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NiCE(18) 【日記】2006年、11歳

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お金に関するフィクション
『NiCE』の18回目です。
本文はそのまま読めます。第1回はこちら
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5月14日
今、「あしながおじさん」という本を読んでる。こじいんにいるジュディが、あしながおじさんのえんじょで、学校に行く話です。すっごくおもしろいです。とくにびんぼうなのを友達にかくすところとか。うちもお金ないし、いろいろこまるところがあるから、すごく気持ちがわかった。あしながおじさんみたいな人がジュディにはいて、いいなと思いました。
「あしながおじさん」を読んで思ったんだけど、この日記もだれかへのお手紙にしたいなって思った。でも、お手紙の相手がいない。なので、20才のわたしに書くのはどうかなーって思いました。わたしはきっといろんなことをわすれちゃうから、20才のわたしが思い出せるように書こうかなって。
なので、20才のわたし、元気ですか。初めてのお手紙です。
今日も図書かんでミサキと、ごうちゃんとゆうじんに会って、いっしょに宿題をやることになった。というか、三人に教えてもらっちゃいました。ごうちゃんには数学、ゆうじんには英語、ミサキには社会のまとめ方。3人ともすっごくあたまがいいのでうらやましいです。ゆうじんはハーフだから、英語ができるのはあたりまえ。ちょっとずるいなあ!っと思っていたら、ゆうじんは日本語を家で話さないから、ゆうじんは日本語をがんばったんだとミサキが教えてくれました。だからゆうじんはあんまりしゃべらないのかな。ゆうじんとごうちゃんは、ゆうじんの持ってきたパソコンで、何かやっていました。
おこずかいの話になって、わたしがおこずかいはもらってないといったら、ごうちゃんがわたしにもできるバイトを考えるって言ってくれました。 ゆうじんとミサキはお金もちの家の子だけど、ごうちゃんはわたしと同じで母子かていだし、おばさんはおそうざい屋さんをやっていて、うちよりはびんぼうじゃないと思うけど、そんなにお金もちじゃないと思う。だけど、ごうちゃんは自分で考えた仕事で、いろいろ買ってるんだって。すごいよね。
みさきちゃんは、小学生でお金かせぐなんて法りついはんなんじゃないのって言ってたけど、ごうちゃんは、いらないものを売ったり、すてられていたものを直して売っているだけだから大じょうぶって言ってた。うちは、おかあさんから集金のお金をもらえないこともあるし、ばんごはんを買うお金をおいていってくれないこともあるから、お金が少しもらえたらうれしいなあ。ごうちゃんは、おさななじみだけど、なんかおにいちゃんみたいだ。あと、ごうちゃんはたぶんミサキがすきだと思う。


5月15日
20才のもえ、元気? 今日も家に入ろうとしたら、おかあさんが家にいて、カレシもいたみたいだったから図書館にいったら、みさきちゃんとゆうじんがいました。そのあと、ごうちゃんもきたので、いっしょのテーブルを使って本を読みました。
それで、新しいゲームを4人で作りました。4人のなかで、だれかが良いことをしたら、ポイントがもらえるってゲーム。1回最高100ポイントあげられるの。ゆうじんが、図書館でおじいさんの荷物を運んであげていて、それを見てごうちゃんが「すばらしい、100点満点」と言ったから、このゲームができた。4人の中で、だれかが良いことをしたのを見たら、残りの3人がポイントをあげる。で、一番ポイントが多い人が勝つ。そういうゲームです。わたしたちの中では、頭がいい人より、お金持ちの人より、このポイントが多い人がえらいんです。でも、そしたら、自分が勝ちたいから、残りの3人はポイントをあげたくなくなるって思うでしょう? わたしもそう思った。だけど、ちがうんだよ。このゲームはこ人戦でもあるし、だん体戦でもあるんだよ。どういうことかというと、その日の中ではポイントがいちばん多い人がエラいんだけど、4人のポイントを合計して、前の日の4人の合計ポイントとも戦うのだ。今日のわたしたちは、昨日のわたしたちよりポイントをもらわなくちゃならない。だから、ポイントをあげるのをけちけちしてたら、昨日のわたしたちにまけちゃう。だから、ちゃんと3人にポイントをあげなきゃいけない。だん体戦っていうルールは、ごうちゃんが考えた。ミサキは、それってすごく大変じゃないって言っていたけれど。ごうちゃんとわたしは同じクラスだし、ミサキとゆうじんも同じクラスだから、学校であったことでもポイントをあげていいんだって。なんかおもしろいなーとおもった。
あ、そうそう。ミサキが「日記に、読んだ本のおもしろかった言葉とか部分をうつして書いてる」って言ってました。だからわたしも「あしながおじさん」でおもしろかったところを書いておく。今日、「あしながおじさん」が読み終わりました。おもしろかった言葉はこういうことです。
「おじさま、わたしはしあわせになる方法を見つけました。それは今を生きることです。いつまでもかこのことをくやんだり、未来を考えて不安になったりしないで、今このしゅんかんから最大げんのよろこびをさがすことです。」
ちょっと文章ちがうかもしれないけど。なんか、いいなーとおもったところ。もし20才のわたしがこの言葉をわすれてたら、ちょっと思い出したらいいなと思うので、書いておきます。じゃあ、またね。またお手紙を書きます。

(19) に続く

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