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バリ日記3日目(1/2)

バリ滞在3日目。予定を入れていなかったので、ぐうぐう寝て8時頃に起きる。この日は部屋ではなく、レストランで朝食をとることにしていた。「今日も部屋で良かったのに」という夫を引きずってレストランへ。

レストランはBUMBU BALI同様オープンテラス。どこで食べても良いというので、中央付近の席に座る。他にお客さんも見えないので、貸切状態だ。ホテル内のお寺が見え、気持ちの良い風が吹いている。

前日と同様、ものすごくボリュームのある朝ごはん。夫はコンチネンタルを選択し(もちろん卵とベーコンは私がちょうだいし)、私はヘルシー朝ごはんという名のシリアル+パンケーキ+ヨーグルト+大量フルーツのボリューム朝ごはんを食べた。飲み物はバリコーヒーをチョイス。

バリコーヒーはドリップしない。そのままカップにパウダーを入れ、お湯を注ぐのが流儀らしい。ホットなのにグラスでサーブされるので、下にどろりと滓が溜まっているのが見える。

山田詠美さんがバリを舞台にした小説『熱帯安楽椅子』の中で書いている。
「あのどす黒いコーヒーに、はたして私はクリームをいれただろうか。いいえ、入れなかった。底に泥のようにたまる砂糖しか。あれを毎日飲み続ければ、きっと、私の歯は痛む。」

私も小説のヒロインの真似して、イイ女気分で砂糖を入れる。けど、めっちゃ苦い。この苦さを払拭するには、恐ろしいほど砂糖が必要だ。

山田詠美さんの先の小説の引用の続きはこうだ。
「そして、抜け落ちる。歯のない老婆は悲しい目をして死を待つだろう。」
そうだ。毎日飲んだら、歯が抜けちゃいそう。そしてこのコーヒーは、老婆の死まで連想させるほどの力があるのだ。

バリ人はコーヒー好きが多いそうだ。
こういうコーヒーを毎日飲むバリ人は、何を考えているのだろう。コーヒーの澱が沈むのをただじっと待ってから飲むように、日々の煩いは鎮まるのを待ってただじっと行動するのだろうか…… 
なーんてことは考えずに、さっさとシリアル用の牛乳を注ぐ。私、ミルクコーヒー派。ちょいと粉っぽいけど牛乳を注ぐと好きな味だった。

食後はまたもやプールへ。滞在したホテルはアットホームさが売りらしく、めちゃくちゃ小規模。たぶん8組くらいしか泊まれない。ここに泊まる人たちはあまり観光もしないようで、みなさんプールサイドで水着のまま本を読んだり、お酒をちょびちょび飲んだりしている。
夫は「休みはリラックスすべし」と、そういうみなさんの姿勢こそ正しい南国の過ごし方だと思っている。

なので私もそうしてみる。読むのはバリを舞台にした池澤夏樹さんの小説『花を運ぶ妹』の続きだ。けれど、プールサイドで水着のまま本を読むのってあんまり現実的ではない。ときどき泳ぐから髪や水着が濡れていて、本が濡れて紙がぼにょぼにょになってしまう。

ランチは前日の夜に作った残り物を食べた。野菜と鶏肉のトマトクリーム煮。自分で言うのもなんだけれど、手抜きだったのになぜかめちゃくちゃおいしくできたのだ。
たぶん、鶏肉が良いのだと思う。鶏肉は日本で買えるようなドーンとどでかいものではなく、とても小ぶり。私が小さかった頃、鶏肉ってそんなに大きいものではなかったと思う。だから、今のサイズは生産者さんや飼料開発者さんの努力の賜物なのかな。

あまりに暑いので出かける気ならず、最初の2日にハイテンションすぎて疲れたのもあって、ランチ後はまたプールへ。泳いだり、本を読んだり、プールサイドのガーデンベッドで寝たりする。とろりとした、南国の時間。静かだ。

ツバメが水面近くをすーっと飛ぶ。プールの青さが映って青いツバメのように見える。どうやら水を飲んでいるようだ。同じツバメが何度もプールに戻ってくる。ツバメとプールを共有している気持ちになる。

4時になって少し涼しくなり、急遽出かけたくなる。今から行ける場所をと考える。当然、バリ渡航歴4、5回目の夫が何か秘策を持っているはずだと思ったのだけれど、「で、どこがいい?」とか聞かれる。

ガイドブックはないけれど、私は気分を盛り上げるためにバリ行きの前にバリを舞台にした小説を3作読んできた。せっかくならば、小説に登場した場所を、と思って文庫をめくっていると、「真面目に考えろ」と叱られた。ぐぅ。いやいや、何か教えてよ、バリの達人よ。

そういや、日没くらいにケチャダンスを見せてくれるお寺がなかったっけ? そう思ってネットで調べてみる。が、ネットがとことん不安定。このホテルのたった唯一の欠点である。

仕方がないので記憶で決める。タナロットっていうところと、ウルワトゥってところで、たしかダンスをやっていなかったっけ? 一応ホテルの人に確認して、ホテルから近い方のウルワトゥにバイクに乗って出かけることにする。ウルワトゥ寺院はかなりざっくりした観光マップにも載っているくらいの場所だから、どうにかなるだろう。

古いヘルメットをかぶって、バイクに乗る。夫と二人乗り。ナビも詳細な道路地図もないから、iPhoneのGoogleマップ頼みだ。Googleマップはオフラインでも使える。頼もしい。

と思ったが、Googleマップのおすすめルートの最初の交差点を曲がり損ねて、ひどいことになった。

(つづく)

▼夕方になると飛ぶ鳩たち。笛をつけているらしく、不思議な音をたてる。


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