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バリ日記11日目(2/2)

プールで泳ぎ、部屋に戻るとお湯が出るようになっていた。喜んでミニジャグジーにお湯を張り体を浸す。ああ、お風呂はいいねえ。体がとろけていく。

ジャグジーでゆっくりした後は再びウブドへ。伝統的な人形劇・ワヤンクリが始まるまで、少し時間がある。

翌日帰国なのに現金が心もとなくなり、両替所を探す。とちゅう、職業物乞いらしき女性たちにお金をせびられた。そういえば前日にも同じ場所にいた。バリには職業物乞いがいて、近くの村から近所の子供を借りて観光地に繰り出し、哀れを誘って現金を得るらしいのだ。村に帰れば普通に生活しているらしい。

テレビか何かで見たから認識できたけれど、子供たちはまるまると太って、物乞いをする女性たちをよそにお菓子をボリボリ食べているし、物乞いするスタンスに必死さが感じられない。だから、「お金くれ」と言われても、最初は物乞いだとは気づかなかった。

ここで200円とかを渡すのは簡単だ。何か理由があってお金が必要なのかもしれないし、私の「職業物乞いじゃん」という見立てが間違っている可能性もある。

けれど、こういうやり方でお金を渡すのと、今朝の洗濯屋さんみたいに、仕事に対して気持ちよくお金を渡すのとでは、お金に乗せる気持ちがまったく違う。なんだか今の気持ちでお金を渡したくはないと思って、あげないことにした。

お金って悩ましいな、と思っていると、今度は道端の、なんでこんなところにと思うような草の下の吹き溜まりみたいなところに、また物乞いの女性がいた。

彼女は恐ろしく痩せていて、赤ちゃんを抱えている。赤ちゃんも痩せていて、ひっそりしている。この人は、本当に困窮していると感じて、両替前でお財布がとても軽かったので、持っているお金を全部あげた。

何がいいことなのかなんかわからない。洗濯物を一生懸命こなして得るようなお金よりも多いお金をあげてしまったけれど、それがどのように使われるのかもわからないし、もしかしたら何か悪い結果をもたらすかもしれない。あのお金がいいことにつながっていますように。

両替をして、咳をしている夫のためにのど飴を買って、ワヤンクリへ。ワヤンクリは影絵の人形劇だ。劇場はこじんまりとして、20名程度しか入れない。劇は電気ではなく本物の火でスクリーンを照らし、一人の人形遣いが複数の人形を操って影を作る。ずっとバリ語らしき言語で話しているので、事前にもらった英語で資料でストーリーを確認する。が、途中で演者が観光客向けのジョークを挟み込んできておもしろくて笑ってしまい、今登場しているやつが悪いやつなのか良いやつなのか、さっぱりわからなくなってしまった。

でも、立派な人形の影絵で映し出され、炎のオレンジ色に染まったワヤンクリの世界は不思議と見飽きず、なんだか夢を見ているようだった。終演後、ワヤンクリの舞台裏を見せてもらったら、影しか使わないのにワヤンクリの人形には賑やかな着色がされていて、魂が込められているように感じた。

バリはすごい。こういう伝統芸能が、仰々しくものすごく高価なものでもなく存在し、演者が真っ当にご飯を食べる手段として当たり前の顔をして存在している。すてきだ。

そんなことを思いながら晩御飯。NO MSGと書いてあった、IGELANCAというお店へ。鶏肉のソテーっぽいものを食べたのだけれど、ものすごくおいしかった。夫のものもおいしかった。ここはハズレがないんじゃないか、また明日のランチに来ようと夫と言い合って、満足して店を出た。

ホテルに戻る道すがら、田んぼにバチバチと強い光を放つ何かを見かけた。蛍だ。日本の蛍は儚げな緑の光をゆっくり点滅させてふうわりとんでいくけれど、バリの蛍は「ここに生きてます!!!」と強く主張しているようで頼もしい。バチバチバチっと点滅し、がっつり移動する。命が力強くてバリらしい。

バリの最後の夜だから、眠るのが惜しくて仕方ない。来られてよかったなあ、バリは本当に好きな場所だな、またきたいなあ。今回のバリが今までのバリ旅行で一番楽しかったと夫もいう。ホテルのプールに移動して、飽きるまで水田と星と月と蛍を見てから寝た。

▼ワヤンクリの舞台裏

▼晩御飯はウブドパレス通りのIGELANCAで。おいしかった。


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