。良いものを買ったと二人でほくほくして市場を歩いた。

旅先で買ったものには、その土地の匂いが宿っている気がする。ガムランボールは身につけてはいないけれど、いつもポーチに入れていて、ときどき手の上で転がす。バリの空気感を思い出す。が、夫は案の定、S字マークの指輪を1週間で失くした。

ウブドの市内は下北沢のようにお店がいっぱいで、市場のあとはそこをそぞろ歩くのも楽しそうだなと思ったのだけれど、夫は絶対に嫌だという。困って、そういやグリーンスクールなるものがTEDxでやっていたことを思い出す。世界最先端のエコスクールで、世界から見学者が訪れるらしい。事前予約が必要だから中は見られないけれど、外からちらっと覗けたらいいなあ…… そんな大甘にもほどがある甘い見積もりで、しかも「人に聞けばわかるでしょ」という適当さで、行き先をグリーンスクールに決めた。

しかも、ホテルを出てから行き先を決めたものだから、wi-fiもない。ホテルはウブド宮殿の北東にあり、グリーンスクールはウブド宮殿の南東にある。モンキー・フォレストの脇を通って、40分くらいいったところだったはず。……という一度地図をちらっと見ただけの薄い記憶しかない。けれど、夫ときたら、道がわからないのだからゆっくり走ればいいのに、猛スピードでガンガン走ってしまう。焦る。なぜなの?

世界的に有名なエコスクールなのだから、看板ぐらい出ているだろうと思ったけれど、観光目的じゃないからか、アテが外れる。困り果てて、人に聞くのだけれど、困った顔をされたり、「あっちだ!すぐだ!」と自信たっぷりに言われた方向に走って行って再度聞くと「こっちじゃない、あっちだ!」と自信たっぷりにまったく別の方向を指さされたり。散々ぐるぐる回って、けっきょくどこにもたどり着けなかった……

見積もりが甘いとおもしろいことも起こるけれど、こうやって大失敗もしちゃうのですな。私たちの場合は、旅行の最終日の前日にいつも失敗してしまう。「観光が1日できる最後の日だから」と頑張ろうとして、事前準備をろくにしていないことを欲張ってやろうとするからだ。

夫も頑張ってくれたけれど、諦めることにしてウブドの市街に戻って遅いランチを。バリブッダという開放的なオーガニックレストラン。飽きもせずにナシゴレンを頼んだら、とても変わった食べ物が出てきた。見た目からして独特。円錐形に盛られたケチャップライス的なナシゴレン。夫には、これでもかと言わんばかりに茹で野菜が盛られたプレートが出てきた。頼んだレモンジュース風の飲み物も、ターメリックが入っている。なんだかすっごい健康的。どちらもおいしかったけれど。

食後は夜行われるワヤンクリというバリ伝統芸能の人形劇のチケットを買いに行ってから、ホテルに戻ってゆっくりすることにする。ホテルのプールをまだエンジョイしていない。青緑のタイルが涼しげなプールだ。プールに誰もいないからと、真っ裸で泳ぎたいという50歳男児を「あなたがまっぱで泳ぐなら、あたしだってまっぱで人魚姫みたいに泳ぎたい!」と脅して諌めながら、すいすい泳いだ。(でも、ウブドはちょっと寒かった。)

つづく

▼バリブッダのナシゴレン


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